城下町小幡よりのんびり歩くこと小一時間、製糸場のお膝元として栄えた富岡の街に到着。
本来ならば上州福島駅まで戻り上信電鉄に乗った方が楽なのでしょうが、小幡から駅まで30分は歩くので、それほど大差ないと思い歩いて直行してしまいました。
古き良き佇まいを残す富岡の街。歴史の深そうな商店街を進むと、その突き当りに大きなレンガ造りの建物が見えてきます。通りを塞ぎ聳えるかのようなその姿からは、得も言われぬ存在感が滲み出ています。
3年半ぶりの再会となる『富岡製糸場』。歴史の授業で習って以来、ずっとずっと来てみたいと思っていた場所。初めて訪れたときの感動が、今また鮮やかに甦ります。
この建物は木、石、レンガで造られた木骨煉瓦造という構造。それらを組み合わせただけのものなのに、建築から150年近く経った今でもこうしてここに在りつづける。当時の設計と建築技術の高さの証明とも言える、巨大な建築物。
見慣れぬ木材とレンガという組み合わせを愛でつつ、いざ中へ。その入口のアーチには、明治五年と刻印された要石が。古い隧道を思わせるその姿は、建造物をただの物としては扱わないという当時の美意識そのもの。
内部へと入れば、絹や製糸に関してのたくさんの展示物のほか、事務所として使われていたであろう当時の雰囲気を残す売店も。
1階で富岡製糸場と日本の近代化の歴史を学び、続いて2階へ。前回訪れたときは入れない場所だったため、どのような空間が広がっているのかとワクワクしながら歩みを進めます。
東置繭所と呼ばれるこの建物。2階には現役当時乾燥した繭を保管していたという巨大空間が。あらわになったその骨格に、改めてこの大きな建物が木で支えられていることを強く実感。
150年近く風雨や地震等に耐えてきた巨大な建物。荘厳さすら感じさせる空間にしばし呆然と佇み、その空気感を胸いっぱいに吸い込んだところで外へと出ます。
そしてもう一度目に焼き付ける、この独特な優美さ。木、石、レンガ、そして瓦。和洋折衷を体現したかのようなその姿は、ほんの数年前まで江戸時代だった日本が新しい時代へと歩み始めたときの生き証人。
富岡製糸場の顔ともいえる東置繭所を後にし、広々とした中庭へ。その向かいには西置繭所という先ほどの建物とそっくりな建物がありますが、このときは修復工事中で建屋にすっぽりと覆われていました。
その隣には、当時の人々の暮らしの匂いが残る社宅が。2階建ての立派なこの家は、幹部用の社宅だったそう。
そしてこちらは、一般の家族向けであろう平屋の社宅。いつまでここに人が住んでいたのかは分かりませんが、操業している当時に思いを馳せるには十分なほどの空気がここには感じられます。
2度目の訪問となる富岡製糸場。操業を停止してから30年ちょっと。未だに残る現役当時の面影を探し、更に場内さんぽは続きます。
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