水上から冬景色へと移ろう車窓を愉しむこと約50分、終点湯の小屋バス停に到着。その先道なりに2分ほど歩き、今宵の宿である『龍洞』に到着。
チェックインまではまだ少し早い時間。旅館の先へと歩いてゆくと、川沿いにいくつも連なる湯小屋たち。この宿はずっと来たいとは思っていたものの、いつものような温泉地を結ぶ旅ではなかなかうまく行程に組み込めなかったので、ようやく念願叶い泊まることができて嬉しさもひとしお。
チェックイン開始まで30分ほど館内で待たせてもらおうと入館したところ、宿のご厚意ですぐにお部屋へと案内してくれることに。この宿には東館、西館、離れといくつかの棟があり、今回はこの南館に宿泊します。
川沿いに建つ東館より若干お値段は上がるものの、せっかくの年の瀬ご褒美連泊なのだからと選んだ南館。ゆったりとした和室は落ち着く雰囲気で、大きな窓からは雪景色を楽しめます。
雪見風呂への衝動を抑えきれず、そそくさと浴衣に着替えていざ外へ。こちらの宿の露天風呂は全て貸切でき、入口に木札が掛かっていれば空いている合図。好みのお風呂の木札を手に取り湯屋の入口に掲げ、内鍵を掛ければ気兼ねなくお風呂を独り占め。
22の客室に対し、貸切風呂は18ヶ所。そんな贅沢なことある?というのがこの宿を知った時の素直な感想。入口に並ぶお風呂の写真に迷いつつも、まずは川沿いの大露天風呂である川龍へ。
脱衣所で浴衣を脱ぎ、扉を開けた瞬間目に飛び込むこの光景。川を望む露天風呂は、普通の旅館の大浴場に併設されているものと同等のスケール感。これを貸切独り占めなんて、やっぱりちょっと贅沢すぎる。
広々とした浴槽には、熱い湯の小屋の源泉が掛け流し。ちょうど良い温度に保たれたお湯に肩まで浸かれば、自ずとあぁ~と声が漏れる。
眼前には大河利根川の源流のひとつである木の根沢が流れ、それを彩るこの季節ならではの清純な白さ。眼を閉じれば、頬には山の冷気、耳を悦ばせる川音、そして体を包む湯の温もりを感じるのみ。
いやぁ、ちょっとこれは想像以上だった。湯めぐりする前から早くもこの世界観に圧倒されつつ、冷たいこいつをプシュッと開けます。雪景色を愛でつつ感じる、喉への刺激。これから2泊、これは愉しいことになりそうだ。
ビールで一旦クールダウンし、落ち着いたところで再びお風呂へ。今度は庭園風の設えになっている大露天風呂、大龍へ。先ほどの川龍をも越える広さに、思わずうわぁ、これ独り占めかよ。と声が出てしまう。
こちらの宿のお風呂はすべて掛け流しとなっており、お風呂の種類の多さや広さもさることながら、そのお湯の使い方も贅沢を感じる理由のひとつ。
弱アルカリ性の単純温泉は、肌にさらりとなじむ優しい浴感。無色透明ながらほんのりと湯の香りが漂い、視界を染める雪景色とともに心身をそっと清めてくれるよう。
広々とした庭園風呂を味わい、部屋でごろりと過ごす時間。そんな怠惰な甘美に揺蕩っていると、あっという間に日は暮れもうすぐ夕食の時間に。その前に髪を洗おうと、シャワーのある楽龍へ。
この湯屋には内湯のほか小さな露天風呂も併設されており、目の前を流れる木の根沢の音を聴きながらのんびり湯浴みを楽しめます。
小ぢんまりとした湯舟に身を沈め、静かに過ごす独りの時間。大きな露天を貸し切るというダイナミックさ、小さなお風呂に収まるという心地良さ。早くも湯めぐりの愉しさに溺れかけ、連泊を決めて良かったとしみじみ思うのでした。
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