栗駒山の頂のすぐ近く、高地で迎える最後の朝。昨日の夕方までに日頃の疲れを吐き出せたようで、いつになくすっきりとした頭と気持ちで目覚めます。そして向かうは、大日湯。朝の空っぽになった心身に、硫黄の香と須川の湯の力を隅々まで補給します。
やっぱり今朝も、空腹絶好調。須川のもたらす自分の体への影響に驚きつつ、バイキングから好きなおかずを選びます。煮物や焼鮭、塩辛にきんぴら。これぞ和の朝食というおかずとともに白いご飯を味わうという贅沢も、温泉旅の醍醐味のひとつ。
おいしい朝食に満たされ、須川での最後の一浴を。青白く染まる大日湯に肩まで浸かり、思う存分深呼吸。この感触、この匂い、この眺め。次に来るまで、覚えていたい。再訪の誓いを胸に、名残惜しくもチェックアウト。
バスの発車までしばらく時間があるため、宿からも見えていた湯の滝に沿ってのんびり散策。石積みに囲われた湯の池からは、毎分6,000ℓというものすごい量の源泉が湧きだしています。
今回も、その力強さで元気を分けてくれた須川の湯。6年前に訪れたときもそうでしたが、やっぱりここは連泊が必須。2泊目は朝から夕方まで、布団に居るつもりでいたほうがいい。その時間が、心身に溜まった日頃の渋を抜いてくれるから。
2泊目で元気を取り戻す。ということは、3泊目はどうなってしまうのだろう。よし次来るときは、3連泊以上確定だな。6年ぶりに味わったこのすっきりとした感覚を映すかのように広がる束の間の青空に、再訪の願いを託します。
あぁ、すっきりした。栗駒山へと続く登山道から宿の全景を見渡し、思い残すことなくバス停へと向かいます。その前に、もう一度だけ振り返り須川の源泉にお礼を。今回も、力をくれてありがとうございました。必ずまた、戻ってきます。
今回は、訪れることの叶わなかった秋田県。せめてその空気だけでもと、歩いて県境越えし秋田入り。この道の先には、まだ見ぬ逢いたいお湯がある。訪れるその日に思いを馳せ、岩手県へと戻ります。
栗駒山の頂に近い高地での爽快感を胸へとしまい込み、『岩手県交通』の一関駅行きバスに乗車。標高1,126mから、一気に下界を目指します。
先ほどまでの爽快な青空は、僕が雲の上に居たからなのだろう。急坂を下り始めるとすぐに車窓は霧に染まり、ついさっきまでいたあの地での体験すら幻であるかのような錯覚が。
バスに揺られること約1時間半、この旅の次なる舞台への入口となる一ノ関駅に到着。岩手県、何度来ても本当に良いところ。一ノ関、北上、花巻、盛岡。それらから繋がるその先には、豊かな魅力に溢れたお湯がある。だからこうして、通ってしまう。
今回も良い時間を過ごさせてくれた岩手に別れを告げ、やまびこ号に乗り込みます。これから向かうは、蔵王の懐。久々の宿泊となる宮城の地への期待を胸に、E5系は南を目指して加速します。
このあと仙台で下車予定。乗車時間も短いため、早速駅弁を開けることに。今回は一ノ関は斎藤松月堂の調製する、金格ハンバーグと牛あぶり焼き弁当を購入。
ふたを開ければ、どん!と現れる大ぶりなハンバーグ。ひと口大に切ろうと箸を入れると、お、と思うようなしっかりとした手ごたえ。硬いのではなく、詰まっている。もう触感からして肉肉しい。
しっかりとしたハンバーグを、下のご飯とともにパクっと。すると広がる、肉の香りと旨味の濃さ。脂の甘味もしっかりと詰まっており、お弁当とは思えぬきちんとした肉肉しさに驚きます。
牛のあぶり焼きはちょうど良い塩梅に甘辛く味付けされており、これはまたご飯との相性も抜群。そして添えられた高菜の油炒めが非常にいいアクセントに。お肉に添えて一緒に食べれば、旨味や風味を一段と引き立てます。
しっかりと煮込まれた牛すじ煮込みも相まって、この一折では足りないほどご飯が進んでしまう。味付けが濃いというわけではなく、ご飯を進ませるお肉の旨さが詰まった駅弁。あまりこの手の駅弁を買わない僕にとって、良い意味で裏切られる旨さに驚きます。
緑に染まる車窓を愛でつつ、おいしい駅弁を味わうひととき。ビール、買っておけばよかったな。そんなことを思っていると、あっという間に古川を発車。これから過ごす宮城での時間への期待を胸に、肉の旨さに舌鼓を打つのでした。
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