竹乃子で絶品の車えびかき揚げ丼に舌鼓を打ち、お腹もこころも満たされたところでそろそろ港へと戻ることに。渋い風合いの珊瑚の石垣、漆喰と赤瓦の対比がうつくしい古民家。豊かな緑に護られたこの島らしい情景が、また来年帰っておいでと訴えかける。

船の時間までまだ少しばかり余裕があるので、いつもは通らない道を歩いてゆくことに。たくさんの乗客を乗せた牛車を牽く水牛たちも、ミストを浴びてお休み中。

十年前、空港に降り立ったその足で一目散に目指した竹富島。あのときこの島に、出逢えなかったら。それからのことを思い返してみると、本当に人生観が変わる瞬間ってあるんだな。

天気予報を見てみると、海に行けるのは明日まで。この島に来られるのは、たぶんまた来年になるだろう。そんな若干の寂寥を噛みしめつつ歩いてゆくと、まだ幼い仔牛が。こんなぽやぽやした毛並みのこども、初めて見たかも。

かわいい牛の親子に来年の再訪を強く強く誓い、名残惜しくも愛する島に別れを告げることに。帰りも『安永観光』で石垣島へと戻ります。

冷めやらぬ竹富島の余韻に浸りつつ、ホテルの部屋でごろごろうとうと。日焼け疲れを微睡みで癒したところで、そろそろ夕飯を食べに出かけることに。宿の前の畳屋さんには、かわいい柴犬が。もうひとり黒い柴ちゃんもいて、犬好きにはもうたまらん。

傾く西日に背中を押され、お店目指して歩く道。家路を急ぐ車の流れ、それが途切れたときに覗く碧い海。おいしい魚の揚がる登野城漁港も、今日の仕事を終えひっそりとしています。

夕刻の色味に旅の折り返し地点という感傷を重ねつつ、15分ほど歩き『どてっぺん』に到着。ここは去年も訪れた、おいしくて予約も取りやすいというありがたいお店。

なんとうれしいことに、19時まではハッピーアワー。まずはキンキンに冷えたオリオンビールで乾杯し、島豆腐の冷奴から。しっとりなめらか、それでいてしっかりとした凝縮感。木綿と絹のいいとこどり、豆の塊といった島豆腐の濃い味わいは本当に病みつきになる。

お肉に魚、和に洋にとさまざまなメニューが楽しめるのもうれしいところ。ハッピーアワーでオリオンをおかわりするので、合いそうなとろとろ軟骨ソーキ炙り焼きを注文。
しっかりと煮込まれたソーキは、ほろほろとした身の部分ともっちりとした軟骨のコラーゲン感の対比が美味。炙られることでしょう油の香ばしさが引き立ち、添えられた特製わさびソースの爽やかな辛味がまたいいアクセントに。

ここで満を持して於茂登のボトルに切り替え、島魚の天ぷらを。この日はまぐろが使われており、加熱されきゅっと締まった食感と淡白な旨味が泡盛にぴったり。天つゆもさることながら、卓上のピパーチ塩を振れば南国感ある八重山ならではの味わいに。

ここは島内にいくつかあるてっぺんグループのなかでも、海の幸に力を入れているお店。ということで、去年は頼まなかったお刺身5点盛りを注文することに。
瑞々しくもっちりとしたまぐろに、その名からは想像つかない上品な旨い白身のおじさん。その他もどれも新鮮でおいしいものばかりで、毎度のことながら八重山の刺身の旨さには驚かされる。

それにしても、説明してくれた魚の名前をいつもいつも覚えられない。まぁでもいいか、旨いから。進む於茂登の相棒に、鉄火巻きも追加。もっちりとした生まぐろに宿る滋味、それを抱く寿司飯と海苔の香り。これだけで、さらに島酒が呑めてしまう。

そして〆兼アテにと最後に頼んだのは、大好物のソーメンちゃんぷるー。豚ににら、もやしに人参、小口のねぎ。油とともに、それらの甘味と旨味をまとったそうめんの満足感。シンプルながら奥行きのあるやさしいおいしさは、家で工夫してもどうやっても出せないもの。

食べて呑んで、お腹も味覚も大満足。ぱんぱんになったお腹を抱え、ほろ酔い気分で歩く海沿いの道。もう時刻は20時過ぎ。それなのに、星の輝きはじめた空にはまだうっすらと今日という日の残り火が。

途中でちょっとお手洗いへ。そう思い登野城漁港に寄ってみると、遠くから聞こえてくる賑やかな話し声や太鼓の音。伝統行事のハーリーが半月後に控えており、その応援の練習でもしているのでしょうか。

台風が湿気すら持って去ってしまったのか、からっとした風が気持ちのよい夜。そのまま海沿いを進み、サザンゲートブリッジまで腹ごなし&酔い覚ましのお散歩へ。

橋の真ん中に立てば、全身を撫でてゆくここちよい海風。きらきらと瞬く石垣の街の灯り、漁港から聞こえてくる、たたん、たん。と繰り返されるリズム。
僕がうまれ育ち生きてきた環境とは、何ひとつ接点も共通点もないはずなのに。それなのに、なぜこうも親しみを覚えるのだろう。暗い海に響くパーランクーの音にこころを打たれ、胸の深い部分がぎゅっと、そしてじんわりと温かさが広がりゆくのを感じるのでした。



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