冬の名残り、浅き春。鉛色の海辺で北国の情緒に染まり、そろそろお昼を食べることに。
おいしい海鮮は朝に食べたから良いとして、悩んでしまう青森といえばのふたつの旨い麺。長尾中華そばにも激しく魅かれましたが、こく煮干しは半年前に食べたので今回は『味の札幌大西』にお邪魔することに。
味や具の組み合わせにより、様々な種類のラーメンが並ぶメニュー。でもやっぱり、ここへと来たらこれ一択になってしまう。2年半ぶりに再会する味噌カレー牛乳ラーメンバター入りの魅惑の姿に、早くも頬が緩んでしまう。
まずは、カレーの心地よい香りが立ちのぼるスープから。うわぁ、これだよ、これなんだよ・・・。8年前に初めて出逢ったときの衝撃は、何度味わっても色褪せない。
ラーメンスープ用の味噌だれ、カレー粉、そして牛乳。その顔ぶれを見ると、どれも主張の強そうなものばかり。そんなイメージとは裏腹に、なぜだかこの丼の中でうまく調和がとれている。
調合された味噌の適度なコク、そこに香りと辛味を添えるカレー粉。それらをまとめているのが、牛乳なのかもしれない。でも決して乳臭さはなく、さらりとしたコク旨のポタージュを飲んでいるかのよう。
絶妙なバランスの上に成り立つスープが全身へと沁み渡ったところで、続いて麺を。太めの黄色い麺は、つるつるとしながらも食べごたえのある食感。しっかりと縮れているので、啜るごとにおいしいスープを適量口へと連れて来ます。
麺を啜ってスープを飲み、ときおり具を挟んでまた麺へ。無限に続けたくなる旨さのループを一旦止め、バターを熱々のスープに落としてまたひと口。バターの風味がよりまろやかさを醸し出し、お箸がさらに止まらなくなる。
いやぁ、旨かった。一見個性が強そうで、でも実際食べてみるとすべてが程よい。しっかりとボリューム感のある一杯ですが、途中で飽きることなく一気に完食。食後には、次はいつまた食べられるのだろうかなんて考えてしまう。
味噌カレー牛乳ラーメンバター入りの余韻に浸り、芯から温まった体に冷たい風を感じつつ歩く青森の街。昭和を感じさせる街並みがところどころに今なお残り、連絡船の往来で賑わっていたころの残像がこの眼に映るよう。
漁港や外国船の発着する港など、ひと口に港町と言ってもその表情は様々。そんな中、この昭和の残り香漂う青森の情緒が僕は好き。
鉄道と航路の接点、交通の要衝として多くの旅客や行商の人々が行き交った青森の街。そんな旅人のひとりとして、ブルートレインに揺られてこのホームへと降り立ったあの日を僕は忘れない。
上野発の夜行列車といえば、目指す先は本州の北の終着駅青森。東北本線経由のはくつる号、常磐線まわりのゆうづる号。子供の頃から憧れた名門列車であるはくつるに乗れたことは、僕の一生の宝物。
長大編成の列車から吐き出された旅人が、跨線橋の先に待つ青函連絡船めがけて走っていたこのホーム。今は数両編成の列車が行き交う静かなこの場所で、かつての活気に思いを馳せてみるばかり。
だめだ。どうしても青森駅からの旅立ちには感傷が付いて回る。それは永遠に憧れるだけの存在となった連絡船への恋慕の情であり、はつかりや白鳥、そして北斗星でこのホームを踏んだという懐かしさから来るものでもあり。
青森駅の静かなホームでどっぷりと旅情に染まり、奥羽本線の普通列車で新青森駅へ。ここからが、いよいよ旅の第二幕。いつかはと願い焦がれてきたあの湯を目指し、興奮気味で送迎車を待ちます。
これから向かうは、金色に染まる波打ち際の露天風呂で有名な黄金崎不老ふ死温泉。本来なら五能線で向かいますが、リゾートしらかみの運休する冬季は実用に耐えない運行ダイヤに。そこで、期間限定で新青森から予約制の送迎バスを運行してくれています。
新青森から宿までは車で2時間半。トイレ休憩のため、途中道の駅もりたに立ち寄ります。ここでしばし小休止。物産館を覗くと豊盃が定価で売っていたので、思わずお土産として購入。この先重いリュックと行動を共にすることになるというのに、自分の酒好き加減に半笑い。
車は国道101号をひた走り、いよいよ日本海沿いへ。長年憧れ続けてきたあの黄金の湯に入れるかどうか。荒天で露天が閉鎖されないよう願いつつ、雨に濡れる車窓から鉛色の海をひたすら眺めるのでした。
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