津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて 1日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて 1日目 ①~

8月上旬酷暑の東京駅赤レンガ駅舎 旅行記

8月上旬、赤レンガ駅舎の前に僕は立っていた。

今年はきっと、無理だろう。連休もないし、年休も取れないし。何より宿が、見つからない。そう思い半ばあきらめていた、津軽の夏。でも僕の思いが通じてか、運よく宿が取れてしまった。

8月上旬酷暑の東京駅東北新幹線ホームH5系はやぶさ号とE6系こまち号の連結部
こうなったらもう、行くしかない。今年はきっと、久方ぶりにあの熱さが弘前へと戻ってくるはず。1泊だろうが関係ない。たとえ雨が降って中止になったとしても、祭りの空気感だけでも味わいたい。

8月上旬酷暑の東京駅H5系はやぶさ号10号車に輝くグランクラスのエンブレム
弘前ねぷたに通い始めてから2度目となる、一夜に賭けた弾丸旅。宿が取れいざ新幹線をとえきねっとを見てみると、普通車はおろかグリーン車までもが満席。でも時間の都合上、列車はずらせない。恐る恐るグランクラスの空席を覗いてみれば、運よく1人掛けがぽつんと空いている。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラスの重厚感ある落ち着いた車内
いや、でもなぁ。小物感溢れる僕は、予約をタップする勇気がなかなか出ない。でもそういえば、日々の暮らしでコツコツ貯めたポイントがある。これならお得に、そして直接的にはお財布にもダメージなく乗れてしまう・・・。

迷うな自分、満席になったら終わりだぞ。これはねぷたが来いと誘っているに違いない!そう己を鼓舞し、意を決して予約。そんな経緯があって、少々場違いなグランクラスでの旅立ちとなりました。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラスに用意されたアメニティの入った袋
一歩足を踏み入れれば、途端に喧騒を忘れさせてくれる。先ほどまでのホームの雑踏が嘘のように、車内を支配する静かなる重厚感。この感覚、どこかで出会った気がする。そう思い考えてみると、ハタチの記念の金沢旅で乗った、リニューアル前の200系のグリーン車に雰囲気が似ている。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラスドリンクメニュー
自分の働いたお金でグリーン車に乗ったのは、あれが初めてだった。それ以降何度か新幹線のグリーンにも乗りましたが、あの国鉄型ならではの空気感は忘れ得ぬ良き想い出。分厚い座席、枕のみならず肘掛けまでにもパリッとしたリネンが掛けられていたあの特別感が懐かしい。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグラスで提供されるプレミアムモルツと洋食リフレッシュメント
走行性能だけでなく、居住性やインテリアも日々進化を続ける鉄道車両。高級感がありつつ明るく圧迫感のない最近のグリーン車は、きっとみんなに喜ばれる最大公約数の快適さなんだと思う。でもこの車両には、失われてしまった上級車両の威厳というものが感じられる。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラス気づけばあっという間に荒川を渡り東京脱出
うわべだけの高級感ではなく、どっしりと構えた落ち着きのある重厚感。22年前に感じたあの心地よい重みと、令和の今再会できるなんて。ちょっとこれは、感動もの。久々に鉄道車両に心動かされていると、気づけばあっという間に荒川へ。危ない危ない、知らぬ間に東京脱出するところだった。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラス白ワインとリフレッシュメント洋食中身
列車の中で、ビールをグラスで飲むなんてどれくらいぶりだろうか。缶やプラにはない口当たりに誘われ、しみじみと味わいつつグイっと完飲。続いて白ワインをお願いし、リフレッシュメントと呼ばれる軽食を開けることに。

以前は小さなお弁当形式のものが提供されていましたが、現在は軽くつまめるこのサイズ感。いろいろ意見はあるでしょうが、駅弁も食べたい僕としてはありがたい。食事時からずれた時間帯に乗るときも、このボリュームなら気軽に味わえそう。

リフレッシュメントは和洋から選べますが、後に食べるお弁当が和食のため今回は洋食を選択。左のとうもろこしチョリソーのケークサレは、コーンの風味と程よい塩気が白ワインにぴったり。右隣は、真鯛の香草蒸しのりのリゾット。風味良く蒸された鯛の身とふわりと磯の香るリゾットの一体感を味わえます。

さらにその隣は、伊達鶏のつくねバーグ。和洋のいいとこどりの塩梅で、これまた白ワインを誘うおいしさ。最後のデザートには、ほんのりとした香ばしさを楽しめるほうじ茶のムース。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラス車窓を染める盛夏の田んぼの緑
ちょっとこれ、知ってはいけない贅沢だよ。グラスで味わう山形の白ワイン、そのお供には色々な品をちょっとずつ味わう楽しさ。こんなの経験してしまったら、元に戻れなくなってしまう。静かなる豊かさに心酔していると、いつしか車窓は夏色に。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラスで味わう勝山純米吟醸献とSuicaのペンギンの駅弁のり弁
軽食と白ワインに食欲を刺激され、お供の日本酒を頼み買っておいた駅弁を開けることに。さすがは夏休みシーズン、東京駅の駅弁屋祭は大混雑。あまりゆっくりと選べぬ中、そのかわいさで目を奪われたSuicaのペンギンのり弁を購入しました。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラスSuicaのペンギンの駅弁のり弁中身
ふたを開けた瞬間、めっちゃ見てくるつぶらな瞳。黒地にこれだけで、Suicaのペンギンだと分かるのだからすごいとしか言いようがない。Suicaペンギン、ほんと好き。

大好きと言いつつ、まずは容赦なく顔の描かれたご飯から。しっとりとした海苔は磯の風味が感じられ、その下に隠れるおかかは濃すぎず薄すぎずのちょうど良い塩梅。冷めてももちもちの甘いご飯を引き立てます。

大ぶりのサーモントラウトは、塩焼きで。ふっくらと焼かれた身には程よい脂と旨味が宿り、嫌な魚臭さもなく皮までおいしく食べられます。その隣にドンと鎮座するのは、魚肉ソーセージ磯辺揚げ。冷めても脂っこくなく、どこか懐かしさを感じさせるおいしさ。ちなみにギョニソ、Suicaペンギンの好物なんだって。

しっかりと衣をまとった唐揚げは柔らかく、だしの効いた味わいがこれまた旨い。きんぴらや蓮根煮も素材の味を感じる程よい味付けで、海苔やおかかが載ったご飯と一緒に食べておいしい仕上がりに。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラス車窓を染める夏の東北の田園風景
おいしい駅弁片手に味わう、旨い酒。先ほどの白ワインもそうでしたが、この勝山献もまたとっても旨い。いつもの東北新幹線に、こんな贅沢な時間が連結されていたなんて。奮発してよかったな。そんな悦びに揺蕩っていると、秒で東北入りしていました。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラス車窓には突然の雨
重厚な雰囲気や掛け心地の良い座席、飲食のサービスに目を奪われがちなグランクラス。ですが今回乗車して一番感動したのが、鉄道車両としての根幹であるその乗り心地。

ひと言で表せば、滑るように走る車両。普通車もフルアクティブサスペンションが搭載されているこの形式ですが、グランクラスの揺れなさは明らかに違う。台車が同じとなれば、座席がさらに揺れを吸収しているのでしょうか。

そして何より驚いたのが、その静粛性。従来の新幹線より静かになったE5・H5系ですが、グランクラスともなれば320㎞/hで疾走していることが嘘のよう。一体どれほどの防音処理が施されているのだろう。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラス快適な旅路も終わりまもなく新青森到着
一瞬降った雨にちょっとばかり肝を冷やしつつ、すぐさま夏空が戻り一安心。ゆりかごのように包み込まれるシートに身を委ね食後の余韻に浸っていると、長い長い八甲田トンネルを抜けついに青森へ。この新幹線なら、新函館北斗から鹿児島中央まで乗り通せるわ。

8月上旬東北新幹線H5系はやぶさ号新函館北斗行きグランクラスに揺られ新青森到着コンコースで勇壮なねぶたに出迎えられる
いつもとは明らかに違う、3時間23分。新青森って、こんなに近かったっけ。21世紀の夢の超特急をカタチにしたという、JR東日本の矜持を感じさせるE5・H5系。グランクラスという新たな一面に触れ、さらにこの車両が好きになってしまった。

なんだよ、最高の夏休みの幕開けかよ。いつもなら着いた着いた!と喜び勇んで降り立つホームも、今日は名残惜しさでいっぱい。でもここからが、本番の夏。コンコースに並ぶ勇壮なねぷたやねぶたに、祭りへと向け一気に気分も高揚します。

8月上旬奥羽本線701系弘前行き車窓から眺める津軽富士岩木山
みんな4年ぶりの祭りに逢いに来たのか、奥羽本線のホームは上りも下りも乗り換え客でいっぱい。東北路といえばの701系を写真に収める暇もなく、何とか無事に着席。

賑わう車内に身を委ね、着々と確実にその瞬間に近づいてゆく感覚を噛みしめる。あと数時間後には、待ちに待ったあの熱さと再会できる。そんな僕の昂りを、津軽富士はその雄大さをもって静かに見守ってくれるのでした。

津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて~
8月上旬夏の弘前4年ぶりに歓声とヤーヤドーが戻ってきたねぷた祭り
2023.8 青森/宮城
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●1日目(東京⇒弘前)
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●2日目(弘前⇒仙台⇒東京)
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