津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて 2日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて 2日目 ①~

8月上旬夏真っ盛りの弘前小堀旅館洋室出迎える眩い朝 旅の宿

耳に瞼にこころに、未だねぷたの余韻を抱きつつ迎える眩い朝。あと数時間で、愛する津軽の夏ともお別れか。朝一に襲うそんな軽い未練を取り払うべく、シャワーでさっぱり目を覚まします。

8月上旬夏真っ盛りの弘前小堀旅館朝食
身も心もすっきりしたところで、お待ちかねの朝食の時間に。ねぷたの際はいつも素泊まりにしていましたが、旅館らしい和朝食に魅かれ今回は朝食付きプランにしてみました。

食堂へと向かうと、お膳に並ぶほっとする顔ぶれ。湯気の上がるおだしの効いた優しいお味噌汁、甘めのふっくらとした煮豆。自分で焼くベーコンエッグに塩鯖と、昨日の火照りを鎮めてくれるような穏やかなおいしさに満たされます。

8月上旬夏真っ盛りの弘前小堀旅館をチェックアウトし津軽富士岩木山を一望できる場所へ
今回は洋室だったけれど、もし来年予約が取れたら和室に泊まってみたい。1泊の短い弘前滞在を実のあるもにしてくれた小堀旅館に別れを告げ、弘前城へと向かいます。

いつもはお城に直行するところですが、あとはバスに乗って仙台経由で帰るだけ。折角なので歩いたことない道をと思い、旅館の南側の通りを西に向かって進みます。

すると道中、朝から開いている酒屋さんを発見。入ってみると豊盃が定価で売られており、迷うことなくお土産に購入。ほくほく顔で進んでゆけば、眼前には大きく裾野を広げる岩木山。頭こそ雲に隠しているものの、その雄大さに思わず息を呑んでしまう。

8月上旬夏真っ盛りの弘前初めて弘前市民会館側から弘前公園へと入園
何度見ても、津軽富士の偉容には圧倒される。何故こうも、東北の山々にこころ魅かれるのだろう。岩木山の優美な姿をこころに刻み、来年までの分の東北の夏を胸いっぱいに補給します。

8月上旬夏真っ盛りの弘前弘前城二の丸南内門
今日はいつもとは違う順路で弘前公園内へ。市民会館や博物館の脇を抜け赤い橋を渡り、弘前城の二の丸に位置する南内門から入城。昨年修理が完了したそうで、漆喰や銅葺きの瓦にまだ初々しさが残る姿が印象的。

8月上旬夏真っ盛りの弘前弘前城二の丸南内門内部公開床に残された釿の跡
訪れたときは特別に内部が公開されていたため、もちろん見学してみることに。1611年に建てられたというこの門、床板には四百年以上前の職人の刻んだ釿の跡が残されています。

8月上旬夏真っ盛りの弘前耐震化工事を終えた弘前城二の丸南内門内部の筋交い
この工事は現在の基準への耐震化も兼ねていたそうで、大きな空間には真新しい木材で取り付けられた筋交いも。ですがその数はそれほど多くはなく、古の人々の地震に対する知恵と技術に驚かされます。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園公開中の二の丸南内門に展示されていた三の丸追手門の屋根材
ずらりと並べられているのは、弘前城の玄関口である追手門で使われていた屋根材。普段間近で眺めることのできない部分のため、装飾の繊細さに改めて驚きます。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園公開されていた二の丸南内門に展示された三の丸追手門の旧鯱
ここ南内門とともに、60年ぶりの修復工事を終えた追手門。取り外された鯱からは、少なくとも60年以上もの長きに渡り城の入口を護り続けてきた歴史が伝わるよう。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園特別公開中の二の丸南内門の薄暗い室内から眩い津軽の夏を浴びる
400年以上もの間、修理されながら大切に残されてきた南内門。普段は入れぬその内部で弘前城の歴史に触れ、ふと外を見る。薄暗い室内とは対照的に、外には溢れんばかりの津軽の夏。格子から零れるその質量に、思わず目を細めずにはいられない。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園下乗橋と修復中の弘前城石垣、曳屋された天守閣
思いがけない貴重な体験を満喫し、汗を流しながら天守に逢いに向かいます。この下乗橋も、今年3月に改修されたばかり。鮮やかな朱と桜の豊かな緑、それを見守る天守の対比が印象的。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園鋭意修理中の石垣と完成を待つ弘前城天守閣
お城が動く!8年前にそう描かれたねぷたを見たことがつい昨日のことのよう。修理の進められている石垣の内部や天守の基礎に耐震化が必要なことが判明し、お城が元の位置に戻るのは少なくともあと2年は掛かるそう。でも言い換えれば、この姿を見られるのもあと少し。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園見上げるほどの立派な松と眩い夏空辰巳櫓
それにしても、今年の弘前は本当に暑い。弘前城情報館でうつくしい桜の映像を愛でつつクールダウンし、再び歩き始めます。じりじりと照りつける太陽に負けず、天を目指す松の大木。その下には、400年以上もの間城の南東を護り続けてきた辰巳櫓。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園60年ぶりの修理工事を終えた弘前城三の丸追手門
今年も無事に、弘前の夏に出逢えたな。噴き出す汗は、すなわちこころから溢れる歓びの声。来ることのできない時期はあったけれど、またこうして戻ってくることができた。その事実をただ純粋に嬉しく思い、来夏の再訪を誓いつつ追手門をくぐります。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園修復を終えうつくしい姿となった弘前城三の丸追手門
今年も本当に良い夏だった。毎年こうして迎えてくれる弘前にお礼を伝えるため、振り返りもう一度。あぁ、まぶしい。この胸に押し寄せる眩さは、真新しい漆喰や銅瓦からくるものだけではきっとない。

8月上旬夏真っ盛りの弘前公園夏空の下佇む荘厳な弘前城三の丸追手門
本当に、今年もありがとうございました。また来年、必ず弘前へと帰ってきます。夏空の下凛と佇む追手門にもう一度だけお礼を告げ、意を決してバスターミナルへと向かうことに。

8月上旬夏真っ盛りの弘前旧第五十九銀行本店本館青森銀行記念館
豊かな緑と眩い陽射しに溢れる弘前公園に別れを告げ、残りの時間を噛みしめつつ歩く弘前の街。江戸時代から明治、大正、昭和、平成。普段のくらしの中に様々な年代の建築が溶け込んでいるこの街並みが、僕は好き。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷたがずらりと並ぶ雅会のねぷた小屋
重厚な旧第五十九銀行本店本館を横目に進み、桜大通り沿いの緑地へ。そこにずらりと並ぶのは、津軽の夜を焦がす大小のねぷたたち。初めて弘前を訪れたとき、扉の閉ざされた大きな小屋は何のためのものなのかと不思議に思ったことが懐かしい。

8月上旬夏真っ盛りの弘前街を快走する弘南バス昭和ラッピングバスプロジェクトにより復刻された旧塗装車
白昼のねぷたに昨夜の熱気を重ねつつ、再び歩みを進めます。すると土手町通を快走してくる、見慣れぬバス。このバスは、地元の有志が立ち上げた「弘南バス昭和ラッピングバスプロジェクト」により復刻されたものだそう。弘南バスの旧塗装って、こんなに格好良かったのか。

8月上旬夏真っ盛りの弘前歩いてきた土手町通を振り返り別れを告げる
昭和の塗装に心魅かれつつ歩く街。6月に初めて訪れ、そこで一目惚れしたねぷたに逢うため翌々月に再訪し。それから12年、まさかこんなに長く通うようになるとは思ってなかった。来れば来るほど、しみじみ好きになる。

8月上旬夏真っ盛りの弘前夏空を背に風に揺れるかわいい金魚ねぷた
1泊2日、夕方着の昼前発。正味1日もない短い滞在だったけれど、今年も弘前の夏を味わえてよかった。そして何より、以前のねぷたが帰ってきてくれた。

過ごした時間の長短よりも、大切なのは密度なのかもしれない。いつもなら寂しさ募る帰り際ですが、今日はそれよりも充足感が勝っている。それはきっと、来年も、そのまた来年も、弘前はこうして僕を迎えてくれるという安心感があるからこそ。

本当に良い時間を、今年もありがとう。また来年、必ずここへ帰ってきます。12年間繰り返してきた再訪の誓いを揺れる金魚ねぷたに託し、この街を離れる決心をするのでした。

津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて~
8月上旬夏の弘前4年ぶりに歓声とヤーヤドーが戻ってきたねぷた祭り
2023.8 青森/宮城
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●1日目(東京⇒弘前)
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●2日目(弘前⇒仙台⇒東京)
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