津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて 1日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて 1日目 ③~

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた先導するねぷたの側面に描かれたたか丸くん 旅の宿

次から次へと流れ来る灯りの洪水、繰り返されるやぁーやぁどぉーの力強い波。その熱気に共鳴するかのように見る側の歓声も昂り、4年ぶりに訪れたこの瞬間に立ち会えることがただただ素直に嬉しく思える。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた鬼若丸の鯉退治の人形ねぷた
縁もゆかりもない僕ですらそう思うのだから、地元の方々の歓びは想像できるはずもない。ねぷたを曳く人、お囃子を奏でる人、その人々に声援を送る地元の人たち。皆の弾けるような豊かな表情が、そのことを物語っているよう。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた津軽の夏の儚さを背負う美しい見送り絵
僕が毎回こうして弘前ねぷたに来て感じること、それはこのお祭りは地元のためのものだということ。もちろん僕らのような観光客も大勢いますが、それをも超える地元の方々の人数と声援の力にはいつも圧倒されるばかり。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷたスライドして複数の絵が現れる見送り絵
各団体が、それぞれのねぷたの優美さを競わせるかのように続く合同運行。その単位は町会や企業、学校、愛好会など様々。だからこそ、所縁がある団体を応援する人々にも熱がこもるのだろう。そしてその声援に応えようと、進化を続けるねぷた。このねぷたには、スライドし異なる絵柄を楽しめる見送り絵が。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた2車線の商店街を幅いっぱいに通るねぷたたち
せっかくこの時期に青森県に来ているのだから、いつかは青森ねぶたも見てみたい。そう思い続けてはや12年。それでも毎回、毎夜こうして弘前の灯りに染まってしまうのは、この独特な距離感の心地よさがあるからなのかもしれない。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた西遊記を題材にした大きな組ねぷた
一方通行2車線の商店街、手の届くほどの距離を進んでゆくねぷたの隊列。道幅いっぱい、建物の3階を超えるほどの高さのねぷたが、目の前を厳かに通り過ぎてゆく。地元の人々に交じりつつこの距離で受け取る熱量は、生で経験した者のみに許される感動そのもの。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた洋装の美人画と美しい満月の描かれた見送り絵
威勢の良い曳き手の掛け声にはじまり、それに誘われ悠々と姿を現す大小のねぷたたち。その後ろからは腹へと響く力強い太鼓とお囃子が追いかけ、過ぎ去ったあとには灯りと色彩、音色の余韻が残るのみ。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた黄金色に夜空を焦がす勇壮な鏡絵
鏡絵では動を、見送り絵では静を表現するというねぷた。それぞれのねぷたに対比があり、ひとつの団体の中にも起承転結が流れる独特な世界観。単なるお祭り騒ぎではない、弘前ねぷたに宿る深い情緒に僕は惚れてしまったのだろう。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた津軽の夜を焦がす熱い祭りももうすぐ終わり
待ちわびた津軽の夏の到来を歓び、その短さを儚みつつ夏を見送る。勇ましくもどことなく愁いを帯びるお囃子の音色とともに、表裏一体というものを具現化したかのような津軽の熱い夜。そんな時間と戯れられるのも、残すところあと僅か。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた妖艶な見送り絵に津軽の短い夏の夜を儚む
この一夜に賭けた、ねぷたへの僕の熱い想い。それが通じたのだろうか、久しぶりにねぷたのもつ熱量に逢えた気がする。津軽の夏のように、短くも濃い一夜だった。このためだけにここまで来て、本当に良かった。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた今年も来てしまった本日終了を告げるねぷた
そしてついに姿を現した、本日終了を告げるねぷた。あぁ、今年もこの瞬間が来てしまった。祭りが熱ければ熱いほど、そして愉しければ愉しいほどこの文字が切なく目に映る。ねぷたの運行のみならず、僕の夏の終わりを告げるものだから。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた青森県警のパトカーの後を追ってねぷたの後追いをする
嫌だ。まだ僕の夏は終わらせない。その切なさに駆り立てられ、未練がましくねぷたの後を追いかける。余韻にこころを灼くこの時間までが、僕のねぷたでの大切な儀式。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた合同運行のコースを練り歩き各町会へと帰ってゆくねぷたの後を追う
合同運行を終え、各町会へと向け帰ってゆくねぷたたち。灯りとお囃子が夜空を焦がしているうちは、もう少し、あと少しだけと、その後を追ってしまう。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた合同運行を終え各方面へ散ってゆくねぷた
みんなが家路を目指すように、ねぷたもそれぞれの町へと散ってゆく。通りを染める光と音がいつしか弱まり、夏の夜の熱気がグラデーションのように冷めてゆく。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた合同運行を終え最後の一台となったねぷたについてゆく
それでも醒めやらぬ、僕のこころの火照り。最後の一台となったねぷたとともに、夏の終わりを感じつつ歩く夜の街。その瞬間にふと気づく、半袖の腕を撫でる夜風の冷たさ。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた合同運行を終えねぷたの後追いをし宿へと戻る途中に別のねぷたと再会
短くも濃い、けれども濃くも短い夜だったな。これで僕の夏も本当に終わりか。そう思いつつ涼しい夜道を歩いていると、商店街には帰路へと就く別のねぷたの姿が。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた土淵川を照らす金魚ねぷたに感じる夏の終わりの切なさ祭りのあと
あんなの、ずるいよ。今年はこれでお別れだと決めたのに、不意打ちでまたであの輝きを魅せてくれるなんて。そう最大限に名残惜しく思わせるほど、今年のねぷたはこころに沁みた。存分に身を委ねたからこそ訪れる、祭りのあとのこの感傷。今はただ、このほろ苦さに揺蕩いたい。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた久しぶりの本気のねぷたを浴び重厚感ある小堀旅館へと帰る
涼しい夜風に吹かれつつ歩く帰り道。こころの火照りも醒めたところで、出迎えてくれる木造の宿。夏の終わりの切なさに浸ってしまった身に、この温もりがありがたい。

8月上旬夏真っ盛りの弘前ねぷた祭りのあとの切なさつまみに津軽の酒を飲み、小堀旅館の小さな窓から明るい満月を望む
シャワーで汗を流し、ほっとひと息ついたところで開ける津軽の酒。ちびりと含みじっくりと呑み込めば、今でも耳の奥からやぁーやぁどぉーの声が溢れてくる。

天候がどうなるかも分からないのに、一夜に賭けてここまで来るなんて。我ながら、なかなかアレだよな。そんなことを思いつつも、何故だか根拠のない確証というものすら覚えてしまう。

初めて津軽の地を訪れたときにこそ、急な土砂降りで岩木山神社へのお参りは見送ったけれど。その年の夏から毎回通い続けているねぷたは、これまで一度も雨で中止になったことがない。何度か危うい状況はあったものの、これにはもう不思議な縁というものを感じずにはいられない。

今年もこうして、津軽の熱い夜に染まることができて良かった。そして何より、以前のねぷたが戻ってきてくれて本当に良かった。日程や宿はどうにかなる。いや、どうにかしてでもやっぱり来たい。ヤーヤドーの余韻に浸りつつ、来年の再訪を明るい月に誓うのでした。

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津軽の夏へ、どうしても。~ヤーヤドーに逢いたくて~
8月上旬夏の弘前4年ぶりに歓声とヤーヤドーが戻ってきたねぷた祭り
2023.8 青森/宮城
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