南部と津軽、夏めぐり。~呼べば幸来るヤーヤドー 4日目 ②~ | 旅は未知連れ酔わな酒

南部と津軽、夏めぐり。~呼べば幸来るヤーヤドー 4日目 ②~

8月上旬夏の東北旅弘前曳戻し前の最後の夏を迎えた弘前城追手門 旅グルメ

来々軒で百年続く味に満たされた後は、この街の象徴である弘前城へと向かうことに。今年は絶対、天守に逢うとこころに決めやってきた。もう何度も訪れた弘前公園ですが、今年は歴史に残る特別な年に。

8月上旬夏の東北旅弘前城に掲げられた曳戻しの看板
僕にとって、四度目の夏の弘前となった2015年。「お城が動く」を題材にしたねぷたに圧倒されたことを、いまでも鮮明に覚えている。あれからもう11年。今年の火祭りが終わったら、本丸の内側に移設されていた天守がお堀端へと曳き戻される。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園入口と辰巳櫓
感慨に浸りつつ追手門をくぐり、まずは弘前城植物園へ。藤田記念庭園で購入した共通券に含まれていたため、見学してゆくことに。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園白神山地生態園にうっそうと茂るぶなの森
入園すると、まず出迎えるのが鬱蒼と茂るぶなの森。白神山地生態園と名付けられたこの一画には、橅だけでなく白神山地に自生する草花も。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園白神山地生態園看板に止まったきれいなオオシオカラトンボ
焦がすような津軽の太陽を、ほどよく遮ってくれる豊かな森。葉擦れの音をもたらす涼やかな風に誘われ歩いてゆくと、なんとも言えぬ青さを湛えるオオシオカラトンボが。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園季節ごとに異なる花の咲く花ごよみの径
とんぼを写そうと思える日が来るなんて、想像もつかなかった。いまでも大の虫嫌いですが、とんぼやちょうちょはきれいだと思えるように。こうして少しずつでも苦手が好きに変わってゆくのも、いろいろな旅先での出逢いというものがあったからこそ。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園もふもふとした見た目が印象的なスモークツリー
夏の花が咲く花ごよみの径を抜け進んでゆくと、なんとも特徴的な姿をした大きな木が。あまりのふわふわ加減に、おぉ、もっふもふだ!と独り言がもれてしまう。今調べてみたらスモークツリー、和名を煙の木というのだそう。もふもふの木で検索して一発で出てきたので、みんな同じことを思うのでしょう。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園生垣見本園・バラ園
弘前城の広大な三の丸の一角に設けられた、弘前城植物園。梅や牡丹にバラといった花の種類別のほか、和洋の庭園や用途別の樹木と、テーマごとに区切られたさまざまなエリアが。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園に大輪の花を咲かせる瑞々しいあじさい
風はからっとしていても、陽射しは力強い津軽の夏。じりじりと肌を灼くような暑さのなか歩いてゆくと、木立に守られるように咲く大輪のあじさい。8月初旬で、まだこんな瑞々しい姿を見られるとは。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園から眺める辰巳櫓
いつも歩くルートからは桜の木に隠れがちな辰巳櫓ですが、植物園からはお堀端に凛と立つうつくしい姿を見ることが。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園修復された三の丸庭園
旺盛な緑を浴びつつ進んでゆくと、これまでとは雰囲気を異にする一画へ。ここはかつて、弘前城の三の丸庭園があった場所。明治時代に灯籠や庭石が運び出され一旦は荒廃しましたが、現在は起伏を活かした枯山水として修復されています。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園津軽の眩い陽射しに透かされる青もみじ
そういえば、ここに入るのは初めてだったかもしれない。津軽の短い夏の滾りを一身に受け、我こそはと力強く輝く緑たち。青もみじ越しに仰ぐこの青空が、今年の夏として胸の奥深くへと刻まれる。

8月上旬夏の東北旅弘前城植物園を抜け東内門から二の丸へ巨大なクレーン越しに眺める今年最後特別な場所に佇む天守の姿
津軽の夏色が凝縮された植物園を抜け、改修中の東内門をくぐり二の丸へ。すると巨大なクレーンの下には、天守の姿が。この位置にあるのも、今夏で見納め。

8月上旬夏の東北旅弘前城はらんだ石垣は長い修復作業を終え緻密に積まれた凛とした姿へ
水の抜かれたお堀端へと近寄れば、長い修復を終えた石垣。隙間なく緻密に積まれた端正な表情に、思わず胸が熱くなる。

8月上旬夏の東北旅弘前城朱塗りの下乗橋と鉄骨の組まれた天守台
積みなおされた石垣の凛とした表情にこころを打たれ、いよいよ本丸へ。朱い下乗橋の奥に見えるのは、鉄骨で組まれた武骨な構台。曳戻しに備えて天守台の耐震化が施され、曳家後の天守の保存修理工事にも使われるそう。

8月上旬夏の東北旅弘前城今夏で見納めとなる本丸内側に位置する天守の姿
ここでふたたび共通券を呈示し、有料エリアとなる本丸へ。内濠に沿ってつづく石垣、その奥に聳える白亜の天守。一般的なお城の情景のようにも思えますが、これはあくまで仮の姿。

8月上旬夏の東北旅弘前城今夏で見納めとなる本丸内側に位置する天守25°回転させられ曳家のときを待つ
見学用の通路へと向かえば、微妙な角度で鎮座する天守。いま調べてみたところ、曳家に備えるため27日から回転させる作業が進められたそう。一週間かけて25度。ということは、このときは作業を終えたばかりだったのか。

8月上旬夏の東北旅弘前城本丸から望む優美な裾野を広げる津軽富士岩木山
お城が動くと知ったときは、まだまだ先だと思われた曳戻し。途中さらに修復期間は延びたものの、ついにまもなくその日が来るのか。そんな勝手な感慨を胸に眺める岩木山。その優美な姿が、いつも以上に胸を打つ。

8月上旬夏の東北旅弘前城本丸の内側に移設された天守の最後の雄姿を眼にこころに灼きつける
雄大に裾野を広げる津軽富士を眼にこころに灼きつけ、もう一度天守の仮の姿を間近で眺めることに。

この記事を書いている日の5日前、21日からはじまった曳戻し。曳初めで10㎝、そして翌日には113㎝動いたそう。だからもう、この姿すら過去のもの。このあと多くの人々の手により、お城はゆっくりと自分の居場所へと戻ってゆくのでしょう。

8月上旬夏の東北旅弘前城本丸の内側に移設された天守別れ際にもう一度その雄姿を眺める
僕にとっては、もとの天守台よりこの場所のほうが長い付き合いとなった弘前城天守。次逢うときは、ここにはもういない。仮住まいの天守よ、さようなら。今度は想い出のお堀端で、また逢いましょう。

8月上旬夏の東北旅弘前城本丸の内側に移設された天守に別れを告げ本丸から二の丸へ
だめだ、なんだか泣きそう。百年に一度の大工事。頭では理解していたつもりでも、もう一生この姿を見ることはないのか。そう考えると切なくもあり、でももとの姿に戻る日が待ち遠しくもあり。

8月上旬夏の東北旅弘前城丑寅櫓
はじめて弘前を訪れてから14年、そして曳家から10回分の夏が過ぎ。その分重ねてきた想い出は深く、そして自分も同じように歳をとったんだ。

8月上旬夏の東北旅弘前城すっかり広場の姿を取りもどした石垣の石置き場であった四の丸
幾多もの石が並べられていた四の丸も、すっかり広々とした姿に。これから天守は、曳戻しを経て保存修理工事へ。再来年には素屋根が掛けられまったく見えない状態となり、それが4年ほどつづくのだそう。

8月上旬夏の東北旅弘前城亀甲門から城外へ
予定通りいけば、もとの姿を見ることができるのは6年後。もう僕は五十代になっているのか。31歳にはじめて出逢ってから20年。51歳になった僕は、一体どんな心境で想い出の弘前城と対峙するのだろう。

8月上旬夏の東北旅弘前城お堀に面する石場家住宅
幾重もの夏の想い出が詰まった弘前城に別れを告げ、そろそろホテルへと戻ることに。これまた改修工事中の亀甲門を抜ければ、お堀の向かいには長いこみせをもつ石場家住宅が。

8月上旬夏の東北旅弘前城お堀端に建つ川﨑染工場の渋い建物
お城の北側は、武家屋敷が並んでいたという仲町。その手前、お堀端に沿う亀甲町はかつての町人町。さきほどの石場家住宅は江戸中期、この川﨑染工場も江戸後期の建築といずれも藩政時代を知る生き証人。

8月上旬夏の東北旅弘前文化センターの前に建つ初代藩主津軽為信公銅像
じりじりとした陽射しのもとお堀の緑を浴びつつ歩いてゆくと、弘前文化センターの前には初代藩主の津軽為信公の銅像が。凛と立つその雄姿に、今年も津軽の最高の夏と再会できたことへの感謝を伝えます。

8月上旬夏の東北旅弘前城桜大通りに建つねぷた小屋と青森銀行記念館
津軽のお殿様の凛々しさを眼にこころに刻み、祭りの有料観覧席も設けられる桜大通りへ。そこに建つのは、ねぷた小屋と青森銀行記念館。

はじめて弘前を訪れた14年前、この白い大きな小屋を見かけても何だろうと思うだけだった。まさかその2ヶ月後に思い立って初ねぷたを迎え、こうして毎年逢いに来るようになろうとは。

8月上旬夏の東北旅弘前津軽塗の下駄を買うためにゑびすや履物店へ
朝からぐるりと弘前を満喫し、温泉で汗を流すべく一旦ホテルへ。その前に、どうしても寄りたいお店が。もう何度もお世話になっている、ゑびすや履物店。女将さんとお話ししつつ選んだ鼻緒をすげてもらい、僕だけの津軽塗の駒下駄が完成。

8月上旬夏の東北旅弘前創作郷土料理の店菊富士本店
今年も無事に相棒を東京へと連れて帰れることになり、ご満悦で大浴場へ。岩木桜の湯で黒石のとろりとしたお湯に揺蕩い、16時半過ぎに部屋を出発。アップルウェーブ前で無料観覧席の整理券を確保し、『創作郷土料理の店菊富士本店』へと向かいます。

8月上旬夏の東北旅弘前創作郷土料理の店菊富士本店いがめんち揚げと帆立の貝焼き味噌
ここははじめてのねぷた旅で訪れ、8年前にも再訪した想い出のお店。その2回は運よくすんなり入れましたが、その後何度も予約で満席。悔し涙を流したのでいい加減学習し、今年は事前に予約済み。

夏の弘前を半日たっぷり歩いたため、もう喉はからっから。冷たい生で復活を遂げていると、お待ちかねの2品が運ばれてきます。

まずは津軽の郷土料理として有名な貝焼き味噌から。ほたてのほっくりとした旨味と味噌のコク、それをふわりとまとめるとろとろとした卵。限りなくおだやかで、どこまでも滋味深く。津軽のやさしさが込められたひと皿に、思わず胸が熱くなる。

こちらも大好物の郷土料理、いがめんち。菊富士では焼きと揚げを選べますが、今回は揚げで。表面はさっくり香ばしく、中からとろりとあふれる野菜の甘さ。そこにいかのじんわりとした風味が広がり、本当に誰がこんな旨いものを考えたんだと古くからの生活の知恵に脱帽。

そしてなぜだか写真を撮り忘れてしまったのですが、豆腐とそばもやしのサラダも注文。

その名のとおり、蕎麦の実を発芽させたそばもやし。通常のものよりもかなり細く、生で食べれば極めて繊細でありながらシャキシャキと瑞々しく風味豊か。豆腐も豆感のある味わいで、それらをまとめる深浦産雪下にんじんの自家製ドレッシングがまた旨い。

8月上旬夏の東北旅弘前創作郷土料理の店菊富士本店お刺身四点盛り
ジョッキから早々と津軽の地酒に切り替えていたので、それに合わせてお刺身四点盛りを。たいにまぐろ、サーモンとどれも日本酒にぴったりの旨さ。そしてやっぱり、北国はたこが旨い。この瑞々しい身に込められた北海の味が、噛めば噛むほどじゅんわり舌へと沁みてゆく。

8月上旬夏の東北旅弘前創作郷土料理の店菊富士本店帆立とリンゴのかき揚
このあと祭りが控えているものの、すっかりエンジンがかかってしまい帆立とリンゴのかき揚も追加。これがもう、衝撃的な旨さ。

はじめて訪れたときに食べた帆立とリンゴのグラタンで、その組み合わせの妙は体験済み。満を持して熱々を頬張れば、そんなハードルのさらに上を超えてくる。

さくっとした衣には塩味がついており、中には凝縮感あるほたてがごろごろ。貝柱のほくほく感、ひもの食感に濃い旨味。そこに華を添えるのが、さっと高温で加熱されたりんごの絶妙な塩梅。

甘すぎない品種を使っているのでしょうか、りんごの甘味が悪目立ちすることなくものすごく自然になじんでいる。そこにふわりと酸味と香りが追いかけ、ほたてとりんごのコンビは間違いないと今日確信。

8月上旬夏の東北旅弘前創作郷土料理の店菊富士本店若生昆布おにぎり(タラコ)
旨い品々つまみに、ぐいぐいどんどん進む酒。昨日に引き続き、飲みすぎだ。ねぷたの時間も勘案し、名残惜しくもそろそろ最高の宴を〆ることに。筋子もいいが、バッケ味噌の焼きおにぎりも捨てがたい。そんななか、悩みつつも選んだのは若生昆布おにぎり。

若生とは、まだやわらかい1年目の昆布の若芽のこと。とはいえわかめに比べれば厚みがあり、噛み切るのにもちょっとしたコツが。大口開けて頬張れば、なかから熱々甘いふっくらご飯とうれしいたらこ。噛みしめれば昆布の強烈な旨味がぶわっと広がり、それでいて嫌味がないのがすごいところ。

口の中が、あっという間に北の海だ。これはもう、〆といいながら善きつまみだな。太宰治も好んだという若生おにぎり片手に津軽の酒を傾け、まもなく始まる火祭りへの想いは一層熱を帯びてゆくのでした。

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