フサキビーチから『バス』を乗り継ぎ、空港線の平得東バス停で下車。目の前の大きなマックスバリュでお土産や泡盛を買い込み、宅急便で自宅へと送ります。
あぁ、明日は帰っちゃうのかぁ。お土産を選んでいると、ふと忍び寄るちょっとした寂しさ。まあでもまた来られるからいいか。八重山の旅は自然とそう思えてしまうのだから不思議なもの。
そして今日のお昼は、裏手に位置する『ふるさと食堂』へ。独特なテラスの雰囲気と飾らない美味しさに惹かれ、また来てしまいました。
3日前、ここに来たのがついさっきのようでもあり、だいぶ前のことのようでもあり。テラス席で冷たいオリオンビール片手にこの旅の濃さを噛みしめていると、注文していたミニカレーとミニ八重山そばのセットが運ばれてきました。
普通ならカレーとそばのセット!と注文するところですが、こちらのメニューはボリューム満点。ミニと言ってもこの量ですから、これでしっかり満腹になること間違いなし。
まずは好物の八重山そばをひと口。優しい。染みる。染みわたる・・・。どこも尖った部分のない穏やかな旨味が小麦感満点の麺に絡み、何度食べてもため息の出る美味しさ。もう八重山そば無しでは生きていけない、確実に。
続いてカレーを。にんじん、じゃがいも、お肉がごろりと入ったカレーは、その見た目通り最上級に旨い家庭の味といった趣。何だろう、この安心できる素朴な旨さは。ご飯も丼一杯に詰められ、その炊き方もちょっとだけ柔らかめでこのカレーとの相性はピッタリ。
次も石垣島に来たら寄ろう!陽気なおじさんにごちそうさまと告げ、ふるさと食堂を後にします。帰りはバスを使わずのんびりと歩き、ホテルへと戻ります。
空模様はあいにくの曇天。これが初めての石垣島だったら少し残念に思ったでしょうが、今はこれはこれでとても心地良い。キラキラを求めて訪れた一昨年とは違い、この島で過ごす日常感がとてもしっくりくるのです。
ホテルでゴロゴロと午後の怠惰を愉しみ、ほんのりと日暮れの気配を感じる頃この旅最後の宴へと繰り出します。今回訪れたのは、石垣島で一番古い大衆居酒屋と言われる『豊年満作』。一昨年、去年と満席で入れなかったため、今回は予約して行きました。
大衆居酒屋と言っても、八重山らしいメニューがそろっているのが嬉しいところ。たくさんのメニューに悩みつつも、まずは美崎牛のタタキを注文。しっかりとした赤身の味わいの中に感じる脂の甘味がお酒を誘います。オリオン飲み干し、泡盛ください!
お次はこれまた好物のジーマミ豆腐を。今回は揚げだしを頼みました。もっちりとした衣に包まれたジーマミ豆腐は、熱が加わりとろりと魅惑の食感に変身。ちょっと濃いめのだしが、ピーナッツの風味によく合います。
続いてはチーズぎょうざ。八重山らしい郷土料理の中にもこうした定番メニューがあるのも、このお店の人気の理由のひとつなのかもしれません。
カリッと香ばしく揚げられた餃子の皮の中には、しっかりとした食感のプロセスチーズ。こんな料理には、クセの強いナチュラルチーズよりもプロセスチーズが好ましい。郷愁を誘うようなおいしさに、泡盛が一層進みます。
どれを頼んでも美味しいので、続いてソーメンちゃんぷるを注文。運ばれてくると、その麺の太さに目が行きます。冷麦ほどの太さのソーメンをつまんでみると、これまでにないするするとほどける感覚。もしやこれは!と思い口へと運べば、うんうんと頷いてしまう納得の旨さ。
太めの麺はしっかりとしたもっちり感があり、それでいて炒めた小麦麺料理特有のあのベッタリ感はありません。僕はあの食感も含めて好きなのですが、相方さんはそれが嫌いなためソーメンちゃんぷるはこれまで控えていました。ですが、こちらのは炒め感はあるのにベタつきはなし。どうやって調理するとこんな感じになるのでしょう。
またこの味付けが絶妙。にんじん、にら、豚肉の旨さを引き出す必要十分なシンプルさですが、それがソーメンに絡むと格段の旨さに昇華するのだから驚き。八重山の料理に共通するこの穏やかかつしっかりとした美味しさは、一体どうしたら出せるのでしょうか。
続いてはマグロのお刺身を。厚めに切られたまぐろは角が立ち、赤い見た目通りのしっかりとした赤身の旨味を感じます。石垣島はまぐろとかつおが本当においしい。じんわりと広がる旨味に、泡盛が進みます。
石垣島での最後の宴の〆にと選んだのは、定番のラフテー。大衆居酒屋を名乗りながら、そうとは思えないクオリティー。しっかりと煮込まれたバラ肉は、豚皮と白身はとろんぷるんに、赤身は凝縮された食感に。味付けも濃すぎず薄すぎずの塩梅で、くどくない甘味が泡盛にピッタリ。
いやぁ、旨かった。そして何より、安かった。広い店内は地元のお客さんと観光客で気が付けば満杯になり、そして賑わう理由を身をもって実感。石垣島の外食のコスパの良さには、毎度のことながら驚かされます。
満足感に包まれ外へと出れば、もう空はすっかり真っ暗に。泡盛の酔い心地を感じつつ歩く夜の石垣の街は、煌めく灯りを纏い一層その美しさを増したように感じられます。
お土産屋さんを冷やかしつつ、最後の石垣での夜を噛み締めるかのようにゆっくりと歩きホテルへと戻ります。そして部屋で噛み締める、石垣の味。亀せんべいと共に色々なところで目にして気になっていた、塩せんべいを食べてみます。
小麦粉でできたせんべいは、ぱりっとサクッと軽い食感。シンプルながら、塩とサラダ油、そして炭水化物との相性の良さを感じさせる素朴なおいしさが口に広がります。
塩せんべいをぱりぽり、そして泡盛をちびり。バルコニーへと出れば、身体を包む南国の夜風。こんな夜が永遠に続けば。自分の体を真っ二つに割って、愛する東北とここ八重山に住まわしてやりたい。3度目となる石垣島への愛着は、この夜闇のように深くなるばかりなのでした。
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