湯野上温泉駅から単行の気動車に揺られること30分足らず、西若松駅に到着。列車自体はこの先JR只見線に乗り入れ会津若松まで行きますが、ここが会津鉄道の終着地。いつもなら終点の会津若松まで行くのですが、今回は初めてこの駅に降り立ちます。
降りたことのない駅から歩いたことのない幹線道路を進んでゆくと、何となく全く知らない街のような気がする。そんな不思議な感覚を抱きつつ20分ほど歩いてゆくと、鶴ヶ城の南口へと到着。民家のすぐ裏手には空堀と土塁が迫り、僕の知っている鶴ヶ城の表情とは全く違う。
これまで歩いたことのない登城ルートだからか、それとも雪の積もる季節に訪れるのは初めてだからか。きっとそのどちらも強く作用しているのだろう、これまでにはない渋い道のりに、早くも鶴ヶ城に惚れ直してしまいそう。
土塁に設けられた切通を抜けると、左右に延びる堀を縫うように進んでゆく小径。冬枯れの木々の先には巨大な石垣が壁の様に連なる姿が透けて見え、いつもの北口からのルートでは感じられないほどの強い護りの気配が漂います。
深いお堀に、高さのある石垣。そのすぐ近くには住宅地が広がり、遠くに煌めく白銀の会津の山並み。何だろう、今日の鶴ヶ城は僕の全く知らないお城のよう。進むごとに魅せる新たな表情に、新鮮な感動が途切れません。
聳える石垣に圧倒されつつ進んでゆくと、突如現れる赤い橋。廊下橋と呼ばれるこの橋は、敵が攻めてきた際は切り落とせるように造られていたそう。その奥に見え隠れする幾重にも連なる石垣に、このお城の護りの堅さが感じられるよう。
そしてついに、ついに鶴ヶ城天守閣との御対面。約5年ぶりとなる再会、それも初めてとなる白銀に染まる季節。ちらりと見えたその流麗な姿だけでも、この先どんな美しさを魅せてくれるのかと胸が高鳴らずにはいられない。
逸る気持ちを抑えつつ、廊下橋を渡り帯廓へ。その橋上からお堀を望めば、この圧倒的な威圧感。深い堀に聳える、壁の様に連なる緻密な石垣。これまで平坦な北口からばかり入城していたので、鶴ヶ城のこんな雄々しさは知らなかった。
橋を渡り切ると、そこには分厚い石垣が折り重なるように続く桝形へ。とにかく感じる重厚感。それもそのはず、帰宅後調べてみると古い時代にはここが大手口であったのだそう。
重厚な桝形を抜けると、そこには違う表情を見せつつ連なる石垣が。緻密に加工された石垣の奥には、無骨に組まれた古い時代の石垣。幾重にも築かれた石垣は、その時代や役目により異なる姿を現代へと伝えます。
そして振り返り、これまで抜けてきた桝形をもう一度。ただひたすらに、格好良い。僕はお城マニアではないので詳しいことは全く分かりませんが、石垣の威容には無条件に心へと訴えるような格好良さを感じてしまうのです。
雪の銀白、石垣の灰色、天守の白。そのモノクロームの世界に少しだけ、ほんのりと色を与えるか弱き青さの冬の空。
初となる冬の鶴ヶ城。まだその全容と出逢う前なのに、早くも心は釘付けに。雪の様に潔く輝く白亜の天守を目前に、より一層心は会津の冬に染まってゆくのでした。
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