会津発、信夫へ続く銀鉄路。~冬の福島・湯季味旅 5日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

会津発、信夫へ続く銀鉄路。~冬の福島・湯季味旅 5日目 ③~

2月中旬福島交通飯坂電車美術館図書館前駅の渋い駅舎 旅行記

信夫山で思いがけないほどの青さを浴び、良い汗を掻いたところで湯の街を目指すことに。美術館図書館前駅から再び『飯坂電車』に乗車します。

2月中旬福島交通飯坂電車美術館図書館前駅に入線する新型1000系
レトロな雰囲気漂う小さな駅舎、構内踏切の先に佇む小ぢんまりとした島式ホーム。これぞ地方私鉄といった情景に溶け込みつつ待つことしばし、飯坂温泉行きの電車が到着。かつて東京で満員の乗客を乗せていた車両も、今ではのんびりと二人一組で余生を歩んでいます。

2月中旬冬の飯坂温泉駅
単線の小さな路線に詰まった中小私鉄の情緒に身を委ねること20分、終点の飯坂温泉駅に到着。ここに降り立つのは5年ぶり。そのときのことがつい昨日のことのように思い出され、改めて時の流れの速さに驚かされます。

2月中旬冬の飯坂温泉街のシンボル十綱橋
駅を出て、まずは街のシンボルともいえる十綱橋にご挨拶。優美なアーチを描く華奢な鉄橋は、今年で御年百七歳。摺上川をひと跨ぎする大正生まれの美しき古豪は、今なお現役で両岸の交通を支えています。

2月中旬冬の飯坂温泉緩い上り坂と温泉街
緩い円弧を描く上り坂に沿って立ち並ぶ商店街。床屋やお茶屋、靴屋など、温泉街というより地元の人々の生活に根差した街並み。大型ホテルの並ぶ川沿いと違い、何となく湯の街での暮らしが薫ってくるかのよう。

2月中旬冬の飯坂温泉鯖湖神社と鯖湖湯の木造源泉タンク
人々の暮らしの濃厚な気配のなか進んでゆくと、飯坂温泉の昔からの中心部へと差し掛かります。まず目を引くのは、大きな木造のタンクと小さなお社。飯坂温泉発祥の地であるというこの場所には、鯖湖神社と鯖湖湯の源泉タンクが並びます。

2月中旬冬の飯坂温泉江戸時代建築のなかむらや旅館
その向かいには、白壁の美しい立派な土蔵。江戸時代に建てられたというこの三階建ての蔵は、今なお現役の湯宿として客人を迎えているそう。奥に並ぶ明治築の土蔵と共に国の登録有形文化財に指定されているようで、こんな宿で一夜を過ごしたらとあらぬ妄想が頭をよぎります。

2月中旬冬の飯坂温泉旧採進堂酒店
そんな重厚ななかむらや旅館に隣接し建つのは、これまた渋い佇まいの木造建築。会津の榮川、花春、そして山形の朝日川。銘酒の立派な看板の掲げられた旧採進堂酒店も、国登録の有形文化財なのだそう。

2月中旬冬の飯坂温泉旧堀切邸表門
古から栄えてきた飯坂の歴史を伝える建築たち。この一画にはそんな生き証人がもうひとり。江戸時代から続いた名家のお屋敷であった旧堀切邸へと入ります。

2月中旬冬の飯坂温泉旧堀切邸主屋
重厚な表門から敷地へと入ると、当時の隆盛を感じさせる建物がいくつも並びます。この明治生まれの立派な主屋は、そんな古の記憶を持つ建物のひとつ。今回は時間の都合上中へは入りませんでしたが、贅沢というものを具現化した内部は5年の時を経ても忘れることはありません。

2月中旬冬の飯坂温泉旧堀切邸江戸時代から残る十間蔵
その斜向かいには、更に時代を遡り江戸時代に建てられた土蔵が。250年近くも前に建てられたこの十間蔵は、福島県に現存する蔵の中では最大かつ最古のものなのだそう。

2月中旬冬の飯坂温泉旧堀切邸十間蔵内部に飾られた吊るし雛
米蔵や酒蔵として使われてきたという内部へと入ると、翌月に控えた桃の節句に向け手作りの吊るし雛がたくさん飾られています。

2月中旬冬の飯坂温泉旧堀切邸十間蔵の吊るし雛
広い蔵を支えるのは、縦横に走る立派な梁。無骨さと華奢さ、土色に映える色とりどり。装飾も何もない古い蔵と吊るし雛の対比は、どこか違う世界にでも迷い込んだかのような不思議な美しさ。

2月中旬冬の飯坂温泉鯖湖湯で熱い湯を
旧堀切邸で飯坂の歴史を感じ、すぐ目の前に位置する『鯖湖湯』でこの旅最後の湯浴みを愉しむことに。『いい電1日フリーきっぷ』を持っているので、それに付いている入湯券で入ることができます。

まず目を引くのは、この立派な木造の湯屋。現在の建物は19年前に改築されたものですが、日本最古の木造共同浴場として長きに渡り親しまれてきた先代の建物を再現したものだそう。年季の入りつつある木材と曲線美を放つ大屋根の対比が印象的。

内部は脱衣所と浴場が一体となった昔ながらの造り。服を脱いでいるそばから感じるむわっとした熱気に、飯坂の湯の熱さの予感が漂います。

浴場は、落ち着いた色味ながらまだ新しさを感じさせる艶やかな御影石造り。ひんやりとした心地よさを感じさせる一画で、まずは掛け湯に挑みます。うぅん、やっぱりあっちぃ。浴槽の温度計は46℃を表示しており、うん、だろうね。という直感的な熱さ。

5年前に訪れたときも、やっぱり熱かった。でも僕は知っている、丹念に掛け湯をすれば入れてしまうことを。蒸気と湯の香が立ちのぼる中、何度も何度も掛け湯をしていざ入湯。足先からゆっくりと、そろりそろりと入ります。

そしてついに肩まで到達。5年前も感じたのですが、飯坂の湯は熱いといっても嫌な熱さではないのです。ビリビリくる訳ではなく、でも体の芯まで滲むような熱さ。やっぱり長湯は禁物で、額に大量の汗を掻いたところで湯船の周りの広い床に退避します。

体にくっきりと浮かんだ赤いライン、全身を伝う大量の汗。お尻や足に御影石の冷たい心地よさを感じつつ見上げれば、木の温もり溢れる高い天井と差し込む午後の陽射し。しばし共同浴場の情緒を味わっていると、いつしか汗は引き何故かまたあの熱い湯に浸かりたくなる・・・。

そんな不思議なループを5回ほど愉しみ、汗を引かせてから上がることに。とにかく熱い。熱いのだけれど、逆上せたのとは全く違う。心身がしゃっきりと目覚めたような何とも言えぬ軽さ、爽快感ある湯上りに、飯坂の湯の力を感じます。

熱いけれど入れてしまう。入った後は身軽になる。無色透明ながら温泉に宿る不思議な力を体感し、この旅最後の湯浴みを味わうのでした。

会津発、信夫へ続く銀鉄路。~冬の福島・湯季味旅~
2月中旬会津鉄道車窓を埋め尽くす雪原と銀嶺
2022.2 福島
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●1日目(東京⇒湯野上温泉)
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●2日目(湯野上温泉⇒会津若松⇒中ノ沢温泉)
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●3日目(中ノ沢温泉⇒高湯温泉)
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●4日目(高湯温泉滞在)
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●5日目(高湯温泉⇒福島⇒飯坂⇒東京)
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