猪苗代から磐越西線に揺られること約45分、列車の乗り継ぎ駅である郡山に到着。乗車予定の列車までしばらく時間があるので、駅周辺を散策してみることに。それにしても、この駅に降り立つのは約13年ぶり。時の流れの速さに改めて驚きます。
駅前からのびる大通りを歩き、旧国道4号線を越えたところで立派な鳥居を発見。郡山の総鎮守である安積国造神社にお参りします。
2つ目の鳥居をくぐると大きな岩が。どうやらここが、安積国の発祥の地のよう。135年に国が開かれてから、1900年近くもの間郡山の地を見守り続けています。
安積開国の祖が祀られた、立派な拝殿にお参りを。再び郡山を訪れる機会に恵まれたことのお礼を伝えます。この拝殿は、200年以上も前の江戸時代に建てられたものだそう。戊辰戦争の戦火や震災を潜り抜けてきた歴史が、その渋い風合いから伝わるよう。
郡山の鎮守様にお参りを終え、周辺を少し散策しお昼を食べることに。何を食べようかと悩みましたが、どうやら特徴的なラーメンがあるという『ますや本店駅前店』に入ってみることに。
メニューは全てしょう油ラーメンですが、スープの違いでいくつかの種類に分かれています。その中で、僕が食べてみたいと思っていた「郡山ブラック」である伝を注文。待つことしばし、お待ちかねの伝が運ばれてきます。その見た目は、ブラックの名の通り結構な色の濃さ。
しょっぱいのかな?などと思いつつスープをひと口。あれ?味は濃いのにしょっぱくない。何とも深みのある味わいに、ひと口、またひと口と飲み続けたくなるスープ。塩分ではなくしょう油の風味や旨味が凝縮されたといった印象。
続いて麺を。かなり細めの縮れ麺はつるつると口当たりがよく、濃くありつつもまろやかなスープをしっかりと口へと運んできてくれます。大ぶりのチャーシューは口どけがよく、濃いスープを纏い堪らない旨さ。
濃いのにしょっぱくない。濃いのに食べ飽きない。昭和20年頃からの味を再現したという郡山ブラックは、何とも中毒性のある印象深い旨さ。麺とスープの往復が止まらず、気づけばあっという間に完食してしまいました。
いやぁ、旨かった。期待していた以上のおいしさにお腹も心も満たされ、次なる目的地へと向かいます。乗車するのは、東北本線の普通列車。慣れ親しんだロングシートのあいつではなく、クロスシートの新型E721系がやってきました。
車窓を眺めるのが好きな僕にとっては、景色を愉しみやすいクロスシートはありがたい。でも、四半世紀近くもの付き合いとなる東北路の顔である701系も、そのうち無くなってしまうのだろう。そう考えると、ちょっとばかりの寂しさを覚えます。
そんなどうでもいい回想に耽っていると、車窓には雄大な安達太良山が。僕は今朝まで、あの山の向こう側に居た。体から香る硫黄の余韻に、中ノ沢での一夜がすでに想い出に変わりゆくのを感じます。
視界が開けたかと思えば、車窓を染める青。空も蒼ければ、山並みも青い。冬の枯色との対比は、まさに胸のすくような眺めそのもの。福島盆地へと入った列車は、ここから盆地の底へと向け下り勾配を延々と滑り降りてゆきます。
安積原野から福島盆地の底へと駆けること45分、次なる目的地への玄関口である福島駅に到着。眩い陽射しと全く雪のない姿は、何となく春らしさすら感じる穏やかさ。
猪苗代は今年は雪が多いと言っていたけれど、こちらは雪が少ないのかな。これから向かうあの地はどうなんだろう。そんなことを考えつつ、宿の送迎バスに乗り換えます。
そんな心配も杞憂に終わり、盆地の終わりと共に車窓には白さが戻ってきます。これから向かうは、吾妻の懐。天上のいで湯を目指し、バスは険しい山道へと挑み始めます。
繰り返されるカーブを抜ける毎に、どんどんと増す標高。先ほどまで近かった街並みも、あっという間に見下ろすほどの高さに。
そしてついに車窓は銀世界一色に。これは期待できそうだ。進むごとに深まりゆく雪の量に、これから出逢うであろう幸せな時間への期待は高まるばかり。
間近に迫る、5年ぶりのあの湯との再会。白銀に埋もれ乳白に浸るその瞬間が待ち遠しく、到着を今か今かと待ちわびるのでした。
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