窓際で昼下がりの日向ぼっこを愉しんでいると、天気は一変、一面を染める舞い散る雪。細かい白さ越しのか弱い陽射しは、まるでレースを透かすような華奢な美しさ。
先ほどまでの鮮烈な天然色はどこへやら、一気にモノクロームの情景に。山の天気は変わりやすい。それを体現するかのような表情の豊かさに、いつまでも飽くることなく眺めていたい。
ふらっと現れ、さっと雪を降らせる薄い雲。ぼんやりと移ろう景色を眺めていると、舞う雪の背後には再び青空の気配が。パステルに霞む何とも言えぬ色合いは、幻想的という言葉以外見つからない。
愉しい時間というものは、あっという間に過ぎてしまうもの。窓辺と温泉、ベッドと気ままに行き来をしていたら、もうすっかり日も暮れ夜が来てしまった。
そんな二晩目を彩る、おいしい時間。里芋やオクラ和え、海老寿司といった様々な味をちょっとずつ楽しめる前菜つまみに、地酒を始めます。
酢の物は、野菜のマリネを巻いたもの。色々な野菜の食感や風味が味わえ、食べて楽しい一品。お造りにはほたてやサーモン、たこにひらめが盛り込まれ、どれも吾妻山麓に居るとは思えないおいしさ。
続いて運ばれてきた温かい品々。甘鯛の西京焼きは柔らかい身に宿る凝縮感がおいしく、ふるふるの茶碗蒸しは上品な餡に加えられた茎わさびの風味がいいアクセントに。メゴチや海老の天ぷらはさっくりと揚げられ、かぶの瑞々しい甘さが印象的。
はやま高原豚は、今夜は陶板焼きで。柔らかい身質ながらもしっかりとした肉感があり、噛めば白身の甘味が広がります。
〆にと運ばれてきたのは、梅ひじきご飯と赤だし。もっちりとしたご飯とカリカリ梅の爽やかさに、お箸が進みます。赤だしには鶏団子が入っており、ふんわりとした団子に赤みその風味がよく合います。
最後にデザートまで平らげ、大満足で部屋へと戻ります。ベッドでごろりとお腹を落ち着け、今宵の供を開けることに。喜多方は大和川酒造店の、弥右衛門純米にごり酒月あかり。程よい甘酸っぱさを楽しめる、ふくよかな味わいのおいしいにごり酒。
日中は一時雪が舞いましたが、もうすっかり晴れ空に。今宵は満月。眩いほどの輝きを放つ純白の月を愛で、月あかりを傾ける。ゆったりと流れる至極の時間に、今はただただ漂っていたい。
夜の露天で雪に埋もれつつ夜空を見上げ、郡山の笹の川純米酒をお供に部屋で続きを愉しむことに。すっきりとクセのない、するすると飲みやすいおいしいお酒。
今日は本当によく空を見上げたなぁ。そんな一日を締めくくる、夜空に煌めくオリオン座。吾妻山の懐に居るからだろうか、心なしか星との距離が近く感じる。
青空と雪、昼と夜。今日一日ここで出会っためくるめく表情は、きっと忘れることはないだろう。青白いにごり湯と豊かな情景に癒され、高湯での夜は静かに、そしてゆっくりと更けてゆくのでした。
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