3年ぶりに身を置いた、津軽の熱い夜。光と声の余韻を残しつつ朝を迎え、さっと身支度を整え街へと出ます。昨日とは打って変わって、今日は気持ちの良い青空。このまま午後まで、のんびり弘前の街を散策することに。

重厚な佇まいの旧第五十九銀行本店本館を過ぎ、弘前城のお堀端へ。追手門は現在60年ぶりの保存工事中。今年の冬には、屋根の葺き替えや壁の塗り替えが終わった立派な姿を見せてくれるそう。

春には桜色一色に染まるお堀も、豊かな枝葉に彩られ鮮やかな緑一色に。夏、弘前の夏だなぁ。3年ぶりに再会できた弘前の夏に、思わず目を細めてしまう。

そのままお堀沿いを歩いてゆくと、見るからに歴史のありそうな建物に掲げられたよく見かける看板。弘前のおしゃれスタバで有名なこの建物は、100年以上前に建てられた旧陸軍長官舎なのだそう。そういえば、何度もこの前を通っているのに入ったことがない。国の登録有形文化財の中で飲むラテか。こんどゆっくり来てみよう。

今日は特に予定も立てず気ままに歩く日。この道も藤田庭園の先へは行ったことがないので、そのまま進んでみることに。

藤田庭園の横の急坂を下り、鷹匠町や西大工町など古の城下の名残りを感じつつ歩いてゆくと、ひときわ目立つ立派な煉瓦の煙突が。ここが松緑や六根の蔵元なんだ。ここのお酒、美味しいんだよな。

思いがけず旨い地酒のふるさとに出逢い、今夜は何を飲もうかとワクワクしつつ歩く昼飯前。そのまま岩木川を渡る岩木橋へと進めば、頭を隠しつつも雄大に裾野を広げる岩木山。僕は今、岩木だらけの場所にいるな。

橋上で岩木山の力強い姿を愛で、弘前城方面へと引き返します。途中には、青々とした身をつけるりんごの木。昨日まで続いた大雨で被害にあったりんご畑も多くあったようですが、今年もおいしい弘前のりんごを食べられる日が待ち遠しい。

畑やお寺、民家など人々の暮らしの香りを感じる道をのんびり歩き、弘前城の北側へ。今なおいくつかの武家屋敷が残る仲町地区へと向かいます。

建つ家は変われど、藩政時代の地割を残しているという仲町地区。道の両側には美しい生垣や黒い板塀が続き、刀を持ったお侍が歩いていた当時の様子に思いを馳せます。

それにしても、今日は暑い。昨日の到着時は夕刻とはいえ半袖では肌寒いほどだったので、いかにも津軽の夏といったこの暑さが心地よい。夏の陽射しを浴び、黒塀を彩る朝顔もどことなく嬉しそう。

侍の住んでいた仲町地区を離れ、弘前城のお堀端へ。お城と武家屋敷の間には一筋の町人町が設けられていたそうで、ここ亀甲町には今なおこみせが残る立派な商家の姿も。
久しぶりに歩く、弘前の街。どこに寄るわけでもなく、あてもなくのんびりと。だからこそ出逢える街の顔に触れ、何度通ってもやっぱり好きな街なのだと改めてしみじみ想うのでした。




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