大好きな竹富島に流れる空気感を胸いっぱいに吸い込み、缶詰のように胸の奥深くに封じ込めこの島に別れを告げることに。『安永観光』のうみかじに乗り込み、小さくなりゆく島影を見送ります。
ホテルに戻り、水シャワーを浴びて一旦クールダウン。西日の染める港の輝きが増す頃、夕飯には少々早めだけれどユーグレナモールへ。お土産屋さんで色々と買い、宅急便で発送手配。旅はまだまだ続くというのに、なんとなく漂う終わりの気配に一抹の寂しさを覚えてしまう。
そんな切なさを吹き飛ばすため、今宵も旨い料理と泡盛を愉しむことに。今日は事前に相方さんが予約してくれていた、『島料理やふぁやふぁ』にお邪魔します。
一昨年はたまたま席が空いたところにふらりと入れましたが、このお店は予約必須の人気店。今日も満席とのことで、運よく予約が取れたことに感謝しつつ冷たいオリオンで乾杯します。
まず頼んだのは、パリパリピーマンと自家製油みそ。しっかり冷やされたピーマンは肉厚で瑞々しく、甘味と香りがありつつ独特のクセが無いことに驚き。添えられた油みそは、ちょうど良い甘味のコクに溢れる豊かな味わい。油みそ、本当に大好きすぎる!
早速泡盛に切り替え、島の鮮魚三点盛りを注文。若いメバチは瑞々しく、あっさりながらしっかりと詰まった赤身の旨味が美味。かんぱちに近いというツムブリは、こりっとした歯ごたえと程よい脂、じんわり広がる旨味が堪らない。表面を軽く炙られたセーイカは香ばしく、もっちりねっとりとした甘味を愉しめます。
今日も最高潮に暑かった。そんな火照りを癒すべく、ゆし豆腐の冷奴でクールダウン。しっかりと凝縮された豆感がありつつ、寄せ豆腐ならではの口どけの良さ。島豆腐の濃い旨さを知ってしまうと、どうしても本州の豆腐が物足りなく感じてしまうのが困るところ。
続いて、このお店に来たらやっぱり食べたい出汁巻き玉子。八重山そばのだしをたっぷりと抱き込んだ玉子はふるふると柔らかく、その食感同様ものすごく穏やかで優しい味わい。そこに濃いめの豚そぼろを合わせれば、豊かな旨味の洪水が口中に広がります。
新鮮な刺身に、手作りの味。食欲と呑み欲が加速した僕らは、泡盛に合いそうな二品を注文。ミミガーピリ辛ポン酢は、こりこりとした淡白なミミガーを引き立てる、ちょうど良い塩梅のピリ辛感がお酒にピッタリ。
その奥は、スーチカー。塩漬けにした豚の三枚肉を、香ばしく炙って供されます。沖縄伝統の保存食、スーチカー。こうして単体で食べるのは初めてのため、わくわくしながらひと口。
すると広がる、シンプルな塩味と濃い豚の甘味。沖縄らしく付いたままの豚皮はしっかりと炙られ香ばしく、噛むごとにじゅんわりと染み出すコラーゲン感が堪らない。
塩漬けにされた赤身は旨味が凝縮され、そして驚いたのが脂身の旨さ。余分な油が抜けているのか油っぽさはなく、食材である白身として全体の旨さをしっかりと支えてくれています。
何を食べてもおいしいので、さらに欲張って注文したナポリタンのハーフサイズ。八重山そばを使ったナポリタンは、しゃきしゃき野菜の旨味たっぷり。ほんのりおだしの効いた味わいで、どことなくケチャップ味のチャンプルーといった趣。
ここまでかなりの満腹ですが、一昨年、去年とスルーしてしまっていたこのお店の名物で〆ることに。沖縄県魚のグルクンの唐揚げを使った、グルクンおにぎり。勝手に天むすのようなものを想像していましたが、細かく解されたものが混ぜ込まれています。
ぱくりとひと口頬張った瞬間、こりゃ旨い!と思わず唸ってしまう。グルクンは解されているため食べやすく、ご飯全体に行きわたる香ばしさや淡白な旨味。気持ち濃いめのたれがまた絶妙で、たっぷりと混ぜ込まれたごまや海苔の豊かな風味とともに旨さが混然一体となって襲い来るよう。
いやぁ、食べて飲んで大満足。何を食べても旨い手作りの味、古民家ならではの落ち着いた雰囲気。そんな時間が愉しく、案の定泡盛をたっぷり飲んでしまった。来年も、また来たいな。そんなお店が増えていくことの悦びを感じつつ、ほろ酔い気分で夜の街を歩きます。
ホテルへと戻り、宴の続きを。川平の高嶺酒造所が醸す於茂登は、泡盛にしてはマイルドですっきりと飲みやすい味わい。仕込みや割り水に使っているという、於茂登岳の天然水の良さが活きているのでしょう。
今日も一日、本気の夏だったな。走馬灯のように甦る、竹富島での鮮烈な時間。あのあおさを抱いていれば、また来年へと向け頑張れる。ある意味僕の拠り所のひとつとなった愛する島の余韻に浸り、旨い泡盛は一層その味わいを深めるのでした。
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