動き出す石垣港の気配に目覚める鮮烈な朝。窓辺へと立てば、今日も間違いなく暑くなりそうな空模様。視界を染めるあおの質量に、まだ醒めきらぬ目を細めます。
昨日温泉状態だったコンドイビーチは諦め、今日はのんびり石垣島で過ごすことに。まずはレストランへと向かい、麩チャンプルーや人参しりしりといった八重山の味をいただきます。
ゆっくり朝食を味わい、バスターミナル8:55分発の川平リゾート線に乗車。2,000円で5日間、いや、120時間乗り放題という破格のみちくさフリーパスのおかげで、気軽にバスを利用できるのが嬉しいところ。『東運輸』さん、本当にこのお値段でいいのかと心配になります。
港からまっすぐ進むことあっという間の5分、登野城小学校前バス停で下車。距離的には近いのですが、ずっとだらだら登り坂のためバスの力がありがたい。そのままさらにまっすぐ進み、八重山農林高校を過ぎたところにある『知念商会』でお買い物。ここでお昼と夜の食料を仕入れます。
買い物を終え農高前の交差点で信号待ちをしていると、目の前でバスが行ってしまったので帰りは歩き。ホテルに戻り、すでに汗だくになった体を一旦落ち着けます。
冷房の効いた部屋でゴロゴロと過ごし、良き時間になったところでバスターミナルへ。今となってはすっかり本数の少なくなってしまった、10系統の空港線に乗車します。
このバスに乗れば、真栄里ビーチの最寄りであるANAインターコンチネンタルに横付け。時間さえ合えば、ビーチを訪れるのに便利な路線です。
木々の合間から覗くあおさに誘われ浜辺へと抜ければ、今日も溢れんばかりの輝きに満ちる真栄里ビーチ。大潮が近くだいぶ潮が引いているため、リーフの外の青さとの対比が一層鮮やかに。
外海に面し深さもあるため、潮が引いてもしっかりと浸かれる水深と適度な冷たさがありがたい。状況により様々な選択肢があるのも、市街地泊ならでは。
シートを張りシャツを脱ぎ捨て、海を目指して一目散。そこに待つのは、灼けて火照った肌を包んでくれる心地よさ。昨日焦げた分までしっかりと冷やし、浜に上がって熱射を浴びつつ冷たいオリオンを味わいます。
青い空に碧い海、煌めく白い砂浜の交錯する、極めて南国的な至福の眺め。そんな世界観に身を置きつつ味わう、知念商会のメンチカツ。リゾート的な過ごし方もいいかもしれないが、僕らにとってはこれが愉しくて仕方がない。
続いては、知念商会といえばの名物オニササを。大ぶりなささみフライは時間が経ってもサクサクとし、しっとりとした肉質とじんわり宿る淡白な鶏の味わいがウスターにピッタリ。
それにしても、この食べ方を考えた高校生は天才だと思う。カツにソースを掛け、おにぎりをぎゅっと潰すだけ。たったそれだけなのに、別々に食べるのでは決して味わえぬ謎の一体感ある旨さに昇華するのです。
赤道の近さを感じさせる日射を浴びながら知念商会のフライを味わい、それをオリオンビールでさらりと流す。太陽の熱さに耐えられなくなったら、海に入ってただただ揺蕩う。そんなことをしたいから、毎年こうして通ってしまう。
今年も本当に、夏休みだな。僕にとって無くてはならないものとなった八重山での時間を思い切り愉しみ、そろそろ肌も焦げたところでビーチを後にします。
その帰り道、お惣菜探しにはしごするサンエーとマックスバリュ。なんだかここで、暮らしてるみたいだな。
サンエー前からバスに乗り、ホテルに戻りシャワーを浴びてのんべんだらり。訪れるごとに、島でのあれこれを欲張らなくなってくる。きっとそれは、八重山に流れる時間がそうさせているに違いない。
日も傾きはじめた頃、そろそろ今宵の宴の準備を。去年初めて手を染めてしまった、禁断の甘美。スーパーで買ったお惣菜を並べて泡盛を呑むなんて、この島で暮らしたい気持ちが一層強くなってしまうというのに。
魚の天ぷらやおいなりさん、ソーメンチャンプルーは知念商会のもの。おいなりさんはほんのり甘味が広がる優しい味付けで、ツナの旨味の効いたソーメンチャンプルーは酒にもご飯にもぴったりのおいしさ。
サンエーで買ったお刺身は、スーパーでこれを買えるの?と思う新鮮さ。初めて食べる大東寿司はまぐろがしっかりと漬けにされ、凝縮感ある旨味にどことなく香る南国感がとっても旨い。
はぁ、暮らしたい。やっぱりこんなこと、危険すぎる。遊びに来るのと住むのでは大違い。頭でそれは理解しているつもりでも、毎年毎年訪れる度にその願いは深まるばかり。
いつもなら、お店で飲んでいるこの時間。陽射しの滾りを失いつつ、昼から夜へと移ろう空。得も言われぬこんなうつくしい空色が、夕刻には繰り広げられていたのか。
地元のお惣菜つまみに、ぼんやり空を眺めてだらだらと呑む。そんな怠惰で甘美な時間に身を委ねていると、すっかり空は漆黒に。
誘われるようにしてベランダへと出てみれば、夜の港を見守るかのように瞬く満天の星。あぁ、本当にきれいだ。零れんばかりの輝きに、石垣の夢は深まりゆくのでした。
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