スカイブルーが印象的な仙石線に乗り、塩竈の街を後にします。この仙石線も、津波の被害により現在不通区間が発生していますが、この記事を書いた前日のニュースで、被害区間は内陸へ路線変更して復旧させる方向で進めるとのこと。
あんなことが起こるつい半年ちょっと前に、いとこと一緒に仙石線の車窓からいかだの浮かぶ穏やかな海を眺めただけに、本当に複雑な気持ちになります。
あれだけの被害を出した津波から逃れるには、住居エリアとなる市街地を内陸移転することは避けられないのでしょう。そのためには、鉄道の内陸移転もまたしかり。
全国各地にある美しい車窓と危険とは隣り合わせである。いや、日本という国土自体、自然災害から逃れられる場所は無い、そう思い知らされます。
僕が物心付いた頃から起きると言われ続けた首都圏直下型地震。もういい加減当事者として覚悟を決めなければならない段階にきているのかもしれません。この大地震以来、日々そう思うようになりました。
明日からいよいよ仙台七夕祭り。アーケードでは着々と準備が進められていました。仙石線のあおば通で下車し、そんな賑わいを見せるアーケードを通り仙台駅を目指します。
「わたしたちは負けない!」と力強く書かれた幕。僕はこの震災に関して「頑張れ」という言葉は相応しくないと思うので使わないようにしていますが、それでもふとしたときに思ってしまうときがあります。そんな薄っぺらな頑張れなんて気持ちが恥ずかしくなる、そんな力強さと決意がこのメッセージからひしひしと伝わってきます。
それはきっと、初夏の岩手旅行や今回の旅行で目の当たりにした、現地の方々の力強さや人としての美しさがこの言葉に凝縮されているからこそ。この短いひと言に東北の方々の思いが込められているように思えてなりません。
お祭りを目前にそこかしこで飾りつけが行われています。まさに今、七夕飾りを吊るそうとする瞬間も見ることができました。アーケードに渡された竹に、「せーのっ」と大きな飾りが吊り上げられる姿は迫力満点、圧巻のひとこと。
スポンサーのイメージカラーを取り入れたものから、折り紙で作られた鶴や花などの飾りがたくさん散りばめられたものまで、七夕飾りは様々なデザインで見る者を飽きさせません。
迫力ある飾りの数々を見上げていると、さっと風が渡っていきました。すると一斉に吹流しがさらさらとなびき、優雅な姿を見せてくれました。この可憐で儚く移りゆく姿に、人々は魅了されるのでしょう。
お祭りを直前にして活気の溢れるアーケードをついに抜けてしまいました。もう一度振り返り、七夕飾りの華やかな姿と、その下を歩く仙台の人々の賑わいを目に焼きつけ、未練を断ち切るように背を向けて駅へと歩を進めました。
今回も美しい景色と美酒美食で迎えてくれた仙台。そして運良く見ることができた七夕飾りの圧倒的な姿。お祭り本番ではありませんが、僕にとっての初めての仙台七夕は、忘れられない特別なものとなりました。
そんな仙台とももうお別れの時間。お祭りを見ようと駅から出てくる人の波に逆らいながら歩く道。いつものことながら、楽しい旅ほどその終わりには寂しさがつきもの。華やいだ仙台の街を背に感じる今日は余計にそれを強く感じます。
帰りもMaxやまびこに乗車。復路はちょっとだけ奮発してグリーン車を予約しました。旅行会社のパックの中には、格安でグリーン車にアップグレードができるものがあるので、ここぞとばかりに予約しました。
なかなか乗ることのできない新幹線のグリーン車。静かでゆったりとした空間と座席に、いとこは気持ち良さそうに寝息を立てていました。今年もいい旅をしたね。寝顔を見ながらそう思いました。
そして僕はというと、案の定ワンカップがどんとテーブルに鎮座しています。横にはお気に入りの笹かま、大漁旗も。でもいつもと違うのは、その隣にある紫の長いもの。
今年の七夕祭りには東北各地のお祭りも応援に駆けつけたので、駅前には東北各地の旨いものを売るテントがずらっと並んでいました。これはそこで見つけた仙台長なす漬け。5本も入って100円とビックリ価格。お土産用のものは結構なお値段がするんです。
仙台駅を静かに滑り出したMaxはグングンとスピードを上げ、車窓を景色が流れ始めます。ゆったりとしたシートに身を委ねて澤乃泉をひとくち含めば、都会と歴史、伝統が共存する美しい街仙台や、潮の香と歴史の薫る塩竈での思い出がゆっくりと胸に沁みこんでゆくのを感じます。
仙台伝統の長なす漬けは、その独特の旨味とちょっとした渋みをもって、そんないつものプロセスをより豊かなものにしてくれました。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、1泊2日夏の東北旅行ももう終わり。去年の旅行以来すっかり東北が好きになったといういとこ。来年はどこ行きたい?と聞くと「秋田!」との答えが。そうか、秋田はお兄ちゃんも大好きな場所だぞ!と僕もついつい嬉しくなってしまいました。
来年の夏休みも一緒に行ければいいね。そして、その頃にはこんなステッカーが必要ないくらい、東北が元気になってくれているといいね。そんな思いを胸に、新幹線に掲げられたメッセージを眺めるのでした。
東北新幹線も地震で大きな被害を受けましたが、翌月には全線で運転を再開し、半年経った9月には、ついに震災前の通常ダイヤでの運行と、完全復活を遂げることができました。
地震後全線開通時に貼り出されたこのステッカー。単なるメッセージではなく、有言実行というJR東日本の決意の表れに見えて仕方ありません。
完全復活を遂げた東北新幹線と、内陸移転を視野に入れつつこれから復旧を目指す、未だ不通の在来線。日本の動脈である鉄路が人々を運び続ける限り、僕は東北の地を訪れることになるでしょう。
鉄路の先にある、まだ見ぬ新しい東北に想いを寄せて・・・。
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