レンズに収まりきらない長~いノーズ。そう、また東北新幹線乗り場に立っている自分に驚きます。
ある夜、そう言えば去年見たねぷたは良かったよなぁ、などとしみじみ焼酎を飲むひととき。ホテルも取るのが大変だったっけ、と思い出し、気が付けば指が勝手にじゃらんのアプリへ。
別に、行くつもりなどさらさら無かったのです、本当に。異動して勤務も変わり、2連休も無くなってしまったのでなおさらのこと。
それでも今思えば、酔っぱらいながらも自分の明け、週休の日程をしっかり指定して検索していたところを考えると、潜在的には行く気満々だったのかもしれません。
そして運良く(悪く?)去年泊まったホテルが空いてるじゃありませんか。何でよ!?何でこんなに簡単に取れるの?去年大変だったでしょ?
気が付けば、予約成立。自分の馬鹿。1泊2日でねぷたなんて、どこにそんなお金あるんだよ。雨降ったらどうするんだよ。バカ、バカ。
翌日目が覚めお酒が抜けると、途端に後悔が押し寄せてきます。それでも予約したものは仕方がない。ちゃっかり新幹線まで手配済み。キャンセル料払うくらいなら行ってやるよ(怒)と、普段は絶対にしない衝動的な1泊2日の旅がこうして決定しました。
どうせ行くなら思いっきり満喫してやる!(怒)残された数日で東北を楽しめるよう行程を考え直し、予約した新幹線を変更していざ出発。スマホひとつでホテルから足まで。本当に怖い世の中です。
行きはE5はやてで盛岡まで。8月1日とは言え、新幹線は帰省客とビジネスマンで満席。窓側は取れませんでしたが、安いトクだ値がよく取れたものです。
車窓を楽しむことが出来ないので、盛岡までちょっとだけおつまみタイム。東京駅地下のグランスタで、パリパリきゅうりの塩昆布和えと、まぐろの甘辛揚げを購入。横に写っているロング缶をプシュっと開ければ、僕の心は一気に夏休みモード。4時起きの早番の眠さもどこかへ飛んでいってしまいます。
ビールの進むきゅうりとまぐろ揚げ。大宮に着く頃にはすっかり空になってしまいました。ここで開けるのは、今回初めて見た空木(うつぎ)というラベルのお酒。どうやら僕の大好きな伯楽星を造っている宮城は大崎市の新澤醸造店のお酒だそう。スカイツリー開業日の誕生花にちなんだラベルだそうです。
今日の僕の心のように晴れ晴れとした色のパッケージを眺め、ぐいっとひと口。さすがは伯楽星を造る蔵元、僕の好みドンピシャです。すっきりしているのに力強く、後味爽やか。
いやぁ、これから東北だぞ!!約9か月ぶりの東北訪問にテンション激高の僕の心を、いい具合に沈め、いい具合に盛り上げてくれます。行くぜ!東北!!
いつもなら、このあともう少しお酒の紹介が入るところですが、今回はビールと空木で終了。だって、車内で酔っちゃぁもったいない!2日で色々楽しまなければいけませんからね。
E5系は本当に乗り心地の良い新幹線。320k/hで走れるところを、はやてなら275k/hでの流し運転。あまりの快適さに、いつも掛かる時間以上に早く盛岡に着いたような気がします。
これから向かう弘前は、新青森まで新幹線に乗り、そこから奥羽本線に乗り換えるのが一般的。でもそれでは何となく物足りない。色々考えをめぐらしているうちに、高速バスの存在を思い出しました。これなら盛岡で乗り換えても交通費はトントン、時間もそれほどロスせずに盛岡グルメを楽しめます。
盛岡と言えば冷麺かじゃじゃ麺。麺好きの僕としては頭を抱えてしまう悩みに、到着直前まで判断を決めかねていました。それでも最終的に下した判断は冷麺。だって、夏だもん。
ということで、盛岡冷麺の元祖と言われる『食道園』にお邪魔することに。これまで食べたぴょんぴょん舎、盛楼閣とどう違うのか、ずっと行ってみたかったお店です。
盛岡滞在は1時間15分だけ。このお店は駅から少し離れているので、メニューで迷っている暇はありません。早速冷麺の普通を注文し待つことしばし、お待ちかねの盛岡冷麺が運ばれてきました。
まず目に入ったのはトッピングが他とは違うこと。果物は無く、キムチも白菜ではなくカクテキ。スープをひと口啜ってみると、思ったよりも甘味が際立ち、そこへキムチの酸味が溶け込んでいます。
麺は太めのプリプリとした食感。弾力はありますが、嫌な噛み切れなさは感じません。上に載った牛の煮たものも甘め。これまでの2店とも全く違う味付けに驚きます。
いやぁ、盛岡は本当に麺の都。同じ冷麺でも、じゃじゃ麺でも、お店によって全く印象が違う。それぞれのお店にそれぞれの美味しさがある。盛岡へ行くたびに違うお店に寄り、自分一番店を探してみたくなります。
美味しい盛岡冷麺を堪能し、再び盛岡駅を目指します。何と言っても短期決戦、行きは食道園を目指して一目散だったため、帰りくらいはと気持ちのんびり歩きます。
よく考えてみれば、夏の盛岡を訪れるのは初めてのこと。ですが、今日は残念な小雨まじり、それも半袖では肌寒いくらいの気温。夏真っ盛りの盛岡も見てみたいものです。
それでも開運橋から眺める北上川は、緑は勢いに溢れ、川岸には色とりどりの花が咲き、春や秋とは違う趣。来る短い暑い夏に向けて準備万端といったところです。
東北の大きな夏祭りはこの時期に集中して一気に開催されます。そのひとつが盛岡さんさ踊り。太鼓を抱えてのパレードは世界一の規模だそう。
さんさ踊りは、以前訪れた三ツ石神社に伝わる三ツ石伝説に由来するものだそう。鬼を退散を喜んだ人々が三ツ石のまわりをさんささんさと踊り回ったのが始まりと伝えられています。
そんな古くから伝わるさんさ踊り。今回は運良く駅前の広場で演舞する姿を眺めることが出来ました。民謡を思わせる郷愁に溢れた節回しと、勢いよく踊る人々。太鼓からは響く音が心臓へと伝わります。これが広い通りを埋め尽くすほどの人々によって一斉に踊られたらと思うと、その迫力は想像に難くありません。
普通に行けば新青森まで新幹線に乗るところを、盛岡で下車して美味しい冷麺を食べ、思いがけずさんさ踊りを見ることもでき。東北の夏を意図しないタイミングで感じられ、僕はすっかりご満悦。いつもののんびり旅もいいけれど、こんな感じも悪くない?心はすでにそう思い始めています。
短時間で盛岡を楽しみ、いよいよ目的の地、弘前を目指します。今回は盛岡駅の西口から出る弘南バスヨーデル号に乗車。『弘南バス』、JRバス東北、岩手県交通、岩手県北バスによる共同運行で、予約はいりません。
バスは定刻通り盛岡駅を出発し、東北道に入り一路弘前を目指します。行く手は奥羽山脈、田んぼの先に山々が見え始めます。
ところで、ねぷたは紙でできた巨大な行燈。あたりまえですが、雨が降ったらその日は中止。でも、どんどん雨、強くなってるんですけど。今夜しかチャンス無いんですけど。
バスは秋田県に入り、花輪サービスエリアでトイレ休憩。もうすっかり本降りの雨に、僕の心も今にも泣きだしてしまいそう。ねぷたぁ~(泣)
不安な気持ちを抱えつつ、再びバスに揺られます。東北道は日本の背骨を越えて下り始めます。泣きそうな僕の気持ちを察してくれたのか、いつしか雨は止み、碇ヶ関付近では薄らと陽の明るさを感じられるほどにまで回復。頼む、頼みますよ!
藁にもすがる思いで見つめる車窓の行方。とうとうバスは弘前へと入り、遠くには岩木山も下半分だけお出迎え。僕の願いが通じほっと一息。あとは天気がお祭り終了まで持つことを祈るのみです。
何も考えず、酔った勢いから始まってしまったこの旅行。行程をしっかり組む余裕もなく、成るように成れ、それもひとり旅の醍醐味だ!と自分に言い聞かせて出発しました。
ところがこれまで上々の滑り出し。弘前到着前に、久々の東北の空気にすっかり楽しくなってしまっているのでした。
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