盛岡からバスに揺られること2時間15分、弘前駅に到着。バスはこの先ターミナルまで行きますが、ここで降りて先にお土産を買っておくことにします。
それにしても、初めて訪れてから1年半の間に3回目の訪問になるとは思ってもみませんでした。どうしよう、来年もきっと突発的に来てしまいそうな予感がぷんぷん漂います。
心配していた天気もすっかり回復し、爽やかな青空で迎えてくれました。1年振りに歩く弘前の街。あっという間にもう1年経ったか、などと考えながらのんびり歩きます。目指すは『弘前国際ホテル』、去年もお世話になった宿です。
早速ホテルに荷物を降ろし、ねぷたの前に腹ごしらえ。去年気になりつつも入らなかった、『津軽居酒屋けん太』にお邪魔してみることに。
まず始めに結論を言っておきます。次に弘前へ行った時もまたここへ来ます。郷土料理、制覇してみたい。
まずは冷たいビールで旅の疲れを流し、お通しをつまみます。出されたのは、ほたての貝柱ときゅうりの煮物。最初きゅうりと分からないほど青臭みが無く、適度な歯ごたえとほたての豊かな風味に驚きました。ひと口食べてから思わず美味しかったので写真をパチリ。食べかけですみません・・・。
まず迷わず注文したのが、このぶりこ。ぶりことはハタハタの卵のことで、焼いたものは独特のねばりとブチブチ感が美味しい食材。ところがこれは生のぶりこを味付けしただしに漬け込んだものだそう。
初めての食べ方にワクワクしていると、店員さんが食べ方知ってる?と津軽弁で聞いてくれました。初めてです、と答えると、絶対前歯で噛まないこと、奥歯で噛んでカラはどんぶりに捨てること、とこれまた津軽弁で教えてくれます。弘前へ来るとお店の人が津軽弁。いいなぁ♪
早くも青森県へ来た感に浸りつつ奥歯でガシっと噛んでみると、もうバリバリ、ぶちぶち、ジュワジュワ。旨ぁ~(涙)なんですか、この旨さ!!
加熱したぶりことは全くの別物で、硬い皮の中からはだしの浸みたつゆが勢いよく放出されてきます。適度に感じる魚卵の脂の旨味、それでいていくらや数の子ほど生臭くない。もうこれだけで何合飲めてしまうのでしょうか。
続いてはほやの刺身。酢の物や昆布だしで頂く水ものが選べましたが、やっぱりお刺身を。
はり、つやのある見るからに新鮮なほやをわさびとしょう油でパクリ。強い磯の香りと甘み、そして独特なちょっとした苦味が広がります。そこへ豊盃を追っかけで。ほやと酒の香りが鼻へと抜け、至福の時に包まれてしまいます。
考えてみれば、ほんの数年前まで僕にとってはほやは限りなく「食べられない」に近い食材でした。こうして青森や岩手で勇気を出して食べてみて、それ以来新鮮なほやなら好き好んで食べるようになりました。
そう言えば函館でうにを食べた時もそうだった。東京に住む僕らは、海の幸の本当の美味しさを殆ど知らずに死んでゆくのでしょう。そうならないためにも、やはり旅先で色々試してみなければ。
そして、やはり青森へ来たなら食べておきたいのが、この貝焼き味噌。こちらの貝焼き味噌は、ほたても入っていますが煮干しの旨味の方が強く感じるひと品。
家庭の貝焼き味噌には、本来はほたての身は入っていなかったと読んだ記憶があります。これまで数回本場の貝焼き味噌を食べましたが、一番シンプルで、一番優しい味付け。
卵のゆるさも丁度よく、お酒のアテもさることながら熱々のご飯が欲しくなる味わい。貝焼き味噌もそれぞれの味付けがあり、何度食べても楽しく美味しいお気に入りメニューです。
こちらは姫竹と鮭の押し寿司。大好物姫竹を鮭と共に麹で漬け込んだなれ寿司の一種です。以前嶽温泉で頂いてとても美味しかったので、メニューで見つけて即注文。
姫竹には麹の甘酸っぱさと鮭の旨味が移り、シャキッと噛めばそれらがふわっと広がります。北海道の飯寿司、秋田のはたはた寿司も大好物ですが、姫竹と身の締まった鮭の織り成す控えめでいて奥深い旨さも大好き!地酒がどれだけあっても足りる訳がありません。
どうしよう、頼んだもの全てが酒に合いすぎる。あまり飲みすぎてしまうと、肝心のねぷたの前に記憶の方が・・・。と思い、色々なメニューの中から迷いつつも最後の一品を注文することに。
温泉熱で育てられたという関所そばもやしのお浸し。青森でもやしといえば、太さと長さが強烈なインパクトの大鰐温泉のもやしですが、そのつもりで頼んでみたところ、思いがけずびっくりの細いもやしが出てきました。
後から調べてみると、その名の通り豆ではなくそばの実から作るもやしだそうで、津軽地方のみで作られてきた伝統的な野菜だそう。予想外の展開に驚きつつもひと口食べてみると、これがもやしなのかというほど繊細な細さからくる口当たりの良さ。
それでいてしゃきしゃき感はしっかりと感じ、普通のもやしでは感じられない濃い「味」が漂います。まるでそうめんのような食べやすさと、もやしに期待する以上のしゃきしゃき感。旨い!のひと言に尽きます。
貝焼き味噌、姫竹と鮭の押し寿司、そばもやしの無限ループで地酒を愉しんでいると、危うくねぷたに遅刻しそうな時間に。危ない危ない、ねぷたを見に来たんだったよ・・・。
うまい郷土の味に存分に囲まれて過ごした至福の時間。次はねぷたの後、時間を気にせず飲めるタイミングで来たい、そう思えるお店に出会えました。
まだまだ明るさの残る弘前の街を、すでにほろ酔い加減でホテルへと向かいます。待ち構えるはあの熱い夏の記憶。耳の奥から掛け声が、眼の奥から眩い絵がよみがえります。
1泊2日では絶対に遠方へは行かないと思っていた僕を衝き動かすねぷたの力。1年振りの再開を目前に、己の昂りを抑えきれないのでした。
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