高速バスに揺られること4時間15分、バスは定刻通り仙台に到着。ミヤコーのバスターミナルで降り、アーケード街の方へと歩きます。
しばらく振りの仙台。何度来てもやっぱり好きな街。初めて来たときのような新鮮さはありませんが、何となく歩いていてホッとする。やっぱりいつかはここに住みたいなぁ。
なんて久しぶりの仙台を噛み締めつつ当てもなくぷらぷら歩いていると、何かの行列を発見。ふと見ると、笹かまの老舗『阿部蒲鉾店』。そうだ、これだ!!以前テレビで見て以来ずっと食べたかったひょうたん揚げ。でも何故かこれまでお店を見つけることができなかったのです。
思いがけない遭遇に思いっきり喜びつつ、初めてのひょうたん揚げをパクリ。衣はアメリカンドックよりも少し甘めのホットケーキ風。中の蒲鉾は揚げるとふわふわの食感になり、アメリカンドッグよりも好みかも。ケチャップも普通、辛口、無しと選べます。
ひょうたん揚げを片手に歩く仙台の街。美味しいものを食べながら歩けば、これまでとまた違った視点が見えてくるような気がしてきます。
今回は本当にノープラン。どこまでも続くアーケードを気の向くまま歩き、そのまま青葉通へ。夏満開と言わんばかりに葉を茂らせる街路樹が気持ちいい。
ここまで歩いてきたのならと、仙台城跡まで歩いてみることに。これまでバスでしか訪れたことが無かった青葉城。道中で見かけた広瀬川の眺めも、歩きの速度だとよりじっくり楽しむことができます。
青葉通をそのまま進み、仙台市博物館から青葉山を登ってみることに。博物館の入口には古い石垣が残され、城だったことを物語ります。
博物館の横には、立派な伊達政宗公の胸像が。実はこの胸像、あの本丸跡の有名な騎馬像の初代なのだそう。
戦時中に金属供出の為に軍へと渡されてしまった初代騎馬像。ですが、戦後この状態で塩釜に棄てられていたのが見つかり、ようやくここ三の丸跡に戻されたそう。騎馬像ではその表情を窺うことは難しいですが、こちらではお顔をしっかりと見ることができます。
予想だにしなかった政宗公初代騎馬像とのご対面に驚きつつも、更に上を目指します。時刻は16時過ぎ、振り出した弱い雨も手伝いひとりでは心細さを感じるほど深い森の中を歩きます。これほどの緑が仙台都心のすぐ近くにあるのだから驚き。
短くも急な坂を登っていると、苔むした石垣が出現。バスでの道中では決して味わえない、お城があったという証を見つけながらの歩きを楽しみます。
急坂を登りきると、震災で車両通行止めになった旧道に合流。歩行者は通行可能なため、この道を歩き本丸跡を目指します。再び続く登り坂を歩いていると、いきなり目の前に巨大な石垣が。その迫力に圧倒されます。
間近で眺めると、きれいに角が揃えられた緻密な石垣のラインがとても印象的。天守閣が無く、遺構も全く残されていないという仙台城ですが、この石垣は修復されながらも当時から守られ続けています。中には築城当時から2世代の石垣も残されているとのこと。
これまで見ることのなかった仙台城の名残。歩こうと思わなければ、これから先も見つけることができなかったかもしれません。
長い坂を登り切り、やっと本丸跡に到着。こうして仙台の街並みを見ていたあの場所が、先ほどの巨大な石垣の上だったのです。足元に立派な石垣があると分かると、その眺めもいつもと違ったものに見えます。
そして政宗公にご挨拶。またこの地へ来て、またこの眺めを見ることができたお礼をします。見渡す限りの大きな街と、それを包む深い緑。遠くには太平洋を望み、反対側には続く山並み。仙台、本当に好きな街。
仙台城跡からの眺めを存分に楽しみ、再び街へと下ることに。先ほど来た道を引き返し、そのまま市道を下ります。途中寅ノ門、中ノ門跡を通りつつ、再び大通りへ。復元された大手門の脇櫓が往時の姿を偲ばせます。
車道を挟んで向かいには、立派な石垣と長塀が。現在車が多く通るこの車道の部分に、国宝にも指定されていた大手門が建っていたそう。戦災で失われてしまいましたが、写真に残るその姿からは、仙台城の大きさが伝わってきます。
大橋の上から今一度、青葉山を振り返ります。4度目の訪問となった仙台城跡。今回初めて自分の足で登り、そこに城があったという確かな痕跡を初めて感じることができました。天守閣を持たない、全国最大規模の城。もしそれが現存していたなら、そう思わずにはいられません。
青葉山を歩き、程よくお腹も減ったところで夕食を。恒例となった『うまい寿司勘』の名掛丁店でお寿司と地酒を心ゆくまで満喫しました。金華鯖、旨かったなぁ。
美味しいお寿司でお腹一杯、幸せ心地で歩く仙台駅前。この時間まで飲んでいても東京へは22時前に着いてしまう。来ようと思えばすぐ来られる、だからまた次も絶対にある。そう自分に言い聞かせ、駅の中へと吸い込まれてゆきます。
駅の中へ入ると、いくつも並ぶ立派な七夕飾りがお出迎え。さんさ踊りに始まり、熱いねぷたを肌で感じ、七夕飾りに送られる。東北の夏、熱いのひと言に尽きる。他にもねぶたに竿灯、花笠等々、見たいお祭りばかり。いつかは長期休暇を取って東北夏祭り巡りを決行してみたい。
いよいよ、東北ともしばしの別れの時が。はやぶさ号がホームへと滑り込んできました。ありがとう、ねぷた。僕を突き動かすその熱さがあったから、今年もこうして夏の東北を味わえたのです。
はやぶさ号は僕の未練を断ち切るかのようにどんどん加速してゆきます。そう言えば、はやぶさに乗るのは今回が二度目。前回は震災直後だったため、320k/hで疾走するはやぶさに乗るのは初めてのこと。
E5系はぐんぐんと加速し、ついに国内最高速度に到達。でも、あれ?本当に?と言った印象。車内の静粛性も去ることながら、上下左右の衝動、カーブ時に掛かる遠心力、全てが穏やか。
それでも、流れる人家の灯りを見る限り、これまで体感したことのないスピードであることは間違いありません。ちょっと、E5系くんよ、凄すぎるんじゃない?山陽新幹線の疾走感とはかけ離れた乗り心地に、この車両の持つスペックの高さを感じずにはいられません。
余裕の走りに気を良くし、僕のご機嫌も最高潮。E5系、心から惚れました。そんな最高の車両の中で味わう、最後の東北の味。いつものお供である澤乃泉ワンカップと鐘崎の笹かま、大漁旗。国内最高速度で疾走しながら味わうお酒は、いつも以上に気持ちを昂らせます。
本当は昨日ねぷたのお供にと買っておいたお酒、菊乃井純米吟醸津軽の吟。黒石のこみせ通りで出会った、フルーティーな華やかさがある美味しいお酒。これでこの旅を〆ることにします。
320k/hで流れる車窓はまるで走馬灯のよう。暗い中ぽつりぽつりと流れる灯りが、昨日のねぷたの灯りに重なります。
元はと言えば、酔った勢いから始まった短期決戦、弾丸旅行。言い換えれば、酔った勢いでなければ、自分では絶対にしないであろう、弘前への1泊2日。どうしても交通費を考えると、現地に長く留まりたいと思ってしまう。
うん、でも、今回の旅も本当に良かった。冷麺、さんさ踊り、弘前グルメ、ねぷた、仙台の街並み、そしてお寿司。実はこんなに満喫していました。
ひとつひとつは短いけれど、じっくりは味わえないけれど、でも、何だかとっても濃い夏休みを過ごしたという不思議な満足感に包まれています。
はやぶさに揺られながら味わう津軽の吟。目を閉じればねぷた絵が蘇り、耳の奥からやぁ~やど~と聞こえてきそう。この瞬間、今弘前ではねぷたが行われている。まるで自分がリンクしているかのような不思議な感覚に酔いしれ、幸せ気分で東京へと向かうのでした。
来年も、また行きます、絶対に。
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