昨日は濃い温泉を大満喫し、すっかり癒されたので、すっきり清々しいお目覚め。もちろん、ピリリと締まった空気の中の朝風呂も楽しみ、お腹が減ったところで朝食です。温泉って不思議で、普段朝食を食べない僕ですが、温泉に泊まるとしっかりお腹が減ってしまう。何故なのかいつも疑問に思います。
非常に良い温泉を堪能させていただいたお宿に感謝しつつチェックアウト。朝の爽やかな空気に包まれる湖水へと降ります。今日の洞爺湖は、昨日と打って変わってほぼ無風状態。空の色を吸った穏やかな湖面が、中島を鏡のように映します。
僕は本当にこの洞爺湖が大好き。小さい頃から何度か来ており、馴染みがあるのは確かですが、やはりこの深い色と、真ん中に浮かぶ中島の対比が、他の湖には無い美しさを醸しだしているのでしょう。
中島の左には、おなじみ羊蹄山がくっきりと姿を現していました。この洞爺湖も、周囲にあまり高い山が無い中で、羊蹄山はとても目立つ存在。各地に○○富士という山は数あれど、これほど富士山にそっくりな山はあるでしょうか。
いつも見慣れたニセコのゲレンデからの羊蹄山よりも、洞爺湖から眺めるそれの方が、さらに富士山らしく見えます。まるで富士五湖越しに見た富士のよう。それでいて、シルエットは富士山よりどっしりとしている。まさに蝦夷富士の名に恥じぬ雄姿です。
湖水を後にし、バスターミナル方向へと戻ります。バスターミナルの奥には、2000年の噴火も記憶に新しい、現在も火山活動をしている有珠山の姿が。噴火湾側から見る姿と違い、度重なる噴火で頂ががっぽりえぐれているのが見て取れます。
バスまで時間があったので、隣に建つ『洞爺湖ビジターセンター』に立ち寄ることに。ここには有珠山噴火の歴史や、洞爺湖の自然について展示されています。隣には火山科学館が併設されていますが、時間が無かったため残念ながら入ることはできませんでした。
こちらは、ビジターセンター2階の展望室から見た、2000年噴火口の眺め。中央に見える建物は、その噴火で被災した町営温泉施設と団地を保存したもの。団地の真上の、木の生えていない部分が噴火口縁だというから、いかに人々の生活圏に近いところで噴火したか、容易に想像できます。
実際、前回まで通っていた国道が階段状に破壊され、沼ができるなどして復旧不可能になり、現在は違うルートを辿って、洞爺湖まで走らなければなりません。
現在のルートから、破棄された国道の一部が見えましたが、自分が何度か通ったことのある、見覚えのある風景なだけに、背筋が凍るものがあります。
しかし、有珠山は「耳を澄ませば教えてくれる山」といわれるほど、前兆から噴火を予測できる律儀な山。
2000年の噴火も、火山活動が活発化した段階で全員避難したため、犠牲者0という結果が出ています。この周辺に住む方々は、昔からこのようにして有珠山と付き合ってきたのですね。
再び『道南バス』で洞爺駅に戻ってきました。この洞爺駅、僕にとっては特別に思い入れのある駅で、いつもここを離れるときには、次はいつ戻ってこられるのかと、少し感傷的になってしまいます。冬の一人旅が、さらにそうさせるのでしょうか。
程なくして、札幌へ向かう特急、スーパー北斗がエンジンを唸らせて滑り込んできました。この特急は、僕がJR北海道の中で一番好きな車両。現在のJR北海道高速特急網の礎を築いたのがこの車両です。
今のように北海道にバッタ顔の車両が溢れる前、初めてこのスタイルを見たときの感動は、今でも色あせることなく蘇ってきます。
駅で仕入れたクラシックを開け、洞爺駅のホームを滑り出します。見慣れた景色が、段々と速度を増して流れてゆきます。そんな未練を断ち切るかのように、列車はエンジン音を響かせ、グングンと加速していきます。
この車両の最大の特徴といえば、やはり振子であるということ。曲線の多い線形を、この振子で克服しスピードアップを達成しました。水平線と比較すると、クラシックの缶がどれほど傾いているか、お解かりになることでしょう。
乗車しての体感は、これ以上。車窓には空と海が行ったり来たり。慣れないうちは違和感を感じるかもしれませんが、慣れてしまえば体に掛かる遠心力も少なく、非常に快適な乗り心地。
同じ区間を走る昔ながらの北斗と比べると、振子の威力は一目瞭然。所要時間以上に、乗り心地に差がでます。
北斗なら減速しなければいけないようなカーブもそのまま突っ込んでいくため、加減速の少ない滑らかな運転になります。僕は時間さえ合えば、なるべくスーパー北斗に乗るようにしています。本当に大好き。
室蘭本線はしばらく噴火湾と仲良く併走します。窓に広がるダイナミックな景色とアグレッシブな走りが、クラシックをさらに美味しくさせます。
車内には相変わらずディーゼルの唸りが響いています。やっぱり北海道の雄大な地には、ディーゼル特急が似合う。電車がどうやっても敵わない、大地を力走する迫力が、それにはあります。
頭上の電線のことなど気にせず、巨体を左右に揺らしながら、雪煙を巻き上げ大地を豪快に疾走する。まさにこれがスーパー北斗の真骨頂。
約1時間40分、心地よいゆりかごに包まれ到着した札幌駅。ここを中継点とし、さらに遠くを目指します。目指すは大雪山国立公園。ここから一路、旭川へと向かいます。
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