札幌駅からは、スーパーカムイ号に乗車し、一路旭川を目指します。このスーパーカムイはほとんどが自由席で、指定席は1両しかありませんが、指定席車の座席はデラックスなものが使われています。フリーきっぷを利用するなら、ぜひ指定席がおすすめ。
スーパーカムイ以外にも、今回乗車した北斗、スーパー北斗の指定席も、一昨年乗ったときとは違う、新しい立派な座席に交換されており、このあたりにJR北海道の企業努力が窺えます。
明日のお土産の下調べとして立ち寄った大丸で、こんなビールを発見。クラシックの’09富良野ビンテージというもの。摘みたて生ホップを使用しているそうで、期間限定とのこと。
クラシックはもともと濃い目の飲み口ですが、これはさらに濃くと香りが深い。口に含めば、まったりとビールの旨味と、華やかな香りが広がります。見つけたらぜひ試していただきたい一本。
今日は朝ごはんを食べすぎたので、お昼ご飯はお休み。そのかわりに車内で美味しいお酒を堪能します。こちらは北海道のお酒の中でも知名度のある、男山は特別純米の生貯蔵酒。
男山らしいキリッとした口当たりの、いかにも北国らしいお酒。やっぱり北海道のお酒は美味しい。特に雪煙を舞い上げながら疾走する車内で飲めば、旨さ倍増です。
札幌は晴れ。列車もしばらく晴れの中の雪原をひた走ります。そんな気持ちの良いロケーションでお酒を愉しんでいると、急に雪模様に。滝川駅ではしんしんと雪が降っていました。同じ雪景色でも、晴れているものと、降りしきる雪では、だいぶ印象が違うものです。
このまま旭川も雪なのかと心配していましたが、再び車窓には青空が広がりました。爽やかな景色の中、列車は旭川へと急ぎます。
札幌を出発して1時間20分、北海道は第2の都市、旭川へと到着。降りた瞬間、洞爺や札幌とは明らかに違う、寒さに締まった空気が顔を刺します。
本日のお宿は、大雪山国立公園内に位置する天人峡温泉。旭川駅前から、『旭川電気軌道』の運行するいで湯号に乗車。天人峡を経由して旭岳温泉まで運行しています。運行本数も非常に少なく、時刻もシーズンごとに変更となるため、予定を組む際は要チェックです。(現在は国立公園前入口までの運行。そこからホテルの無料送迎バスに乗り換え)
天人峡温泉までは約1時間。意外と近いことに驚きます。天人峡バス停では、象徴である柱状節理がお出迎え。いやぁ、それにしても寒い。だいぶ奥地まで来てしまったような感覚に襲われます。
天人峡温泉へは、バス停からトンネルを抜けていきます。歩いて5分ほどの距離。今夜お世話になるのが、『御やどしきしま荘』。和風な外観が好印象なお宿です。
玄関先には、立派な塔や門松の氷像が飾られていました。この日中でも溶けることなくきれいな姿を保っていることから、いかにここが寒いのかがわかります。
体はもうすっかり冷え切っているので、急いでチェックイン。館内の温もりが一番のお出迎え。古いタイプの温泉観光ホテルばかり(泊まってもいないのにこんなことを言うのは失礼ですが・・・)の天人峡温泉の中で、こちらはリニューアルされてさほど経っておらず、とてもきれいなことに驚きます。
全室バリアフリーで、館内は程よく落ち着ける規模。大きくも無く、小さくも無く、とても居心地のいい空間。そして出迎えて下さった従業員の方々の暖かいこと。寒い中ここまで来た疲れを一気に癒してくれる、そんな宿です。
他のホテルの窓に明かりが灯らない中、こちらは本日は満室とのこと。お風呂が混む前に早速大浴場へと急ぎます。決して大規模ではありませんが、源泉掛け流しでいいお湯を維持するには丁度いい広さの浴槽。
そこに注がれるのは薄茶のにごり湯。こちらも火山性の温泉で、泉質を見ると洞爺湖温泉に近く浴感もそれに近いもの。ですが、濃度が幾分低い分、のぼせることなくいつまででも入っていられるかのような心地よさ。もちろん、湯上りの保温性も抜群です。
湯上りにはもちろんビール。温泉に泊まりに来て、この瞬間が一番の幸せ。この至福のときに備え、大丸でクラシックの限定版をきちんと仕入れておきました。火照った体に浸みこむ極上のひととき。
温泉に入りビールを飲んで、もう一度温泉へ。雪見風呂を満喫した後はお待ち兼ねの夕食です。お腹が空いていたので、ついつい蓋を取らずに撮影してしまいました。
鰊の酢の物にほっけのマヨネーズ焼き、カリッと揚がったてんぷらと煮物などなど、美味しい料理の数々が並びます。
特にお鍋は赤魚や帆立、鮭などの魚介の旨味がダシに溶け出し、本当にいいお味に仕上がっています。どの品も丁寧に作られており、非常においしく頂くことができました。大満足な夕食です。
部屋に戻る途中、天人峡温泉とライトアップされた柱状節理が見えました。部屋からもこの幻想的な眺めが楽しめるのですが、障子を開けるとさすがに寒いので、お風呂の行き帰りに楽しみました。
部屋に戻りお腹を落ち着けたところで再び温泉へ。その後に楽しむのはもちろん北海道のお酒です。今回購入したのは、栗山は小林酒造の特別純米北の錦まる田。
コップにあけるとまず感じるのが、日本酒特有の強いアルコールの香り。一口飲んでみると、程よい酸味の後に、グッと鼻に香りが抜けてくる、強烈なインパクトのあるお酒。
決して甘ったるいわけではなく、飲み口はどちらかといえば辛いほうだと思いますが、ボディーのしっかりしたガッツリ系な日本酒なので、好みは分かれそう。僕は、これぐらいドスッとくるのも好みなので、おいしく全部飲み干してしまいました。
ひとり温泉の醍醐味といえば、誰にも気兼ねしない部屋とお風呂との往復。何度もお風呂へと足を運びます。
それにしてもここの温泉は本当に肌への馴染みがいい。その柔らかな温泉に体を沈め、ゆっくりと呼吸を整えれば、いつしかお湯は鏡のように静まります。
聞こえるのはお湯の注がれる音と自分の白い息遣いだけ。そして目には幻想的な柱状節理と白い雪。こんな贅沢がどこにあるでしょう。騒がしいものはなにもない、本当に温泉を楽しむだけの空間がそこにはあります。
余計なものは何もないこのまっさらなときに、身も心もすっかり解きほぐされる、そんな一夜を過ごしました。
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