南口から二の丸、帯廓と経ていざ本丸へ。ついにその全貌を現してくれた鶴ヶ城。5年ぶりに目にする白亜の天守は、雪の煌めきを纏いその気高さを一層増すかのよう。
美しい。ただひたすらに、美しい。僕がこのお城に出逢ったのは、かれこれ四半世紀も前のこと。それ以来、幾度か訪れる機会に恵まれてきましたが、その度ごとにこの純潔さすら感じさせる美しさには息を呑んでしまう。
中学時代に初めて訪れたときは普通の瓦だったけれど、赤瓦に葺き替えられてからはより一層優美な姿に。雪を頂くこの季節、その独特な色合いは更に印象を深めます。
冬の晴れ間の下、凛とした姿で聳える鶴ヶ城。その品のある端正な姿からは、このお城の持つ気高さのようなものすら伝わってくる。
白く光る積もる雪、それに負けじと輝く天守。中学生の僕の心を射抜いた白亜の天守は、この季節ならではの美しさを纏いより優美さを増している。
進むごとに、また新たな美しい表情を魅せてくれる鶴ヶ城。僕は歴史に疎いので詳しいことは語れないけれど、このお城からは意志のようなものが感じられる。きっとそれは、お城という象徴を通じて放たれる、その土地の人々の心なのかもしれない。
僕は建物としてのお城に興味を惹かれるけれど、その中でもとりわけ好きなお城がいくつかある。それに共通するのが、お城の意志が感じられるということ。それはきっと、お城の残らぬ東京多摩生まれという憧れからくるものなのだろう。
端正な姿の天守を支えるのは、この城郭で一番古いと言われる石垣。見るからに荒々しい野面積みの石垣は、江戸時代の地震や戊辰戦争、明治維新を経ての昭和の再建と、歴代の天守閣を支え続けています。
本丸からの優美な姿を余すことなく堪能し、再び帯廓へと進みます。本丸より一段低い位置から望む天守閣は、その威厳をより一層増すかのよう。
冬の太陽を背負い、天に聳える鶴ヶ城。時代も天守の造りも変わったけれど、もしかしたら150年前の人々もこんな姿を仰いでいたのかもしれない。
本丸側から見る鶴ヶ城は、その佇まいに品格を感じさせる優美な姿。一方で敵を迎え撃つ西側は、狭間の並ぶ勇壮な姿。城下の象徴として、そして防御の要として、天守閣というものの機能美がこの表情の違いに詰まっているかのよう。
白亜の天守を染める、光り輝く純白の雪。雪化粧を施したこの潔白な美しさは、この季節だからこそ見ることのできる会津の美しさの結晶そのもの。
西若松から初めての道を歩き、聳える石垣が印象的な南口から登城し。これまで訪れた夏や秋とはまた違う、冬だからこその清らかさに包まれる鶴ヶ城。この季節に来ることができて、本当に良かった。まるで初めてのような感動を胸に抱き、溢れる優美さをいつまでもいつまでも眼に焼きつけるのでした。
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