壽丸屋敷で豪商の暮らしに触れ、白石城へと向かいます。市役所の脇から裏手へと回り、ここを入っていくの?と思うような細い道を進んでゆくと苔むした石垣が現れます。
先ほどの緑に覆われた石垣は、お城があった当時から現存している貴重な石垣。ということは、それ以外の部分は復元されたものだということ。明治維新により取り壊されて公園になった場所を、もう一度お城へと造り変える。白石城の復元に掛けた地元の方々の想いの大きさが伝わります。
1995年に再建された白石城。そそり立つ本丸の石垣は、当時の工法にこだわって復元されたもの。27年という時を経て、古から在り続けてきたかのような風格を漂わせます。
石垣の上に連なる塀も、木造で復元されたもの。白が際立つ漆喰塗りと、重厚な石垣の対比が美しい。
石垣に沿って坂を登り切り、回り込んで本丸内へと進みます。手前の小さな門は大手一ノ門、奥の足場の組まれた大きな門が大手二ノ門。訪れたときは3月に発生した地震の復旧工事が行われていました。
石垣に挟まれた狭い通路と門を抜け、たどり着いた本丸跡。天守閣に相当する三階櫓も、足場が組まれて修復中。火頭窓をもつ白亜の天守、見てみたかったなぁ。
この三階櫓も、史実に基づき再現されたもの。大規模な木造建築の新築が難しい現代において、障害を乗り越え全て国産の木材にこだわって復元されたのだそう。写真で見た姿は、それは美しいものでした。これはまた、次来るときの宿題だな。
三階櫓を支える石垣も、現存当時の工法にこだわって復元されたもの。戦国時代からあったお城らしく、石を加工せずそのまま積み上げる野面積みが用いられています。
よし、今度は修復が終わった姿を見に来よう。また白石を訪れるための口実を胸に、お城を後にし川沿いを進んでみることに。
白石城の周囲にはぐるりと川が流れており、これはお堀として造られたものだそう。通常お堀といって想像するものとは違って絶え間なく清らかな水が流れ、底には鮮やかな緑色をした梅花藻がたおやかに揺れています。
さらに川沿いを進んでゆくと、城下町としての往時の面影を色濃く感じさせる雰囲気に。さらさらと澄んだ水を流す用水と、家々につながる小さな橋。お侍がこの道を歩いている様子が目に浮かぶよう。
後小路と呼ばれるこの一画には、藩政時代の武家屋敷であった旧小関家が。訪れたときは茅の葺き替えで休館中。やっぱりこれは、再訪せねばなるまい。
古き良き建物の袂を流れる沢端川。川底に群生する梅花藻は、初夏には小さな白い花を咲かせるのだそう。次来るときは、その時期かな。なんて良からぬ妄想を抱きつつ、城下町の情緒に染まります。
この清らかな水は、お堀としてだけでなく古くから人々の暮らしにも利用されてきたのでしょう。お屋敷に引き込まれる水路に、古くからの人と水との繋がりを感じます。
初めての白石さんぽを終え、すっかりお腹も空いたところでお待ちかねの昼食を。白石といえば、やっぱり温麺。どのお店にしようかと悩みましたが、駅前に位置する『元祖白石うーめん処なかじま』にお邪魔してみることに。
メニューを開くと、驚くほどのバリエーションの豊かさ。あれこれ迷いつつも、揚げたてにこだわっているという海老天うーめんを注文。
暑いなか歩いた体に嬉しいビールを味わいつつ待つことしばし、待望のうーめんが到着。まずは澄んだおだしをひと口。あぁ、優しい。こんなに沁みるだしなんて、なかなか出逢うことはできない。
続いてはうーめんを。素麺とは似て非なる白石温麺。油を使わないため小麦の風味がより感じられ、その短さからもより食べやすいといった印象。ですが見た目よりもしっかりとしたコシがあり、優しいなかにもきちんとした麺の主張を感じます。
こだわりの揚げたてという天ぷらも、その通りの熱々サクサク。さっとおつゆにくぐらせれば、穏やかなだしにコクが加わりまた違った美味しさに。
いやぁ、本当に旨い!もうこのうーめんは、もはや啜るポカリスエット。だしも麺も優しく穏やかで、箸が止まらずあっという間に最後の一滴まで平らげました。
城下町の風情と味に出逢えた、初の白石歩き。まだ見ぬ旅先へ訪れることの悦びを噛みしめ、今宵の宿へと向かうバスを待つのでした。
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