煙、湯けむり、ばんえつ路。~秋の残り火 冬の気配 2日目 ②~

秋空の新津駅

特急しらゆき号であっという間に新津駅に到着。何度もSLに乗って通った駅ですが、降りるのは初めてのこと。

新津は信越本線、羽越本線、そして磐越西線が交わる交通の要所。昔から鉄道の街として歴史を刻んできました。

秋空にすすきが輝く能代川
駅前からのびる道をまっすぐ歩き、目的の場所を目指します。のんびりとした街並み、商店街を抜けて大きな川へ。

ここを渡ればもうすぐ。橋の上からは抜けるような秋の空と白銀に輝くすすきの穂。駅からは少し距離がありますが、こんな天気の良い日は歩くのもまた気持ちの良いもの。


駅から歩くこと20分ちょっと、『新津鉄道資料館』に到着。HP等では駅からバス利用を案内していますが、あまり本数がないため雨天でなければ徒歩やレンタサイクルが主な移動手段になるかと思います。

すでに見えているSLと上越新幹線。そして建物に描かれたラインも、その200系と同じ色と形。早くも僕の胸はキュンキュンいいはじめます。

新津鉄道資料館昔懐かしい昭和レトロな券売機
中へと入ると、想像以上の濃厚な展示物。正直、よくある地方の鉄道資料館程度の規模だと思ってきたので、この濃さには驚き。

このあと本数の少ない磐越西線に乗らなければならないため、不本意ながら駆け足での見学。順路に従い進んでいくと、昔懐かしい国鉄の自動券売機が現れます。

僕の小さい頃はこれより新しい形式であったとは思いますが、強烈に思い出すのが「こどもきっぷ」のボタンを覆うあのアクリル板。

電車に乗る機会があまりなかった僕は、毎回きっぷは絶対自分で買っていました。お金を入れるとボタンが豆球で光り、アクリル板をめくってボタンを押す。それは僕にとっては電車に乗れる悦びと直結する強い記憶。国鉄時代の103系の匂いまでよみがえってくるような懐かしさに襲われます。

新津鉄道資料館新旧ときのシンボル
さまざまな展示物があるなかで、やはり目立つのが新潟関連の鉄道遺産。東京と新潟を結んできた新旧の大動脈のシンボルが、それぞれの威厳を懸けて存在感を放ちます。

新津鉄道資料館見どころたくさんの展示物
181系国鉄型特急電車から始まった、「とき」の歴史。その後上越新幹線開通により200系にバトンを渡し、その団子鼻も今や過去のもの。そしてその歴史は、2階建て新幹線の「Maxとき」へ。その系譜を表すように展示される車両の分身たち。

新津鉄道資料館マニアックな灰皿とテーブルの展示
この資料館の展示物や展示方法はこれまで僕が見たことのない濃厚さ。鉄道博物館のような分かりやすい「どうだ感」は無いのですが、本当に鉄道が好きな人にはじんじんと伝わるマニアックさがある。

この並べられた灰皿やテーブルたちもそのひとつ。鉄道車両は、このような小物たちに彩られて、その存在感を一層強くするのです。そもそも喫煙車自体絶滅危惧種。白く煙る特別急行の車内の記憶も、今となっては良い思い出。

新津鉄道資料館マニアックな展示品たち
ここへ乗り継ぎの間合いで来てしまったことが悔やまれる。こんなに濃厚な鉄道の世界が広がっているならば、次はもっと時間に余裕を持ってこなければ。そう思わせるほどの細かい展示物がたくさん。興味の無い人には決して理解できない、それらが訴えかけてくる鉄道の記憶。見るものすべてにいちいち切なくなってしまう。

新津鉄道資料館並べられたパンタグラフ
どうしよう、もう時間もあまりない。仕方なく室内の展示を駆け足で見終え、外の展示へと移ります。するとそこにはたくさんのパンタグラフが。小さい頃からパンタグラフフェチの僕にとってはたまらない。

パンタグラフといってもその形は様々。用途や制約に合わせて当時の技術を結集し考えられたその構造。電気を動力として走る電車にとって、まさに生命線ともいえる機械。

新津鉄道資料館珍しい新幹線の妻部
入館前から見えていたSLと上越新幹線の車両。その裏側に回ってみると、まず普通は見ることのできない新幹線車両の連結部が。その年季の入った姿に、この車両が東京と雪国を結ぶという過酷な使命を長年にわたり担ってきたことが伝わります。

新津鉄道資料館C57と200系のツーショット
そして前へと回り込めば、黒と白、新旧の鉄道の主役が並ぶツーショット。この並びを見ると、日本の鉄道の尋常ではない進化の歴史を感じます。石炭を燃やし蒸気で走っていた時代と世界最速の高速列車が共存していた時代がある。今となっては信じがたい事実です。

新津鉄道資料館200系の特徴的なスノープラウ
ひかりは北へ。雪国を目指す東北・上越新幹線のために開発された200系。その特徴とも言えるのが、出入り口横に格子が切られた雪切り室と、積もった雪を蹴散らすためのこのスノープラウ。過酷な環境すら克服し、速度と安全、快適の高みを目指す。日本の鉄道の志が、この優美なラインに込められているかのよう。

新津鉄道資料館200系の団子鼻とかわいい目
そんな当時最先端の車両でも、どことなく人間臭さを感じさせるのが国鉄型車両のいいところ。シャークノーズの丹精な顔をした200系も好きですが、団子鼻とかわいい目をしたこの愛嬌ある顔もまた大好き。

新津鉄道資料館200系の独特なラインカーブ
東海道新幹線の鮮やかな白に比べ、この200系は若干クリーム色がかった白。その色に映える深みのある緑は、すなわち僕にとっての北国へのイメージ。30年前に初めてこの車両に乗った時のことは、死ぬまで忘れられません。

新津鉄道資料館485系に輝く特急マーク
大好きな200系に心奪われ感傷に浸ってしまう。でも時間がほとんどない。後ろ髪を引かれつつC57と200系に別れを告げ、屋外展示の第2会場へ。するとそこにはこれまた僕の気持ちをざわつかせる485系の姿が。

僕の中での永遠の特別急行、183系と485系。この色、この形、そして先頭に輝く鋭利な特急マーク。僕は最後の国鉄を知る、鉄道黄金期の残り火を体験することができた世代。もうこれ以上語ることはあるまい。栄光の国鉄特急型車両が放つこの威厳、それが僕の国鉄に対する想いの全て。

新津鉄道資料館485系無骨な連結面
小さい頃、三鷹駅で目にした特別急行かいじ号。その想い出についてはこのブログで散々書いたので割愛しますが、このグループの車両が放つ無骨な存在感がたまらない。

ホームに入線するときのいかにも重たそうな車輪の音。扉の開くときのエアーの音。床下からは抵抗を冷やすためのブロアーが盛大な音を漏らし、短い停車時間を経て甲州へと走り去ってゆく。

そんな重厚な音風景もさることながら、この鈍重な、それでいて憎めない絶妙なデザインがたまらない。連結部には揺れを軽減するためのダンパーが車両間に渡され、特別急行としての乗り心地を担保する。

この無骨な構造には、特別急行が特別たる所以が詰まりに詰まっているとしか思えない。今の通勤電車に似通ったスマートな車両には無い存在感。通勤電車とは次元の違う車両の持つ雰囲気こそが、僕にとっての憧れの特別急行でした。

新津鉄道資料館485系懐かしい東芝ロゴ
床下機器には、これまた懐かしい東芝のロゴが。もう家電では見られなくなった東芝や日立の独特なロゴ。目にする度に懐かしさを覚えずにはいられません。

新津鉄道資料館DD14除雪用機関車
僕にとっての栄光、485系の隣には、除雪用の機関車であるDD14が。その背後、遠くに見える山並みはすでに白く雪化粧をし、これから来る雪の季節を思わせます。そんな雪深い地の交通を支えてきたこの機関車。昔から続く雪と人の戦いの一端を垣間見た気がします。

新津のSLマンホール
敢え無くここで時間切れ。短いながらも濃厚な時間を味わい、鉄道資料館を後にします。駅へと向かう道中には、SLがデザインされたマンホールが。

いまばんえつ物語として走っているC57180は、新津の小学校で保存されていたSL。その保存状態は良好だったそうで、復活にあたっても市民の方々の援助が多くあったそう。

そんな新津の方々の鉄道に対する想いを強く感じさせる、新津鉄道資料館。マニア心をくすぐり過ぎる濃い展示内容に、次はしっかりと時間の余裕を持って訪れることを決心します。

鉄道博物館のような派手さはありませんが、ひとつひとつの重みを感じる鉄道遺産たち。秋の風に吹かれて歩く僕の心の中に、久々に強い鉄道の火が灯るのを感じるのでした。

煙、湯けむり、ばんえつ路。~秋の残り火 冬の気配~

2016.11 新潟/福島
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