湯田中駅のすぐ裏手に無料の足湯を発見。折角なのでちょっと浸かっていくことに。最近は無料の足湯がたくさんあり、服を脱がなくともそこの温泉を手軽に楽しめるので嬉しい限りです。お湯は無色透明で、すぐ近くの渋温泉と違います。
足湯の向かいには、湯田中駅の旧駅舎が佇んでいます。とても古い建物で、国の登録文化財に指定されているそう。隣には公営の温泉施設も併設されています。
湯田中からとことこ歩くこと約30分、待望の渋温泉に到着。前回はバスで5分の距離だったので今回は歩いてみたのですが、志賀高原の裾野に広がるこのエリアは、ひたすらの登り坂。結構堪えました。
渋温泉に入ると舗装は石畳風に変化し、情緒ある外湯がお出迎え。この温泉街の風情を味わいたいが為にここまで来ました。
こちらが今回お世話になる、『湯本旅館』。前回も泊まったお気に入りの宿。歴史ある木造建築がとても重厚でいい雰囲気を出しています。
折角渋に来たなら、やっぱり木造旅館に泊まらないともったいない。隣には外湯の中でも一番大きい大湯があり、いわば渋の中心地に位置し、散策にも便利。
お部屋は懐かしい雰囲気の漂う純和室。トイレは共同ですが、洗面所は室内にあります。よく手入れされており、気持ちよく過ごすことができる、落ち着ける空間。
明り採りの窓には、こんな洒落た装飾が施されています。この旅館の館内のあちこちには、木造建築の美しい装飾がされており、館内を散策するだけでも楽しい。昔の大工さんの仕事が今なお光っています。平成の世になり、ここまでの立派な木造建築に気軽に泊まれる宿もそう無いことでしょう。
窓際の椅子に腰掛ければこの眺め。古びたいかにも温泉宿、といった欄干の向こうには緑豊かな中庭が広がります。聞こえるのは鶯などの鳥の声だけ。現世を感じさせるものは五感に全く入ってきません。ここだけ時が止まった様。
部屋ですこしのんびりしたら、宿ご自慢の温泉へと参ります。こちらの露天は貸し切り制、もう一方の内湯は自由に入ることができます。それぞれ泉質も雰囲気も違い、外湯に行かずとも2種類のお風呂を楽しむことができます。もちろん、どちらも源泉掛け流し。
露天の方は薄く濁った鉄分を感じる温泉。箱庭に作られたような、落ち着いた趣を楽しみながら肩まで浸かれば、もったいないほどのお湯がざざぁっと溢れていきます。まさに掛け流しの醍醐味。自分のためだけにこれだけの温泉が注がれている。湯量豊富で泉質がいい温泉だからこそ味わえる贅沢。
内湯のほうは昔ながらの湯屋をイメージしたような造りで、高い天井から入る光を感じながらゆったり入浴できます。全て石造りで立派な雰囲気が漂います。こちらは無色透明のお湯。もちろん掛け流し。どちらのお湯も適温に管理されており、激熱の外湯と違い気持ちよく入浴できます。
温泉で火照った体を冷ますため、渋の温泉街を下駄を鳴らしながら散策することにします。メインストリートに並ぶ大型旅館はさすがにコンクリ製が目立ちますが、一歩路地へと入ると木造旅館の並ぶ独特の雰囲気。
細い道沿いに旅館やら民家やら、外湯やらがひしめくこの雰囲気がいい。渋には9つの外湯があり、宿泊者は専用の鍵で無料で巡ることができます。
前回来たときは頑張って9つ回りましたが、殆どが激熱で入ることができず、汗だくになった記憶があります。今回は温泉情緒を満喫するため、外湯めぐりで忙しく歩くことはせず、のんびりお散歩に徹します。
途中でお猿を発見!こんな間近で生猿を見たのは久しぶりなのでビックリしました。結構大きい。襲われたらひとたまりも無さそうです。
地元の方によれば、猿が入る露天風呂で有名な地獄谷からおりてくるそう。そうだ、ここは地獄谷とも近いんだった。今度足を延ばしてみたい場所です。
渋の街には路地が縦横無尽に張り巡らされており、こんなひと一人通るのがやっとのような細い道もあります。こんな道をどこに通じているのかと恐る恐る探検するのも面白い。渋には様々な街の表情があり、様々な楽しみ方があります。
こちらは渋の中でもかなり有名な金具屋。木造4階建ての立派な建物が目を引きます。この建物、どこかで見たことがあるような気がしませんか?そう、映画千と千尋の神隠しの油屋のモデルになった旅館だそうです。
散策で一汗かいたところで、大湯でさっぱりすることに。渋の外湯は9つ全て回ると願い事が叶うといわれており、この大湯は外湯にして最大で、最後の九番湯、結願の湯とも呼ばれています。
お湯は赤茶の濁り湯で、温度はぎりぎり入れる程度の熱さ。高い天井がいかにも共同浴場といった雰囲気で、脱衣所の横には源泉の蒸気を利用した蒸し湯も。中にいたおじいさんとすっかり話し込んでしまい、1時間ほど長湯をしてしまいました。
こんな地元の人と触れ合えるのも外湯のいいところ。観光客は地元の方が管理している外湯を、あくまでも拝借するといった気持ちで利用しなければいけません。
大湯ですっかり茹だった体を冷ましてくれるのは、もちろん瓶ビール。部屋に戻り窓を開け、ビールの栓をプシュっと抜いて腰を下ろす。もうこの上ない贅沢であり、身も心も幸福感に満たされていきます。
ビールを飲みながら静かな中庭を眺めていると、ここでどれだけの人が浴衣を着て涼しい風を浴びていたんだろう、そんなことを考えます。
モノクロの写真でよく見る、浴衣を着て窓枠に座り、欄干に手を掛ける。そんな古きよき温泉情緒を、ここでは自分で演じることができます。そしてそれを邪魔する現代的なものは無い。
本当にこの旅館の持つ雰囲気は、温泉遺産級だと思います。そんな時間をビールの苦味と共に噛みしめながら、夕食の時間までぼんやりと過ごすのでした。
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