黄金に染められ海つがる ~北東北よくばり旅 2日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

黄金に染められ海つがる ~北東北よくばり旅 2日目 ③~

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉 旅の宿

新青森駅から送迎車に揺られること2時間半、ついに憧れの地である『黄金崎不老ふ死温泉』に到着。この宿を知ってから願い続けて早18年、ようやくこの瞬間が訪れたことの歓びは筆舌に尽くしがたいほど。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉和室客室
広々としたロビーでチェックインし、これから2泊お世話になる自室へと向かいます。今回予約したのは、和室プラン。ひとり旅には比較的お値打ちなシングルルームも用意されていますが、やっぱり温泉に来たら和室でなければもったいない。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉和室客室から望む曇天の日本海
逸る気持ちを抑えつつ、浴衣に着替え早速あのお風呂へ。残念ながら撮影禁止のため、客室からの眺望とともにお伝えしたいと思います。

この宿のシンボルといえば、波打ち際に設えられた海辺の露天風呂。本当に手の届くような距離に海が迫っているため、波が荒い日は閉鎖されることも。

この日も天気が悪かったため少しばかり心配していましたが、どうやら露天は営業中のよう。さらには先ほどまで降っていた雨も止み、僕が入湯する瞬間を待っていてくれたかのようなタイミングの良さ。

磯の岩場に造られた露天風呂は、混浴と女性専用の2ヶ所。ひょうたん型をした混浴風呂には底が全く見えないほど茶色く染まった濁り湯が満たされ、湯口からは源泉が勢いよくどばどばかけ流し。

立ち上る湯けむりからは金属や土っぽさを感じさせる濃厚な香りが漂い、入る前からその成分の濃さを感じさせるよう。

その湯の香に誘われ、いざ念願の黄金入り。

肌からも濃さが伝わるようなお湯はよく温まり、長湯は禁物であることを瞬時に察知。肩まで浸かり、縁に腰掛けを繰り返し、逆上せぬように気をつけつつ湯浴みを愉しみます。

お湯の濃さもさることながら、やはり感動ものなのがそのロケーション。全身を激しく撫でる海風に、絶えず繰り返される波浪の唸り。それらを浴びつつ眺める、海原と黄金色の強烈な対比。この海に呑まれる一体感は、控えめに言って想像を遥かに超えてきた。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉鉛色の日本海を眺めつつ飲む湯上りのビール
積年の願いでハードルは上がりきっていたはずなのに、そんなものをいとも簡単に超えてしまう。露天風呂好きとして、このお風呂を知らずに死ななくてよかった。素直にそう思えてしまう感動の余韻に浸りつつ、冷たいビール片手にこの地で2泊過ごせることの歓びを噛みしめます。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉雲間から太陽が顔を出す夕暮れ前
波に影響される露天風呂にも無事入ることができ、降っていた雨も直前で止み。そのうえ夕陽なんて、そんな贅沢を言ってはいけない。曇天の日本海にそんなことを考えていたら、分厚い雲間から急に眩い陽射しが。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉雲間から望むことができた美しい夕日
黄金に染まる湯とともに、真っ赤に輝く夕陽も名物のひとつである不老ふ死温泉。混雑する日没を前にもう一度海辺の露天風呂で湯と海風を浴び、部屋でひとりのんびり太陽の移ろいを味わうことに。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉分厚い雲間から海へと沈む太陽
極ゆっくりと、しかし確実に海へと沈んでゆく赤い夕陽。

夕焼け、日没という概念は日々の暮らしでも感じているつもりだけれど、こうして海に沈みゆく太陽を眺めるなんて一体どれくらいぶりのことだろう。

無数に浮かぶ雲と、水平線との僅かな隙間。日没を愛でられるようにと自然が用意してくれた僅かな余地を、音もなく粛々と落ちる夕陽。その輝きに心打たれ、ただ茫然と窓辺に佇むのみ。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉1泊目夕食バイキング
日没後の移ろう海の色を愛でていると、もう夕食の時間に。不老ふ死温泉では和食膳とバイキングのプランが選べますが、今回は2泊ともバイキングプランで予約。

さっそくオリジナルラベルの地酒を注文し、まずはお刺身中心にちょっとずつ。ひらめやヤリイカは甘味や旨味がしっかりとあり、本まぐろもいい脂のり。白神山地の湧水と日本海で育てられた深浦サーモンは、しっとりとした身に宿る旨味や脂がとても旨い。

深浦名物のつるつるわかめは、いくらでも食べられそうなさっぱりとしたおいしさ。その手前の鮫の南蛮漬けは、クセがなく淡白でこれまた美味。鮫のイメージからは想像つかない、上品な身質に驚きます。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉1泊目夕食バイキング
色々な味をつまみつつ地酒を愉しみ、2巡目へ。久々に食べるさざえのつぼ焼き。ぶりっとした肝とギュッと詰まった身は食べごたえばっちり。ほたて焼きもシンプルなおいしさで、岬の一軒宿に来たという実感を強めてくれる。

十和田名物を思わせる和牛のバラ焼きは、絶妙な塩梅の甘辛さでお酒だけでなく白いご飯が欲しくなるおいしさ。焼かれた本鱒にはマッシュポテトが載せられており、ほっくりと滋味深い鱒の味わいを優しく包みます。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉1泊目夕食バイキング
食べすぎかなと思いつつ、続いて3巡目へ。生姜味噌おでんは、甘めの味噌の中にしっかりと存在を感じさせる生姜の辛味が印象的。海鮮陶板は塩とバターで味付けされ、魚介とバターの風味をまとった野菜が意外に地酒によく合います。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉1泊目夕食バイキング〆に鱒子といかの三升漬けののっけ丼
色々な味を少しづつ愉しみ、もう結構な満腹に。最後はご飯にお好みの具材を載せるのっけ丼で〆ることに。お刺身を載せてもいいかなと思いつつ、たっぷりの鱒子といかの三升漬けといった好物盛りで決定。もうこんなの、間違いないじゃん。

さらに嬉しかったのは、茶碗蒸しが青森らしく甘かったこと。とはいえ、たまに出会う「うわっ!」と驚くような甘さではなく、穏やかでちょうど良い塩梅。底に隠された栗の甘露煮に、津軽路へやってきたという嬉しさを噛みしめます。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死1泊目夕食バイキングデザートに青森県産アイス3種盛り
普段はデザートなんて食べないのに、おいしそうでついつい頼んでしまった青森県産アイス3種盛り。これがまた大当たり。

左のりんごは瑞々しさを感じさせる爽やかな味わいで、右のいちごは絶妙な甘酸っぱさ。真ん中の雪人参はほっくりとした食感が残り、何とも優しい素朴な甘さ。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死夜のお供に盛田庄兵衛作田特別純米酒
やっぱりバイキングは食べすぎる。はち切れんばかりのお腹を抱え、布団でごろごろと満腹を落ち着けたところで夜の供を開けることに。1本目は、七戸は盛田庄兵衛の作田特別純米酒。すっきりと飲みやすいなかにも旨味や酸味を感じるおいしいお酒。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死夜のお供に八甲田おろし純米酒
あとはもう、お酒とお湯、そして波の音に酔う時間。2本目にと開けたのは、十和田は鳩正宗の醸す八甲田おろし純米酒。お米の旨味を感じさせる、するりと飲みやすい旨い酒。

3月中旬春まだ浅い黄金崎不老ふ死温泉和室客室から望むオリオン座
海辺の露天風呂は日没で閉鎖されるため、夜は新館の不老ふ死の湯で黄金色の味わうことに。大きな大浴場の脇には小さめの露天風呂が併設され、海を感じながらの湯浴みを愉しめます。

遠くを行く船の灯りが、辛うじてそこが海だと教えてくれるような漆黒の闇。夜の海原を見守る空にはオリオン座が輝き、その星の輝きをときおり薄めるかのように往来する光の帯。

その帯が、灯台の放つものだと気づいたのは少し経ってからのこと。だってこれまで、灯台の灯りを身近に感じたことなどなかったのだから。

部屋へと戻り、窓を開けて見上げる満天の星空。一定の周期で巡る灯台の光の帯をぼんやりと眺め、耳に受け取る荒磯の波音。黄金崎での静かな夜は、濃く、そして深く更けてゆくのでした。

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黄金に染められ海つがる~北東北よくばり旅~
3月中旬黄金崎不老ふ死温泉客室から望む美しい日没
2023.3 青森/秋田/岩手
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