昨夜、僕がおこちゃま時間帯にすっかり寝てしまった後、盛岡の真上を台風が通過したとのこと。そんな事とはつゆ知らず、6時過ぎにすっきりと目を醒ましてみると、空の方もすっきり晴れていました。
岩手グルメ堪能のおまけ付き、台風やり過ごし作戦大成功!幸先の良い旅のスタートに、この空のように心は晴れ晴れです。
盛岡発7:57分のこまちに乗車し、一路秘湯の玄関口である田沢湖を目指します。東京からこの時間に着こうとしても、始発に乗っても間に合いません。前泊まり作戦が功を奏し、本当に結果オーライです。
今回は素泊まりプランで予約したため、車内で遅めの朝食を摂ることに。ウェルネス伯養軒の調整する、鮭はらこめしを購入。言わずと知れた三陸の郷土料理です。
名は体を表す、蓋を開ければそのものずばりの駅弁が姿を現します。
まずは親の方をひと口。ギュッと身の締まった鮭は油っ気の少ない素朴な美味しさ。脂の載った鮭もいいですが、いくらと合わせるとなると、これぐらいのじんわりとした旨さが丁度いい。
続いて子であるいくらをひと口。ぷつぷつといった心地よい食感と共に、いくらに詰まった旨さが溢れてきます。生臭みもなく、鮭やご飯との割合も絶妙。これ以上少なくても、逆に多すぎてもダメ。このバランスがベスト。
下のご飯はうっすらと味の付いた炊き込みご飯で、鮭やいくらのしみじみとした旨さをしっかりと引き受けてくれる丁度良い塩梅。シンプルイズザベスト。派手な飾りや演出はなくとも、日本人の心の琴線に触れる、ほんわかとした朝食になりました。
車窓へと目をやれば、首を垂れ黄金色に輝く稲がどこまでも広がります。実りの秋。その言葉をまさに実感させる光景に、自然と心の底から感謝の念が湧いてきます。
列車は県境を目指し、どんどん標高を上げてゆきます。窓の外には刈り取られた田んぼの割合が増し、これから向かう高地がどれほどの秋に彩られているのか、そのことを想像するだけで胸が高鳴ります。
ついに鉄路は日本の背骨を越え、秋田県に突入。流れる川の方向も変わり、日本海側へと入ったことを強く実感させます。
盛岡からあっという間の30分、数々の秘湯への玄関口である田沢湖駅に到着。あぁ、またこの駅に来てしまった。初めて訪れて以来、この短期間で何度来たことだろうか。
遠い、遠いと言いつつまた来てしまう。この駅は、十人十色、個性豊かな秘湯を抱える、僕にとっての魔界への入口。この地に立つだけで、これからの予感に軽く身震いさえ覚えます。
田沢湖駅前より、お馴染みとなった『羽後交通』のバスに乗車。今回は初めての方面である、急行八幡平頂上行きに乗ります。
このバスは、乳頭方面と違い本数がかなり少なく、冬季は行先の短縮等もあるので、お出かけの際はHPで調べることを強くお勧めします。
バスは通り慣れた田沢湖畔までの道を抜け、どんどん山へと向かいます。車窓からは人家が消え、長閑さが刻一刻と増し、まだ見ぬ景色へと期待を膨らませてくれます。
バスは鎧畑、玉川とダムをすり抜け、ぐんぐんと高度を上げ、気が付けばもうこの眺め。長く連なるスノーシェッドが、冬の厳しさを物語ります。
ここまで上ってくると、ちらほらと色づき始めた木々が目立つように。これから向かうは1,000mオーバー。弥が上にも心は秋色に染まってゆきます。
バスは国道を一旦離れ、細い急坂を転げるように下ります。ここが日本一の強酸性泉として有名な玉川温泉。湯治場として多くの人々から愛され続ける名湯に、いつかは来てみなければなりません。その想いに後ろ髪を引かれつつ、今回は更に奥地を目指します。
終わることを知らない、延々登り続ける道。黄色味を増した木々の中を、バスは颯爽と駈けてゆきます。
この道は、その名もアスピーテライン。八幡平がアスピーテ型火山(楯を伏せたような台地状のなだらかな火山)であることから名付けられたこの道は、急なカーブも少なく乗っていて気持ちの良い道。前列を陣取り、その美しい眺めを飽きることなく愉しみます。
バスはいよいよ十和田八幡平国立公園へと入ります。八幡平では今でも火山活動が活発で、道路脇でモクモクと蒸気が上がる姿を見ることもできます。
山全体が生きている八幡平。ここに抱かれた秘湯に出会うまでもう間もなく。この旅初の湯との対面を目前に、運賃を握り締めて到着を今か今かと待ちわびるのでした。
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