窓からこぼれる日差しに起こされる爽やかな朝。窓の外を眺めれば、そこにあるのは湯けむりを上げる噴煙地。眠い目をこすり、早速そこに抱かれた絶景の湯へと向かいます。
あまりにも雄大なロケーションで楽しむ朝風呂。その豪快さに眠気も一気に吹き飛びます。
大自然に抱かれた開放的なお風呂を楽しんだ後は、お待ちかねの朝ごはん。魚にきのこおろし、ふきの煮物などの和のおかずが並びます。
特に印象に残ったのが、右端、サラダの下にある小鉢。宿の方は確かけづけ?だかけずし?とか言っていたような。けとはお粥のことで、甘酢で味付けしたおかゆに野菜を混ぜたもの。初めての味にびっくりしつつも、こんな食べ方もあるのか!と感心しきりに頂きました。
大自然の中の豪快な露天風呂と、美味しい料理で出迎えてくれたふけの湯。僕の数少ない秘湯経験の中ではありますが、間違いなくお気に入りナンバー3に入る、大満足の宿。この感覚を味わってしまい、もうそんじょそこらの秘湯では満足できない体になってしまいました。
これを書いているだけでもう行きたくなる。本当に泊まってよかった。最高の宿に出会えました。ふけの湯、恐るべし。また絶対に来ます!!
ふけの湯はアスピーテラインから外れたところにありますが、路線バスが裏手まで立ち寄ってくれるため、宿とバス停は目と鼻の先。11時過ぎのバスに乗るため、お宿のご厚意で時間まで広間で待たせていただくことに。
予定通り『羽後交通』のバスに乗り、終点である八幡平頂上で下車。目の前にはお土産屋さんやトイレ、休憩所の入る『八幡平山頂レストハウス』があります。
早速バスを降り、駐車場付近の眺めを堪能。標高1,600m近くあるこの地では、空の近さも遠くの山並みも全く違う。まずは来た方向である秋田県側の眺め。針葉樹に混じり色づき始める木々と、どこまでも続く、深く黒い山々。
こちらは岩手県側の眺め。柔らかい草の絨毯の向こうに聳える、南部片富士。もうこの眺めだけでも圧倒され、これから向かう高地散策へと、居てもたってもいられなくなりそう。
逸る気持ちを抑えつつ、まずは歩く前の腹ごしらえ。レストハウス内にある軽食コーナーへと入ります。
カレーや麺類といったメニューが中心で、そばは岩手の物、うどんは秋田の稲庭を使っているとのこと。そばかうどんかでかなり悩みましたが、そばはまた10月末の岩手旅行でたんと食べる予定のため、秋田名物稲庭うどんに決定。
程よい濃さのだしに泳ぐうどんは、つるつるとした食感が美味しい細麺。太麺のうどんも好きですが、細い乾麺独特の喉越しと食感は稲庭うどんならでは。黙っていると少々肌寒いくらいの八幡平頂上で、うどんの暖かさが体の芯まで沁み込みます。
体もお腹も暖まったところで、いよいよ八幡平散策開始。これからは八幡平頂上~八幡沼付近の散策コース沿道の景色を中心にお伝えしたいと思います。
駐車場からすぐ近くの入口より、八幡平頂上方面へ向かいます。豪雪と強風により独特な形に変形した青森トドマツと、それを彩る色付きはじめの木々。その隙間からは、深い山並みが黒い影となりどこまでも続いています。
上り坂を進むと、静かな沼がお出迎え。鏡沼と名付けられたこの沼は、その名の通り穏やかな水面に、周囲の木々を映しています。
続いて、大小2つの沼が隣接するメガネ沼。すり鉢状に落ち込む沼の周囲には色とりどりの草木が茂り、まるでジオラマかのような凝縮された眺めが広がります。
青森トドマツに囲まれた坂を上りきると、八幡平頂上に到着。頂上と言っても台地状火山のため展望が良い訳でもなく、このときは展望台の建て替え中で殺風景だったため、特に写真には収めていません。
頂上を越えると青森トドマツはぐっと数を減らし、草と笹が支配する光景に。
豪雪地帯の高地らしい、開けた景色の中のんびり歩くと、大きな2つの沼がお出迎え。
こちらはガマ沼、青み掛かった穏やかな沼の先には、こちらとあまり変わらない目線に佇む岩手山。こんななだらかで穏やかな景色と2,000mの岩手山が肩を並べる風景は独特なものがあります。
そしてこちらが一番大きい沼、八幡沼。写真では全く伝わりませんが、風にさわさわと揺れる笹の群れと、色付きはじめた低い木々、その先に広がる草紅葉に彩られた穏やかな水面は、神秘的そのもの。
荒々しい姿の南部片富士と対照的に広がる、穏やかな草原。腕が悪いのか、カメラの限界なのか、あの色合いをお伝えできないのが悔しくて堪りません。
目の前に広がる柔らかそうな草原には無数の色彩が散りばめられ、秋を凝縮したかのような美しいグラデーションに彩られています。
天空に広げられたお盆。そんな喩が浮かぶような不思議な眺め。そのお盆の底へにある八幡沼を目指し、坂道を下ります。
草と、笹と、低木の織り成す滑らかな景色。その奥には青森トドマツの黒い森が、この特別な場所を守るかのように包みます。
上から下へと、柔らかな色調のグラデーションに包まれる山肌。その姿はビロードを纏っているかのよう。
この辺りは一面湿原になっており、小さい沼地や八幡沼から流れ出た小川が、柔らかい草地の間に顔を覗かせます。
それぞれの色に染まりつつある草紅葉。これまで山歩きなど全くしなかったため、草と言えば公園で見るような枯れるものというイメージしかありませんでした。でも、草って木と同じようにしっかり紅葉するのですね。草紅葉の名の通り、その美しい姿に見とれてしまいます。
八幡沼を一周するコースはここで折り返し地点ですが、今回は少し先まで足を延ばしてみることにします。初秋の八幡平の絶景はまだまだ続きます。
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