9月末日。このお馴染みの東京駅新幹線ホームより、恒例となった秋の一人旅へと出発。
本当ならば今宵のあけぼの号に乗り、秋田経由で田沢湖入りするはずだったのですが、タイミングの悪いことに今夜台風が関東直撃の予報。
あけぼの号は早々に運休が決まったため、急遽乗車券と特急券をこまち経由に変更し、台風が来る前に東京から逃げることに。最近、運休でやられる機会が多い気がする・・・。
今夜は盛岡で台風をやり過ごす予定のため、新幹線は盛岡までの乗車。いつもならはやての方に乗車するのですが、この便は結構な混雑。はやて編成は窓側が僅かで一人旅にはちと辛い状況。ということで、空いているこまち編成の方に乗車。
そういえば、田沢湖線内ではこまちに何度も乗りましたが、新幹線の線路を走るこまちに乗るのは今回が初めて。まだ見ぬ走りっぷりに、思わず鉄の血が騒ぎます。
いつものはやてよりも一回り以上小さい、在来線特急サイズのこまち号。そのコンパクトで落ち着いた車内で一段落したところで、東京脱出の祝杯を。今回も、ねぷた旅の時と同じ伯楽星を購入。お気に入りのお酒です。
東京駅コンコースの駅弁屋がリニューアルし、全国津々浦々の駅弁をそろえるスペースになっていました。大混雑の店内の中、何にしようかうろうろ、うろうろと悩んでいましたが、結局買ったのは東京の駅弁。
僕が小学校上がる前に初めて見た、レンガ造りの東京駅。それ以来、僕の中でのふるさと東京の象徴は、東京タワーと立派な東京駅でした。その大好きな東京駅が、約5年半の歳月を掛け、建築当時の姿に復原されました。
まだ丸の内口から外観を見ることは出来ていませんが、旅行帰りに中央線のホームから眺める立派なドームは、以前にも増して東京駅の美しさと威厳を感じさせ、僕の東京での心の拠り所が本来の姿に戻されたことが嬉しくてたまらなく感じます。
今回は、その東京駅復原完成をひとり勝手に祝し、いつも手に取ることはなかった東京弁当を購入することに。1,600円とちょっとお高めですが、中には東京の老舗の味が詰まっているとのこと。
中は所謂幕の内なのですが、それぞれ東京の老舗が作っているものだそう。中央の大きな鮭は、魚久のキングサーモン粕漬け。しっかりと焼き上げられた身には粕の風味が凝縮されています。
右上は今半の牛肉たけのこ。濃いめの味付けがお肉とたけのこにしっかりと浸みており、その美味しさはさすが老舗のひと言。
お隣は青木の玉子焼。お寿司屋さんに卸すあの甘い玉子焼です。そして煮物は日本ばし大増と、浅草、築地、日本橋周辺のお店の味がぎっしり詰まっています。
どれも素材の味が感じられて美味しい。のですが、残念なことに全体を見ると僕の好みとはちょっと違いました。というのも、小さい頃から僕は東京の味付けがどちらかというと苦手。
料理にもよりますが、「甘辛い」のバランスがどうも合わないみたい。しょっぱさが勝つか、甘さが勝つか、のどちらかならば酒飲みなので気になりませんが、東京の味付けは甘さと辛さが五分五分、どちらも同じくらいに感じてしまうのです。
といっても、これはあくまでも僕個人の好みの問題で、それぞれしっかり調理されていることが伝わってくる仕上がり。最近では薄味になってきた東京ですが、本当の意味での古き良き東京の味が詰まっているのかもしれません。
このお弁当を食べて、小さい頃に食べたお弁当やお惣菜、外の味が記憶の底から蘇りました。それが一番の証拠です。
お弁当とお酒を片手に小さい頃の味の記憶を思い出しているうちに、新幹線はどんどん北を目指します。もう間もなく関東脱出。流れる車窓に、東北への期待がどんどんと膨らみます。
新幹線はついに関東を抜け、福島県に突入。夏の田んぼとはまた違う、薄らと黄色に色づき始めた初秋の田んぼが美しい。
それにしてもこのこまち、揺れる揺れる。いつもの東北路を駆けている感覚とは全く別物。
それもそのはず、あずさや踊り子といった類の車両と同じようなサイズのボディーに、新在両方で走るための性能を詰め込んでいるのです。普通サイズの特急電車が275km/hで走るなんて、鉄ロマンが溢れる光景です。
「小さな巨人」と呼ぶに相応しいこまち号。小学生のころに初めてつばさに乗せてもらって以来、新幹線区間でミニ新幹線車両に乗るのはこれが初めて。特にこのこまちははやてと連結するため、その韋駄天っぷりが堪らない。
小さな巨人の走りを楽しんでいるうちに、新幹線は北へ北へと進みます。先ほどまではまだ収穫前だった田んぼも、収穫期を迎え刈り取られたものが目立つように。刈り取りを控える実った稲は、午後の光を受けて黄金色に輝き、まさに日本の秋そのものという風景。
実りの秋の真っただ中を力走するこまち。ここまでくれば盛岡ももう少し。今宵の酒を思い浮かべ、到着を今か今かと待ちわびるのでした。
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