まだ夜も明けきらないうちに目が覚め、暗い中をお風呂へと向かいます。ろうそくの火も消え、昨日とはまた違う表情を見せています。
紺色の世界に浮かび上がる湯屋。キリリと締まった朝の空気の中、静かにお湯へと入ります。やはり朝風呂はいい。寝ぼけた頭をすっきり覚ましてくれる。
ぬるめのお湯にじっくり浸かりながら、明けゆく空の色の変化を楽しみます。普段こんなに自然の情景、時間の移り変わりを感じたことはあるだろうか。いつもは見逃しているような、ちょっとした美しさにも気付かせてくれる。鶴の湯では本当に命の洗濯ができます。
夜もすっかり明けて朝になったところで朝食を。朝食は本陣にある食事処でいただきます。昨日のおじさんが、丁度囲炉裏空いてるから座って、と案内してくれました。部屋の囲炉裏の火は消えていたので、久々の炭火の温かさ。
温かい奴にきのこのお味噌汁、魚の甘露煮、蕗のお浸し、山菜の炒め煮ととんぶり納豆。朝から美味しそうなおかずがずらっと並びます。お風呂に入ると不思議とお腹が空くもの。朝からしっかり美味しくいただきました。
出発の時刻までまだ余裕があるので、もう一度お風呂へ。これが今回最後の湯浴み。昨日は降っていなかった雪が、雪国の秘湯らしさを演出します。
たった一泊のうちに、何度も何度もその表情を変える鶴の湯。できることなら1週間ほど湯治に来たい。1週間いても、きっと飽きさせることなく、様々な表情、魅力を感じさせてくれるのでしょう。
決して簡単に来られるような場所ではない。次にこのにごり湯に包まれるのはいつになるだろう。そう思い、時間が許す限り、このお湯を心に刻みました。
いよいよ出発の時間が。もう一度、振り返ってこの目に鶴の湯を焼き付けます。2年越しの夢が叶っての初宿泊。願っていれば、また必ずこの場所に立つことができるはず。それまで日々を頑張ろう、再訪を決意し、鶴の湯を後にしました。
いいお湯、そしていい時間をありがとう。宿の皆さん、これからもずっとこのいい秘湯を守り続けていってください。
田沢湖駅からは、再びこまち号で盛岡を目指します。雪に埋もれたこの景色も、もう見納め。まぶしい程の白銀の世界を、もう一度しっかり味わいます。
盛岡駅に到着。秋田の雪深さに比べると、こちらの空の色はなんだか温かさがあります。帰りの新幹線の時間まで、盛岡をぶらぶらお散歩。
時刻は丁度お昼時。盛岡名物の冷麺を食べに、駅前の『ぴょんぴょん舎』に入ります。ここは前回盛岡に来た際に立ち寄ったことのあるお店。
店内にはスーツ姿のサラリーマンがたくさんいて、みんな冷麺を食べています。東京では見られない光景に、冷麺が地元の人にどれだけ愛されているかが垣間見えます。
こちらがその冷麺。辛さは注文時に選べ、キムチを別盛りにすることもできます。スープは若干甘めの、コクのあるしっかりした味。ダシの旨味が強く感じられ、東京でありがちな水っぽい冷麺とは一線を画すもの。
麺は白くコシの強い麺。その麺がスープと絶妙に絡まり、口の中へと入っていきます。キムチも辛いだけでなく旨味の濃いおいしいキムチ。それを溶かしながら、ダシの味の変化を楽しみつつ頂きました。
東京で食べる盛岡冷麺は、韓国冷麺の出来損ないのようなものばかりで、はっきり言って嫌いな食べ物でした。
それが本場盛岡で食べる冷麺は全くの別物。こんなにおいしい冷麺だとは思っていなかったので、初めて食べたときはビックリしました。今回2度目ですが、そのおいしさは全く変わっていません。
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