初めて訪れる須坂の街。次はどんな景色に出会えるのかと歩いてゆくと、広い交差点の角に溢れる秋色を発見。天高い空と色づく木々との共演に、誘われるかのように歩みを進めます。
市街地の中にありながら、立派な木々に守られる墨坂神社芝宮。重厚な石鳥居と葉を落とした大木との対比は、秋の暮れの気配を感じさせるかのよう。
鳥居をくぐると、こんもりと見事なアーチを描く太鼓橋がお出迎え。石橋に宿る渋い色味と、一面に積もる落ち葉の枯色。それらを照らす西日の輝きに、郷愁を感じずにはいられない。
心のすくような秋空のもと佇む、立派な拝殿。土台にはぼたもち石が用いられ、経た時の長さを感じさせる木の風合いと共に、静かなる荘厳さを漂わせます。
お参りしようと近づけば、目を引く入母屋に施された幾多もの彫刻。空を翔ける鳳凰に、海を泳ぐ立派な亀。それらを守るかのように獅子や象が睨みを利かせ、その繊細かつ重厚な美しさに思わず見入ってしまう。
お参りを終え、落ち葉を踏みしめ歩く境内。晩秋の気配が漂うなか、今年最後の輝きを放つかのように一身に染まる大銀杏。秋だなぁ。本当に、秋だなぁ。これまでいくつもの旅先で秋を感じてきましたが、その度ごとにこの季節が好きになってゆく。
静かな境内で存分に秋色に染まったところで、再び歩みを進めます。ここ須坂は、本当に蔵の多い街。先ほど歩いた蔵の町並みだけでなく、進むごとにいくつもの蔵に出会います。
かつての豪商のお屋敷であったという、旧小田切家住宅。現在は収蔵品の展示やカフェなど、複合的な文化施設として公開されています。その立派な長屋門を覗いてみると、可憐な菊の奥に連なるいくつもの建物。これらは明治時代に建てられたそうで、当時の繁栄を偲ばせます。
あてもなく、のんびり歩く秋の午後。地図も見ず、気になる方向に曲がってみれば、歴史を感じさせる街並みが迎えてくれる。歩いていて楽しい街だから、もっと先へと進んでみたくなる。
街並みに溶け込む白壁の土蔵が目立つ中、一風変わった独特な佇まいの建物が。大きなうだつが目立つこの町家は、明治時代に建てられたものだそう。
得も言われぬ雰囲気に近づいてみると、窓には装飾の施された格子が。富士山に扇子、帆掛け船・・・。これ、僕の好きなやつ。何となく、6年前に訪れたあの宿と通ずるものがある。
ふと思いつきで訪れた、初めての須坂。ほとんど予備知識もなく立ち寄った街が、こんなに歩いて楽しいところだったなんて。こんな思いがけない発見があるからこそ、旅はやめられない。そんな旅の悦びを今一度教えてくれる須坂の街歩きは、まだまだ続きます。
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