白布温泉で迎える静かな朝。今日も早めに目が覚めたため、まだ空には夜の名残を感じさせる青さが。こうして雪に抱かれた早朝の景色を見るのもこれが最後。今年は冬、本当に満喫した。
露天風呂にオリンピック風呂と、朝風呂をゆっくり二度も楽しんでようやく迎える朝食の時間。もうすっかり旅先での早起きが定着したようです。本当に三文以上の得。このゆとりは一度味わったらやめられない。
朝食会場の大広間へと向かうと、これぞ「和」という美味しそうな朝食が。焼鮭にしらすおろし、ぜんまいの煮物やおひたし、海苔と納豆、湯豆腐などなど。
素朴な美味しさをしみじみと味わうひととき。こうして朝から心にゆとりを持って食事ができるなんて。本当は当たり前のことなのでしょうが、当たり前すら難しい日常があるからこそ、旅先でのこんな瞬間が愛おしく思えてくるのです。
美味しい朝食を味わい、お腹を落ち着けたところで最後の一浴を。〆にと選んだのは、もちろんオリンピック風呂。左右に広がる雄大な雪景色を目に焼き付け、白布の湯の温もりを体の芯まで浸みこませます。
よし、また来よう。今度は奥州三高湯はしご旅、かな。そう意を決し、長い長い浴槽から上がります。何度味わっても慣れることのない去り際の寂しさは、それほどいい宿であったというゆるぎない証。
オリンピックの年に建てられた中屋別館不動閣。そこにはその当時の空気がそのまま詰まっているようで、これまで味わったレトロとはまた違う温かさがありました。
帰りもお宿の方に送迎していただき米沢駅に到着。昭和の温もりをお土産に、この地を離れることとします。米沢牛ちゃん、旨かったよ!また食べに来るからね!!
初めての米沢は、想像以上に本当に良いところだった。去りがたい気持ちで過ごしていると、ついに僕を連れて帰るつばさ号がホームへと入線。
米沢待ってろよ!また来るからね!またひとつ、来たい街が増えてしまった。まだ見ぬ街にも行ってみたいし、再訪したい街も増えてゆく。旅を趣味に持つ者としての嬉しい悩みが、旅するごとに増え続けます。
つばさ号は険しい奥羽山脈へと挑み、分水嶺を越えて再び福島県へと戻ってきました。米沢駅からはあっという間の35分、この旅3度目の福島駅に到着。米沢からそのまま東京へと帰る僕ではありません。電車を乗り継ぎ、この旅最後の目的地を目指します。
JR福島駅の隣にひっそりと佇む小さなホーム。ここから福島交通飯坂線と阿武隈急行の列車が発着しています。今回はその『福島交通』に乗り飯坂温泉へと向かいます。
飯坂電車に乗るのは四半世紀ぶり、2度目。そのとき乗ったのもこの旧東急、2両編成の小さな列車。この光景に、子供心に地方私鉄の風情を強く感じたものでした。
そんなこの7000系もあと2年で引退予定。各地で第2の人生を過ごしていたこの車両ですが、どんどんその姿を消しています。僕にとっては福島交通はまさにこの電車のイメージ。引退の日まで、残りの余生を穏やかに過ごしてほしいものです。
今回は福島駅の窓口で、飯坂温泉共同浴場入浴券つきのいい電1日フリーきっぷ(800円)を購入。飯坂温泉までは往復で740円かかるため、途中で乗り降りしなくてもこのきっぷを買うほうがお得です。
25年ぶりの飯坂温泉。当時と変わらぬローカルな電車に揺られ、この旅最後のお湯を目指します。
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