白い天井に反射する青さに目覚める爽やかな朝。ベランダへと出てみれば、寝起きの眼を圧倒する海と空の鮮烈さ。早くも漲る陽射しの熱を浴び、今日も最高潮の夏となることを確信します。
今日はいつもより1時間遅い船で竹富島へと渡る予定。ベッドに腰掛け鮮烈な青さに目を細め、お腹も空いたところで朝食をとることに。今朝もチャンプルーやクーブイリチーをおかずに白いご飯を味わい、ブルーシールのさとうきびと甘い甘いパインで暑さに打ち勝つエネルギーをチャージします。
帰りの時間の関係で八重山観光フェリーに乗る機会が多いのですが、今日は予定が1時間ずれのため久しぶりに『安永観光』に乗ることに。バスの時刻表に付いていた割引券を使い、お得に往復できるのも嬉しいところ。
さすがは安永観光の小型高速船、ババババババババと海面を蹴りあっという間に竹富港に到着。海の暴〇族、失礼、ハイウェイスターの異名を持つ安永観光のダイナミックさは、一度乗ったら病みつきに。
今日も青い。紛れもなく全力全開夏の空。いつもは空には雲が浮かび、ときおり太陽が雲間に隠れ陽射しが翳る瞬間が。でも今年は、それがない。目を開けているのがやっとなほど、夏空が眩しくて眩しくて仕方がない。
今日もあっぢぃなぁ。滴る汗をぬぐいつつ歩いてゆくと、珊瑚の石垣に育つ立派なゴーヤ。これまで島バナナや青パパイヤ、ピィヤーシが実っているのは見ましたが、そういえば竹富島でゴーヤを見るのは初めてかも。
今日はなぜいつもより1時間遅く島に渡ったのか。それは『そば処竹乃子』でお昼を食べたかったから。昨日まで連休だったようで、今日から営業再開。お昼どきにはかなりの混雑になりそうだったので、海に入る前に早めに着いておきたかったのです。
今回はもずく酢やデザートがセットになった、そば&じゅーしーセットを注文。1年ぶりの再会にこころ震わせ、まずは八重山そばのおつゆから。あぁ、やっぱり沁みる。その見た目通りの上品な穏やかさが、すっと体中に広がるよう。
そばは八重山そばらしい、わしわしとした食べごたえのある麺。こちらのお店は平打ちで、それがこの優しいおだしをちょうど良い塩梅で口へと連れてきます。
尖った部分のない、限りなく穏やかな表情をした優しいスープ。しばらくはそのままで味わい、続いて竹乃子特製のピィヤーシをひと振り。もうそれだけで、グッと華やかさを増す南国感。ダメ押しでコーレーグースを適量加えれば、飲むのを止められなくなる中毒性のある味わいに。
八重山そばの豊かな表情の変化をひと通り味わい、続いてじゅーしーを。穏やかなだしや具材の旨味とともに広がる、ピィヤーシの葉の香り。
いい意味で派手さのない、八重山でしか味わえぬ沁み入るような滋味深さ。そばとじゅーしーの黄金コンビにお箸の往復が止まらず、あっという間に平らげてしまいます。
やっぱり竹乃子の八重山そばは間違いない。8年前、生まれて初めて口にした本場の沖縄料理がこれだった。そんな初対面の鮮烈な記憶と、それ以降重ねてきた逢瀬の想い出。そこにまた新たな1ページを刻み、来年もまた来ようと固く誓いお店を後にします。
今年も無事に竹乃子と再会でき、本当に良かった。八重山旅行で欠かせない儀式を無事執り行い、炎天下の中満たされた気持ちで歩く道。あと少し、あと少しと自分を鼓舞しつつ着実に歩みを進め、今日も最高潮のあおさを放つコンドイビーチにようやく到着。
そういえば、昨日石垣さん家の女将さんが大潮が近いって言ってたっけ。コンドイビーチはこれまで訪れたなかで最高レベルで潮が引き、驚くほどの浅さに。
早速荷物を下ろし海へと入ってみると、そこにあるのは天然温泉竹富の湯。うぉ、これは逃げ場がないかも。陽射しに焦がされ逃げる先は、ぬるいを通り越してあったかいナトリウム塩化物泉。
でもそんなことにめげる僕ではない。カメラを濡らさず沖の小島まで歩いて渡れるため、足湯を楽しみながらぐいぐい進んでゆくことに。
珊瑚の欠片と白砂でできた時限の小島に立てば、全身を強く撫でゆく海の風。ミンサー織の帯を思わせるうつくしい海、その先に浮かぶ小浜や西表の蒼い島影。
視線を南へと向ければ、どこまでも続いてゆきそうな純白の砂洲の先に横たわる黒島の姿。聴こえるのは、波の鼓動も掻き消す強い風の音だけ。眼前に広がるあまりの幽玄に、今自分がどこで何をしているかすらあやふやになる。
ちょっとこの感動は、僕の写真と文章の力では到底伝えることはできない。これまで幾度も訪れてきたコンドイビーチに宿る、僕の知らない新たなうつくしさ。月の引力だと理屈は知っているつもりでも、この光景を目の当たりにし天体の力を感じずにはいられない。
宇宙の神秘を身をもって実感し、離れ小島への散歩を終えビールで乾杯。冷たいオリオンを喉へと流しても焦げた肌は癒されるはずもなく、浅く温かい海の中で辛うじて冷たさを感じる部分を探し揺蕩います。
このあと少しずつ潮が満ちてきたため、それに伴い冷たい海水が流れてくるように。相方さんとほぼずっと海に浸かったまま長い時間を過ごし、全力のあおさをもって夏を味わわせてくれたコンドイビーチに別れを告げます。
明日も明後日も日程的にはまだあるけれど、訪れる時間帯は干潮が続きそう。海に入れないと危険を感じる暑さのため、今年の竹富島はこれで最後かな。そんな予感を抱きつつ、悔いのないようこの島に流れる空気感を胸いっぱいに吸い込みます。
8年前、35歳にして生まれて初めて訪れた沖縄県が、この島だった。僕の心を映したかのような陰鬱な梅雨の羽田を発ってから、半日後には竹富島に染まっていた。あの旅は、ある意味僕の命の恩人。
それ以来、毎年こうして訪れるようになった竹富島。干からびた僕を生き返らせてくれる、特別な島。そこで浴びた全力のあおさを、来年へと繋げる糧として胸いっぱいに詰め込み持ち帰るのでした。
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