絶品和牛に鹿の湯と那須の恵みを満喫し、バスに乗って宿へと帰還。山のいで湯に茹だった乾きを癒すべく、ハンギングチェアに身を委ね喉へと流す冷たい金星。いまだ残る火照りの余韻、それを高原の風がさっと撫でてゆく。

ゆったりと流れているようでも、実は光の速さで過ぎてゆく愉しい時間。時刻はもう17時過ぎ。フロント横できのことアスパラをもらい、そろそろ二晩目の宴の準備に取り掛かろうか。

今日は風が強くないため、ワーゲンバスからいすを出して外での夕餉。昨晩はアクアパッツァとして出されたカサゴ、今日はほたてとともに和風の鍋仕立て。肉厚のしいたけを追加し、カセットコンロでひと煮立ち。
素材の味わいを引きたてる穏やかな塩梅でありながら、しっかりと感じられるだしの旨味。魚介や白菜、きのこから染み出た味わいが、すっと心身の底へと沁みてゆく。好みでオリーブオイルとコショーをひと振りすれば、また違った表情に。

じんわりとしたおいしさに身体もこころも温まったところで、バーベキューグリルで焼いていた桜姫がよき頃合いに。皮は香ばしく、身はぷりっとジューシーな焼きあがり。このグリル、本当に欲しくなる。

昨日はグリルした那須郡司豚、今夜はアスパラとともに塩コショーオリーブオイルを振ってホイル焼きに。
蒸し焼きすることにより、より一層引き立つ豚の甘味。アスパラから滴るジュースが豚を旨くし、そして豚の脂がとろっとろになったアスパラに絡むという相乗効果。食材があらかた準備されつつも、こうしてひと工夫できるってものすごく楽しいな。

那須郡司産牛ロースは、シンプルに塩コショーでステーキに。表面にくっきりと付いた焼き色に、グリルの扱いに慣れてきたとちょっとばかりうれしくなる。しっかりと感じられる白身の甘味、ぎゅっと詰まった赤身ならではの旨味。添えられているジャパニーズソースとの相性も良く、ついつい赤ワインが進んでしまう。

昨日のホットドッグに代わり、今日はマルゲリータのピザが。こうしてメニューを変えてくれるのも、連泊する身としてはうれしいところ。
薄くスライスしたアスパラとちぎった舞茸を散らし、オリーブオイルをかけてホイルで包み高温のグリルへ。ふたをして、5分ほど待てば焼きあがり。生地はもっちり、アスパラしゃきっと。追加した具材から出たエキスがトマトソースやモッツアレラと融合し、この組み合わせ最高だわと自画自賛。

グリルで焼いて、外で味わう。そんな至福の時間に揺蕩っていると、いつしか日は暮れすっかり夜に。風はないものの、こうなるとちょっとばかり肌寒い。宴の続きは、こたつのあるワーゲンバスで愉しむことに。

ぬくもりあふれる車内の世界観にこころを染めていると、グリルで焼いていたスモアがいい頃に。表面パリッと香ばしく、中はとろっとろになったマシュマロ。合わせるいちごは熱が通され甘酸っぱさが増し、それらをチョコのほどよい甘味と苦味がまとめてくれる。
そんな最高のデザートに合わせるのは、大田原市は渡邉酒造の醸す旭興特別純米酒生酒。とろりと広がる甘酸っぱさ、その余韻がじんわりと長く続く旨い酒。

本当に、愉しい時間というものはあっという間だな。グランピングの醍醐味ともいえる豊かな夕餉を終え、まとったバーベキューの余韻を流すべく温泉へ。とろりとした浴感のお湯に揺蕩えば、こんな時間がいつまでもと欲張りな想いが芽生えてしまう。

はぁ、とろけるようだ。床暖房を入れたドームテントでまったりと湯上がりのひとときを過ごしていると、なにやら作業する人影が。

これはもしや。そう期待しながら眺めていると、ぱぁっとたちのぼるオレンジ色。昨日は風があったからやっていなかったが、今夜は焚火が楽しめるのか!

居ても立ってもいられず、炎に誘われるようにファイヤーピットのもとへと一目散。ぱちぱちと薪の爆ぜる音、鼻をくすぐる火の薫り。炎のもつ不思議な質量が、胸の奥を染めてゆく。

なぜだろう、こうして火を見つめているだけで落ち着くのは。四十半ばまで、焚火を眺める機会なんてほとんどなかった。自分の新たな「好き」を知ることができただけでも、グランピングに挑戦した甲斐があった。

漆黒の夜空に召されてゆく火の粉、揺らぐごとに変化する炎のぬくもり。爆ぜる音、燃える音、組まれた薪が崩れる音。そんな火の奏でる旋律を耳に、絶えず姿を変える火をただただ無心で見つめるのみ。

見る者を惹きつける火の魔力。その熱量にすっかりこころを焦がされ、名残惜しくも尽きる炎。はぁ、終わってしまった。そんな満たされつつもちょっとばかりの寂寞の感を抱きつつ、ふたたび自分のテントへ。
祭りのあと。それにも似た感覚に身を委ね、ランタンひとつで味わう静寂のとき。そんな豊かな夜には、宇都宮酒造の四季桜純米酒生貯蔵酒を。やわらかな口当たりとともに、甘酸っぱさがしゅわっと駆けてゆく。

あぁ、善い夜だ。前回の秘密基地感あふれるトレーラーハウスもいいが、この抱かれているかのような感覚のドームテントも最高だ。
下野の酒をちびりとやりつつ、ただぼんやりと眺める夜の闇。この空間と時間を独り占めしているという贅沢に存分に揺蕩い、那須での夜は静かに深まってゆくのでした。



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