銀嶺つむいで大糸線 ~鉄路でなぞる塩の道 1日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

銀嶺つむいで大糸線 ~鉄路でなぞる塩の道 1日目 ③~

2月上旬糸魚川駅前からのびる大通り 旅行記

糸魚川駅併設のジオパルで国鉄の残像に触れ、ちょっとした感傷を抱きつつ反対側の日本海口へと向かいます。駅前からのびる大通りの先には、その名の通り日本海が。まだ列車まで時間はたっぷりあるため、海を目指してのんびり歩いてみることに。

2月上旬糸魚川ホーロー看板がたくさん残る家
駅から海までは目と鼻の先の距離。道の突き当りにその気配を感じつつ歩いていると、突如現れる味のある建物。壁一面に残された、古き良きホーロー看板の数々。そのどれもが昔の人々の暮らしを支えたであろう生活用品のもので、何とも言えぬ郷愁を誘います。

2月上旬糸魚川雪国特有の赤茶けた路地
このまままっすぐ海まで行ってしまうのも寂しいので、ここで右折してみることに。旧写真館や古き良き佇まいをみせる邸宅など、糸魚川の歴史を感じさせるような住宅街が続きます。その先には、雪国特有の路面が赤茶けた渋い路地。冬の日本海沿い、自ずと気分は演歌色に。

2月上旬糸魚川春よ来い作詞の相馬御風宅
冬の港町の情緒に浸りつつ進んでゆくと、奥行きのある立派な木造のお屋敷が。ここは春よ来いを作詞した相馬御風の邸宅跡だそう。冬の厳しい地でのくらしから、春を待ちわびるあの情景が生まれたのでしょう。

2月上旬糸魚川昭和の風情を残す商店街
通りを右へと曲がると、昭和の風情を色濃く残す街並みが。現在の国道8号線は海沿いを走っていますが、こちらはその旧道なのでしょうか。古から続く街道沿いの街としての歴史が、どこからともなく滲んでくる。

2月上旬糸魚川雪国特有の赤茶けたアスファルトの先には鉛色に染まる日本海
こんな雰囲気、好きだなぁ。吹きすさぶ強い風、圧迫感のある灰色の空。雪との苦戦の跡が染みついたアスファルトの先には、鉛色に染まる海の気配。

2月上旬糸魚川路地を抜けた先には鉛色の日本海
この時期この天候だからこそ味わえる情緒をしみじみひとり噛みしめ、ついに冬の日本海とご対面。気分はすっかり、演歌の世界の主人公。トランク片手に、トレンチコートの襟を立てて歩きたい。

2月上旬糸魚川鉛色の日本海沿いを走る国道8号線
そんな妄想を愉しんではみるものの、四十を過ぎても全く渋みや深みの欠片もない僕。フリースにダウンジャケットと身軽な出で立ちで、交通量の多い国道8号線を歩きます。

2月上旬糸魚川強い風に吹かれつつ日本海展望台から望む鉛色の日本海
それでもやっぱり、鉛色の日本海は憂いを誘う。心の中に大音量で響く演歌の世界に酔いつつ歩みを進め、日本海展望台に到着。非常に交通量が多いため、海側へは地下道で横断。さらに展望台へと続く階段をのぼってゆけば、この絶景を一望のもとに。

2月上旬糸魚川日本海展望台から望む険しい海岸線
絶えず体をいたぶる、シベリアおろし。その強さと冷たさを肌に感じ、そして聴覚を占める風の音。寒い、こころ、寒い。哀しみ本線日本海の旋律が、頭の中から離れない。

2月上旬糸魚川日本海展望台から望む白銀の山並み
強い風に凍えつつ、鉛色の海を見つめどっぷりとはまる演歌の世界観。そんなごっこ遊びをひとり満喫し、展望台を下りようと振り返るとこの眺め。背後には白銀の山並みが連なり、これから向かう地への期待を掻き立てるよう。

2月上旬糸魚川諏訪神社
海と山の壮大な景色に触れ、ふたたび糸魚川の街へと歩き始めます。国道8号線から陸側へと入ると、新しい建物の並ぶ一画が。約6年前の年の瀬に発生した糸魚川大火。その前の酒田大火は生まれる前であったため、テレビで初めて目にした大火の衝撃は今でも忘れることができません。

火の元には、本当に本当に用心しなければ。改めて火の怖さを実感しつつ復興の進む街並みを歩いてゆくと、ひっそりと佇む諏訪神社が。その立派な石垣に誘われるようにして境内へと足を踏み入れます。

2月上旬糸魚川諏訪神社境内から望む海
お参りを終え神社を後にしようと踵を返すと、重厚な石垣の先に覗く冬の日本海。海沿いで暮らしたことがなく、ましてや日本海は遠い場所。目に映るものみな新鮮で、そしてなぜか情に訴えかけられる。

2月上旬糸魚川塩の道起点
これから乗車する大糸線は、千国街道という古い街道に寄り添って走る路線。その千国街道はここ糸魚川と松本を結び、海の恵みである塩を信州へと運ぶ重要な街道であったため塩の道とも呼ばれています。

2月上旬糸魚川旧糸魚川町道路元標
海から始まる塩の道の起点を背にして進むと、先ほどの旧国道8号線の続きと交差します。その足元には、旧糸魚川町時代に設置された道路元標が。

2月上旬糸魚川雁木の連なる旧国道8号線北陸街道
左右に走る旧国道沿いには、雁木と呼ばれる深い軒が連なる街並みが。この道はかつて北陸街道、加賀街道と呼ばれた旧街道で、加賀のお殿様が参勤交代の際に通った道だそう。

2月上旬糸魚川加賀街道と交差し直進する千国街道塩の道
その加賀街道を越えて直進するのが、これから辿ってゆく塩の道。この先、一体どんな旅路が待っているのだろう。初めて訪れる地への独特な高揚感を胸に、これからたどる道のりを見据えます。

2月上旬糸魚川謙信を醸す池田屋酒造
加賀街道を横断し進んでゆくと、立派な木造の建物が。ここ糸魚川で210年の歴史をもつ、池田屋酒造。越後の武将上杉謙信にあやかった謙信を醸す酒蔵で、後ほど僕もその美酒を味わうことに。

2月上旬糸魚川牛つなぎ石
酒蔵の横を入ってゆくと、お寺の境内に丸みを帯びた大きな石が。これはかつて北陸街道と千国街道の追分に置かれていた石が移設されたもので、塩を運んでいた牛をこの石に繋いで売買や休息をとっていたそう。

2月上旬糸魚川謙信池田屋酒造雁木
この道の果たしてきた重要な役割に思いを馳せつつ引き返すと、酒蔵の前には歴史を感じさせる雁木が。長年に渡り、積もる雪から人々を守ってきたことでしょう。

2月上旬糸魚川駅前ロータリーに建つ奴奈川姫と翡翠
乗り換え時間の合間にと、初めて歩いてみた糸魚川の街。鉛色の日本海に心揺さぶられ、信濃の人々の命を繋ぐ塩の道に思いを馳せ。その街道沿いを、これから僕は列車でなぞる。いつかはと思い続けてきた大糸線での旅が、静かに幕を開けるのでした。

銀嶺つむいで大糸線 ~鉄路でなぞる塩の道~
2月上旬姫川温泉朝日荘客室から望む大糸線夜汽車の情緒
2023.2 新潟/長野
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●1日目(東京⇒糸魚川⇒姫川温泉)
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●2日目(姫川温泉滞在)
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●3日目(姫川温泉⇒大町⇒穂高⇒松本⇒東京)
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