銀嶺つむいで大糸線 ~鉄路でなぞる塩の道 3日目 ⑧~ | 旅は未知連れ酔わな酒

銀嶺つむいで大糸線 ~鉄路でなぞる塩の道 3日目 ⑧~

2月上旬夕暮れ時の松本卯屋 旅グルメ

夕暮れ時の松本の街並みを味わいつつ駅へと戻り、お土産を買ったところで良き時間に。駅周辺には居酒屋さんがいくつもありますが、今回は駅から徒歩2分とこの上ない立地の『卯屋』にお邪魔してみることに。

2月上旬松本駅近く卯屋お通しの長芋漬け信州サーモン載せ
ビールで乾いた喉を癒していると、すぐさまお通しが運ばれてきます。今日は長芋漬けの信州サーモンのせ。さくっとした長芋にサーモンのしっとりとした食感と旨味が加わり、これはのっけから地酒が進んでしまう旨さ。

2月上旬松本駅近く卯屋おまかせ3品
まず注文したのは、ひとり客専用のおまかせ酒の肴三品。といいつつも、おいしそうなおつまみが4品載っています。まずは中央の葉わさびを。しゃきっとした食感とともに信州の芳香が鼻へと突き抜け、言わずもがなの吞兵衛殺しの絶好つまみ。

隣の山女の甘露煮は濃すぎず薄すぎずのちょうどよい塩梅で、ほっくりとした凝縮感が堪らない。その上のきのこの南蛮漬けは、旨味の中にピリリと香る唐辛子の風味が地酒を誘う逸品。

そしてやっぱり、信州といえばの馬刺しが美味。見るからにきめの細かい赤身は、その見た目通りしっとり、もっちり、濃い旨味。もうこの一皿で、何合飲めてしまうのだろう。

2月上旬松本駅近く卯屋信州ジビエ鹿そぼろ入りニラ玉
地酒片手に信州の味を少しずつ愉しんでいると、続いて注文していた信州ジビエ鹿そぼろ入りニラ玉が到着。黄色が鮮やかな玉子は、控えめな味付けでふんわり半熟。その下には、しっかり目に味付けされた鹿肉のそぼろやニラ、きのこが隠されています。

それらを適度な割合ですくいひと口。うわ、旨っ!と思わず独り言が漏れてしまう。お刺身で食べると淡白な鹿ですが、火を通すとしっかり感じる凝縮された肉の旨味。玉子と具が分かれているので、それぞれの濃淡が口の中で感じられるのもまた愉しい。

2月上旬松本駅近く卯屋馬もつ煮
このお店、旨いぞ!とさらにエンジンがかかってしまい、追加で注文した馬もつ煮。信州だから味噌かな?と思いきや、しょう油ベースのすっきり目の味わい。

大ぶりに切られた馬もつは柔らかさの中にも弾力があり、そこから染み出る滋味深い味わいが堪らない。こんにゃくもぶりんとした食感で、それぞれ違った歯ごたえを愉しみつつ地酒を傾ければ、その手が止まることはありません。

2月上旬ほろ酔い気分で眺める夜の松本駅
いやぁ、旨かった。もっともっと味わってみたい信州の恵みが色々とありましたが、特急の時間が迫ってきたため泣く泣くお勘定。今度は絶対、泊りがけで飲みに来よう。そんな悪巧みを胸に隠しつつ、夜闇に輝く松本駅へ。

2月上旬夜の松本駅E353系あずさ号新宿行き
ホームには、すでに入線し静かに発車を待つ見慣れたE353系。表示されたその行き先も、いつもの日常にほど近い新宿駅。この街は、僕の故郷やいま住む街と線路で繋がっている。その事実があるから、寂しくも温かい余韻に浸りつつ去ることができる。

2月上旬E353系中央本線特別急行あずさ号新宿行き猿庫の泉純米吟醸ワンカップ
アルクマくん、この旅でも最高の信濃路をありがとう。でも今回は、これまで出会ったことのない初めての信州とたくさん逢えた気がする。僕にとって、手放すことのできない特別な旅先。その3つのうちのひとつが、ここ信州なんだ。

2月上旬夜の松本駅E353系中央本線特別急行あずさ号新宿行きは定刻に発車し静かにホームを滑り出す
信州、本当にいいところだよなぁ。そんなしみじみとした感慨に耽っていると、遠くから漏れ聞こえくる発車ベル。程なくして、あずさ号は新宿目指して定刻に発車。

2月上旬夜のE353系中央本線特別急行あずさ号新宿行き車内
あとはもう、列車に身を委ねて日常へとグラデーションのように帰るだけ。新幹線のもつ旅情とはまた違う、僕の原体験を創ってくれた中央本線を駆ける帰路。あのとき僕は、身をもって実感することができた。あずさが僕と、信州とを繋いでくれることを。

2月上旬夜のE353系中央本線特別急行あずさ号新宿行き車内のお供に井筒ワイン信州塩尻産メルロー2021赤ワイン
いつもなら、旅の終わりの感傷に浸りがちな帰り道。でも今夜は違う。国鉄型の無骨さは消えたけれど、僕の幼馴染であり憧れでもあったあずさ号にこうして揺られることができるのだから。

2月上旬夜のE353系中央本線特別急行あずさ号都区内発都区内行きの乗車券に旅の記憶を重ねてみる
都区内発、都区内行き。この一葉の乗車券に、一体どれほどの旅路が詰まっていたことか。

長野以北、初乗車を叶えた北陸新幹線。いつかはと願い続けた日本屈指のローカル線で目の当たりにした、自然の険しさと人々の交通の欲求との戦い。深い谷を刻む姫川沿いで出逢えたのは、温もり感じる素朴な湯宿。糸魚川、大町、穂高と千国街道をなぞるように大糸線で駆け抜け、塩の道の目指す先である城下松本で果たした初恋のお城との対面。

今回の旅は、とにかく濃かった。日本海を発ち、銀嶺連なるアルプスへ。2泊3日で辿った旅路は、文字通り山あり谷あり海ありのめくるめく車窓の旅だった。

そしてまた、とにかく新鮮だった。日本海側から入る信州は僕の知っているつもりであった顔とはまた違った表情を魅せ、この地の懐の深さを改めて思い知る。

経由の数だけ、旅路がある。濃厚な旅へと誘ってくれた、一筆書きの乗車券。その最終目的地は、オレンジ色の中央線が走る僕の街。きっぷに詰まった想い出を胸に、旅路から日常へとを結ぶあずさ号に身を任せるのでした。

銀嶺つむいで大糸線 ~鉄路でなぞる塩の道~
2月上旬姫川温泉朝日荘客室から望む大糸線夜汽車の情緒
2023.2 新潟/長野
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●1日目(東京⇒糸魚川⇒姫川温泉)
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●2日目(姫川温泉滞在)
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●3日目(姫川温泉⇒大町⇒穂高⇒松本⇒東京)
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