『藤三旅館湯治部』。以前の旅行記で詳細を記しましたが、こここそが僕の秘湯好きの原点。初めて泊まったのは旅館部でしたが、前回初めて湯治部に宿泊し、その深い味わいにすっかり魅了されてまた来てしまいました。
これから2泊3日、ゆったりと流れる渋い時間に身を任せることにします。
藤三旅館湯治部と言えば、やはりこの独特の雰囲気を持つ廊下。旅館部に泊まり、探検と称して初めてここへ足を踏み入れた時の衝撃は今でも忘れられません。
木の鈍い輝きが美しい天井、整然と並ぶ格子戸、無機質さを感じさせるコンクリートの壁と廊下。そのどれもが独特で、この空気感は唯一無二。
前回は2階の山側の部屋でしたが、今回は1階の川側のお部屋。木枠がレトロさを感じさせる窓からは、明るい光と共にせせらぎの音が流れてきます。
今回は2食付の湯治プランで予約。朝、夕と食事が終わったら廊下へお膳を下げておきます。
ガタガタする木戸を開けると目に入る格子戸とコンクリ廊下。この独特な雰囲気は、色々なブログ等で病院や刑務所(失礼!)と表現されていますが、まさにその通り。
と言っても僕には全く不快なものでは無く、逆にこれを味わいたいがためにここへ来るといっても過言ではありません。
夕飯が終わり、早速自分で寝床の支度。これから3日間、これが僕の幸せの舞台となります。
どちらかといえば料理以外は家事が嫌いな僕。それでもこのような環境に居ると、こんな自分の身の回りの世話をすることさえ楽しくなってくるから不思議なものです。
藤三旅館と言えば、立って入る深さで有名な白猿の湯。浴場内の古き良き味わいもさることながら、そこへのアプローチとなる廊下もまた雰囲気満点。
学校を思わせる高い天井、木で作られたレトロなベンチ。そこへ腰かけ缶ビールでも飲めば、まるで自分がタイムスリップでもしてしまったかのような感覚に襲われます。
湯治部の入口に掲げられる立派な額。この湯治部は白銀(しろがね)荘という名前だったのですね。
ちなみに僕はまだ未読なのですが、この藤三旅館で銀心中(しろがねしんじゅう)という小説が書かれたそう。後に映画化された際にはこの花巻南温泉峡でロケが行われたようで、小説と共に古き良き当時の映像も見てみたいものです。
この湯治部の建物、あまりにも味わい深すぎてお風呂の往復の度に溜息が出てしまいます。それでもやはり一番落ち着くのは自分の部屋。
ほんのり酔い心地で上を仰げば、渋い色に染まった木の天井。古き良き和室の醍醐味を詰め込んだ、そう形容するのにふさわしいこの部屋で過ごす時間が、堪らなく愛おしいのでした。
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