会津若松から盆地の縁へと挑む列車に揺られること30分足らず、初めての下車となる猪苗代駅に到着。ロッヂ風の駅舎と連なるつららの姿に、先ほど目にした幾筋ものゲレンデの輝きを重ねます。
やっぱり久しぶりにスキーに行きたいなぁ。なんて思いつつ待つことしばし、『磐梯東都バス』の達沢行きが到着。早速乗車し、山のいで湯を目指します。
バスは磐梯山と安達太良山に挟まれた道をひたすら登り続け、30分ちょっとで中の沢温泉バス停に到着。バス停からすぐ近く、今宵の宿である『磐梯西村屋』へとお邪魔します。
通りに面した建物にあるロビーでチェックインし、宿の方の説明を聞きつつ部屋へと向かいます。旧館、別館、新館と、いくつもの棟からなる大きな宿で、今回宿泊するのは別館。お目当ての露天風呂に近いため、滞在中部屋とお風呂を何度も往復する僕にとっては便利な立地。
このお部屋は二間続きとなっており、6畳の和室にはすでに布団が敷かれています。
そしてこちらが玄関部分。二間に面した広い三和土の先には洗面台が備えられ、斜めを向いた扉の中は洋式トイレ。ひとり旅にはもったいない広さもさることながら、これまであまり出会ったことのない造りと絶妙なレトロ感がとても印象的。
窓の外には森が広がり、その先には雪化粧をした白い山並みが。木々に積もる分厚い雪に、この地の雪深さを感じます。
早速浴衣に着替え、お待ちかねの温泉へ。こちらの宿には男女別の露天風呂のほか2か所の内湯があり、時間帯によって男女が入れ替わります。到着したときは、別館に近い檜風呂が男湯。肌触りの良い木の浴槽には、中ノ沢の湯が掛け流されています。
この檜風呂、実は左右2つの浴室があり、それぞれ壁で仕切られ出入口も脱衣所も分かれています。先ほどは左側の湯、そしてこちらが右側の湯。増築する前は、男女別の内湯として使われていたのでしょうか。
露天風呂は宿から少し離れた場所にあり、檜風呂の手前の出口から外を歩いて向かいます。それにしても、この深い雪。さすがはいくつものスノーリゾートが並ぶエリア、まもなく対面するであろう雪見露天への期待が膨らみます。
そしてついに待望の露天風呂へ。こんもりと雪の積もった岩の合間に横たわる、乳白の湯を湛える湯舟。天のもたらす純白と、大地から湧き出る青白さ。自然の造る白の競演に、やはりこの季節でしか味わえないにごり湯の味というものを噛みしめます。
中ノ沢温泉の源泉は、安達太良山の噴火口付近。そこから直線で7㎞程の距離を引き湯されているため、火山性の強酸性でありながら浴感はまろやか。目を愉しませる青磁色、鼻をくすぐる硫黄の香、そして肌に伝わる若干のピリピリ感。これぞ山のにごり湯!という醍醐味を、全身を以て受け止めます。
駅からそう遠くもないのに、想像以上の山の湯感。安達太良のいで湯が惜しげもなく掛け流される浴場が3つもあるなんて、1泊では足りなかったかも。僕の思い描くにごり湯を体現するかのような好みの湯に、早くもそんなことを思ってしまう。
最近は再訪の旅が多かったけれど、まだ見ぬ地へと向かってゆくことも大切なんだ。昨夜の湯野上と同様、久々に味わう新鮮な感動をつまみに、湯上りの冷たいビールを味わうのでした。
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