空と谷、二つの誘湧。~初夏の奥羽 山の湯旅 5日目 ⑥~

志波彦神社から望む塩竈の街と海

塩竈の小高い丘の上に建つ、海の神様と農の神様を祀った神社。それぞれにお参りをし、この山を下りることにします。

志波彦神社を出ると、目の前に広がる緑と空。その境目には、塩竈の街並みと穏やかな海も見え、時を忘れてしばしその眺めに見入ります。

鹽竈神社甑炉型鋳銭釜

空と山、町と海の眺望を楽しみつつ少し下ると、博物館の手前に何やら大きい釜が。これは何だろうと思い近付いてみると、その名も甑炉型鋳銭釜というものだそう。

三段構造のこの釜。上段に木炭と金属を入れ、中段から風を送り加熱すると、下段に溶けた金属が落ちるという仕組み。藩政時代にはこれで溶かした鉄や銅で銭を作っていたようで、その釜が今でも朽ちることなく残っています。

鹽竈神社最古の参道七曲り坂

何度か訪れた鹽竈神社、志波彦神社ですが、甑炉に気付いたのは今回が初めて。そしてもうひとつ、この七曲坂という参道の入口に気付いたのも今回が初。

この参道が一番古く由緒正しいものだそうですが、地図に書かれていても、これまで入口を見つけることはできませんでした。そこで今回は、この古い参道で街へと下りることに。

木々が鬱蒼と茂り昼なお暗い鹽竈神社最古の参道七曲り坂

七曲坂という名の通り、登山道よろしく山の斜面をくねくねと曲がりながら進む道。石段には苔が生え、足元は大小の石が転がる砂利道。それを鬱蒼とした森が包み込み、ひとりで歩いていると少し心細くなりそうなほど静か。

初夏の本塩釜駅

古い参道を下ってみると、消防団の倉庫の裏手に出ました。確かにこの倉庫には見覚えがある。でも全く目立たない場所のため、今まで気付けなかったのも頷けます。

傾きつつも、相変わらず照り付ける初夏の陽射し。夕刻に向かう塩竈の街を歩き、本塩釜駅から仙石線に乗車します。

初夏の夕暮れ仙台駅

本塩釜から仙台までは1時間に3、4本以上走っているので、余り待つことなく便利。山手線をリタイアした車両に揺られること約30分、この旅のスタート地点であり、そして終点である仙台駅に到着。

仙台駅直結すし通りすし職人銀次郎

お土産を買い込む前に、まずは最後の東北グルメを。仙台駅直結のすし通りにある、『すし職人銀次郎』で三陸の幸を味わいます。

こちらはカウンターだけの小さいお店。写真では立ち食いスタイルのものも見受けられますが、僕が訪れた時はきちんと椅子が並んでおり、座ってお寿司をいただけます。

こちらで地酒片手に、美味しいお寿司やつまみをたっぷり楽しみ、最後の最後まで東北の幸を堪能。重たいお腹を抱え、お土産選びへと向かいます。

仙台駅を彩る伊達政宗公と七夕飾りのステンドグラス

お土産もしっかりと揃え、もう帰る時間に。新幹線の改札を通る前に、最後にステンドグラスで彩られた七夕飾りと政宗公にお別れを。

再訪を願う、いや、誓うこの時間。この儀式をもう何度繰り返したか。だからこそ、こうしてまた仙台、東北に来ることができたのです。

仙台駅東北新幹線E2系やまびこ号

そんな僕の東北通いを力強く支え続けて来てくれた、E2系。今宵は仙台始発、各停タイプのこの新幹線で、のんびり東京へと戻ります。

東北新幹線やまびこ号車内で鳴瀬川ワンカップ

仙台から東京まで2時間20分。はやぶさよりも50分程長くかかりますが、後は帰るだけ、急ぐ旅でもありません。宮城県は加美町の中勇酒造店の鳴瀬川特別純米酒を相棒に、ひとつひとつ東北新幹線のこまを進めてゆきます。

停車駅ごとに想起される、それぞれの温泉や旅の思い出。こうして鉄路沿いにだんだんと蓄積されてゆく思い出たち。それを持っていることがどれほど幸せか。今回新たに仲間に加わった須川と作並、それらの余韻と鳴瀬川のふくよかな味わいに包まれ、この旅の幕は閉じるのでした。

空と谷、二つの誘湧。~初夏の奥羽 山の湯旅~
登山道から眺める大日岩と須川高原温泉
2016.6 岩手/宮城
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