路線バスでの長旅を終え、下界へと戻ってきました。ここ一ノ関駅からは再び『東日本急行』の仙台駅前行高速バスに乗り、一路仙台へと向かいます。
11時までは30分ヘッド、所要時間も1時間20分程度と、在来線とは比べ物にならない便利さ、そして迅速さ。電車好きの僕でも、仙台一関間は高速バス一択になりそうです。
バスは順調に東北道を南下し、定刻通り仙台駅前に到着。本当は手前のバス停で降りて行ってみたい牛たんやさんがあったのですが、バスを一本乗り遅れたため、駅近のお店を探すことに。駅直結の牛たん通りにあるお店の中から、まだ入ったことの無い『たんや善治郎』にお邪魔します。
時刻は丁度お昼時。少しだけ並んで店内へ。出張のノンアルコール組には申し訳ないとは思いつつ、大人のオフの贅沢、昼ビールを味わいます。
そして運ばれてきた、上撰極厚真中たん定食。見るからに分厚いたんが食欲をそそります。でもたんはまだお預け。まずは熱々のテールスープをひと口。えぇっ!?なんかものすごく好みの味!!一気に期待が膨らみます。
そして待望の厚切りたんをひと口。厚切りならではのさっくりと噛み切るこの感覚は、思い出すだけでご飯が食べられそう。でも硬すぎることは無く、心地よい歯触り。そして溢れる肉汁と旨味の洪水。塩梅も丁度良く、単品よりもご飯に合わせたくなる少しだけ濃いめの塩味。でもやはり、しょっぱすぎる訳ではありません。
ボリュームのある厚切り牛たんと、浅漬け、とろろ、大好物の南蛮味噌、そしてテールスープと麦飯いう無限ループ。麦飯は1回おかわりできるので、ビール腹も忘れて昼からガッツリ食べてしまいました。
いやぁ、仙台で食べる牛たんは本当に美味しい。これまでハズレに当たったことがありません。でもこちらのお店は、ハズレでは無いどころか僕の好みドンピシャ!!
お気に入りのところに行くべきか、新しいお店にチャレンジするべきか。またひとつ、仙台に来たときの悩みの種が増えてしまいました。牛たんもお寿司も、仙台のクオリティーは高すぎます。
うんまいっ!牛たんを堪能し、仙台駅から仙山線で作並駅へ。1時間に1本程度の本数があり、快速ならば30分ちょっとで着いてしまう、言わずと知れた仙台の奥座敷です。
作並駅から仙山線の到着に合わせて運行される送迎バスに揺られること5分、作並温泉を代表する老舗である『鷹泉閣岩松旅館』に到着。(写真は翌日撮影)
僕が普段泊まらないような大きな建物と豪華なロビーにおぉ、と思いつつチェックイン。早速お部屋へと向かいます。
今回は旧館である広瀬館のプランを予約。旧館といってもお部屋はきれいにされ、窓からは広瀬川の渓谷を覆う緑を眺めることができます。
何故僕が須川高原温泉の後にこちらの宿を選んだのか。それは、どうしても入ってみたいお風呂があったから。
その露天風呂への入口がこちら。この雰囲気、このブログでも2回程登場したでしょうか。そう、谷底へ向かう長い階段なのです。
こちらのお風呂は撮影禁止。なのでこの写真以降の様子は全くありません。どんなお風呂なのかは、検索してみてください。きっと様々な画像が出てくることでしょう。
でもね、本当はその写真、この露天の魅力の半分も伝えられていないんですよ。
夏油、塩原の明賀屋本館、そして焼失してしまった奥土湯の不動湯温泉。それらの素晴らしき谷底温泉に負けず劣らずの、秘境ともいえる温泉がこの下にあるのです。
広瀬川の渓谷に洗われるような位置にある湯船は全部で4つ。お湯は無色透明ながら、その4つ全てが、源泉の違う自然湧出掛け流し。温度も違えば浴感も違う。そして湯船から見える景色もまた違う。自分好みの湯船を見つける楽しみが、ここにはあります。
先程さらっと書きましたが、この渓谷を穿ったのは、あの有名な広瀬川。そして、仙台から電車と送迎バスで45分で来られる距離。そのことが全くもって信じられないほどの深山幽谷の世界が広がっているのです。
本当にたまげました。心底たまげました。正直、今回の主役は須川高原温泉で、その帰りに一度作並にも寄ってみたいな、程度の気持ちで来てしまったのです。
僕にとっての作並のイメージは、関東で言えば湯河原や鬼怒川といった、大型ホテルの並ぶ都市の奥座敷、といった感覚。実際ホテルも大きくロビーも豪華だったので、そこまでお風呂には期待はしていませんでした。
岩松旅館さん、須川のついでになんて、申し訳ありませんでした。仙台からこの近さでこのロケーションは物凄い。そして頑なに昔からの伝統の岩風呂を守り続けているなんて、本当に素晴らしい。
普通、大きなホテルにするときには、壊して新しくしてしまおう、そんな宿が多いはず。それなのに、江戸時代に作並温泉が成り立つきっかけとなった歴史ある岩風呂が、こうして現存する奇跡。オーバーではなく、本当に感動しました。それほどの、山深き、野趣溢れる、自然の湯。
想像を絶する秘湯感に包まれた岩風呂にすっかりご機嫌になり、長い階段を苦にもせず、部屋とお風呂を往復します。
湯浴みと運動により、お昼の牛たん定食がいなくなったところで夕食の時間。今回はバイキングのプランを予約しました。ステーキやお寿司といったメインや、揚げたての天ぷら、山菜や定規山の三角揚げなどを使った和食、そして中華や洋食など様々な品が並びます。
呑兵衛の僕は、その中で特に日本酒に合いそうなものを選択。玉こんや揚げの煮物は味が浸み、わらびの一本漬けはアテにピッタリ。天ぷらはさくっと軽く、ふきのとうコロッケもほんのりした苦みが活きています。お刺身には宮城のサーモンも使われており、これならガッツリ食べる系ではない僕でも満足。好きなものをちょっとずつつまんで飲むというのも、意外と楽しいものです。
〆におそばとうどんを食べてしまい、結局はお腹ぱんぱん。満腹状態のお腹を一旦落ち着け、夜の晩酌タイムに突入します。
まず選んだのは、加美町は山和酒造店の純米吟醸瞑想水。純米だけありしっかりとお米の味や口当たりはありますが、その名の通りクセや厭味がなく、するりと喉へと落ちてゆくようなお酒。こんな飲みやすさだと、気を付けないと本当に瞑想してしまいそう。
続いては、名取市は閖上の佐々木酒造店が造る宝船浪の音純米酒。こちらはよりお米を感じるしっかりとしたお酒。お米の旨味や酸味もありますが、嫌なしつこさはなく後味すっきり。
美味しいお酒と本を片手に過ごす夜。長い木造の階段を下りれば、谷底に静かに佇む岩風呂。電灯に照らされた夜の姿はまた絶品で、より幻想的な深山幽谷の世界へと迷い込ませてくれるよう。
奥羽山脈の麓、それでもここは、仙台市。仙台の懐の深さ、そして広瀬川の渓谷の深さに酔いしれる、そんな夜を過ごすのでした。
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