金色堂や平泉の遠景の余韻を残しつつ、月見坂の途中にある『そば処義家』でお昼を食べることに。前回中尊寺に来た際に気になっていたお店。渋い佇まいが、参道の立派な杉に溶け込んでいます。
初夏と言えども、この日は良い天気で汗ばむ陽気。金色のシュワッとするご馳走を片手に、おそばを待ちます。そして運ばれてきた、インパクトのあるこのおそば。
岩手名物であるわんこそばですが、盛岡や花巻ではお給仕をしてくれるあの有名なスタイルであるのに対し、ここ平泉では盛り出し式といって、このように小分けにされたおそばを自分のペースでちょっとずつ食べるスタイル。
実はこれが人生初わんこ。ワクワクしながらひと口すすれば、おそばが美味しいのは言うまでもありません。東北は本当におそばの美味しい土地。ハズレがありません。
そして嬉しいのが、ひと口ずつ気分によって味を変えて楽しめるというところ。つゆだけ、海苔を加えて、とろろでと、あっという間にお椀が空になっていきます。
そして小分けにされているもう一つの効果が。普通のもりそばだと、最後の方はどうしてもくっついてしまったり、切れ端だけ残ってしまったり。でもこの盛り出し式ならば、そのようなことも無く最後までつるつるとコシのある美味しい状態で味わえます。
美味しいわんこそばを愉しみ、中尊寺を後にします。晴天の中歩くこと15分、次なる目的地である毛越寺に到着。前回と違い今日は雨の心配も無く、美しい庭が見られそうです。
まずは大きな屋根が印象的な本堂にお参り。この日は中学生が修学旅行で訪れており、中で座禅を組んでいました。生でぱん!と叩かれるのを見て、こちらまで気が引き締まる思い。
そしてついに、平泉に来たら絶対に訪れたい浄土庭園との再会。これで3度目となりますが、この日が一番良い天気。抜けるような青空と、そこに浮かぶ白い雲。鏡のように穏やかな大泉が池が、その姿を映します。
梅雨入り前の東北、一番緑が若々しく勢いのある時期。青空に負けじと、木々がその碧さを輝かせます。
それにしても本当に良い天気。風も無く穏やかで、これまで訪れた中で一番の穏やかさ。大泉が池が東北の空や木々、そして空気まで静かに映す姿を見ていると、浄土とはこういう場所のことを言うのか、そんなことを考えます。
どこまでも静かな大泉が池の美しさもさることながら、この時期ならではの芝の柔らかい緑もまた美しい。地を優しく覆う姿は、まさにビロードのよう。
見渡す限り緑と青に覆い尽くされる浄土庭園。でもその緑と青には無限大の色彩が含まれていることに気付かされます。
そして必ず溜息の出てしまう、この州浜の眺め。東北の山に海を表したというこの大泉が池。たおやかな曲線美は、美しい海岸線を体現するかのよう。
華やかさ溢れる春から、やがて訪れる雨の季節。その間にほんの少しだけ訪れる、初夏という季節。この時期に旅をする度、その独特な質感、空気感に息を呑んでしまう。その若い力が、まさに今ここに溢れています。
極楽浄土をこの世に表す毛越寺庭園。どこまでも穏やかで、平和な時間が静かに流れてゆきます。大泉が池をのんびりぐるりと一周し、しばらくベンチでボーっとします。
前回も、前々回も時間の都合でできなかった、ずっとしてみたかったこと。ふと我に返り、文字通り無心になっていたことに気付きます。東北の山に抱かれた極楽浄土は、訪れる人の心も、この庭のように穏やかさで包んでくれるのでした。
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