松島を訪れるのはこれが3度目。1度目は小学校中学年での家族旅行、そして前回は職場のみんなとの旅行だったので、こうしてひとりで当てもなく松島を歩くのは初めて。
ということで駅前で地図を眺め、すぐに海へとは向かわずお寺を目指すことに。すると街並みが一変、いかにも寺町という雰囲気に。これまで日本三景、島々が海に浮かぶ姿しかイメージに無かったのでびっくり。下調べしなかったからこその、嬉しい驚きです。
駅方向から歩いて一つ目のお寺、円通院へと入ってみることに。写真は人のいない隙を狙って撮りましたが、大勢の観光客で賑わっています。
山門をくぐると、すぐ目に入るのは美しい石庭。それを囲む木々の緑の若さに、思わず息を呑みます。植えられているのは紅葉。秋の美しさは容易に想像できますが、緑の瑞々しさに包まれるこの時期、秋に負けず劣らずのベストシーズンなのではないでしょうか。
勢いのありつつも柔らかい緑に覆われる、きれいに整えられた枯山水。静と動の対比に、しばし時を忘れて見入ります。
美しい石庭に気持ちも新たに歩みを進めます。その先には、まっすぐに伸びる石畳、そして天を覆わんとばかりに茂る、萌木色。
振り返れば、そこに広がるのは緑色の世界。若葉のフィルターを透った光は色を持ち、地を覆う苔もまた、柔らかな黄緑。初夏という季節に色を付けるなら、きっとこんな彩であるに違いない。
少しの石段を上ると、庭の苔を手入れするたくさんの人の姿が。その奥に建つのは、伊達光宗公の眠る三慧殿。
団体さんに付いていたガイドさんの話によると、中にある厨子には、バラやスペード、クローバー、ダイヤやハートといった西洋由来の紋様があしらわれており、それらは伊達氏の家臣、支倉常長がスペインやイタリアを訪れた証である、と伝えられているそう。
国際的な伊達藩の一面に触れ、さらに奥へと進みます。すると、崖にたくさんの仏様が掘られた岩窟が。多くの人は三慧殿から入口へと戻っていくため、ここだけ静けさに包まれています。
ひっそりと佇む石仏を後にすると、たくさんのバラが咲く庭園が。こちらは先ほどの厨子に描かれたバラをモチーフにしたお庭だそう。お寺とバラ、僕にはあまり馴染の無い組み合わせでしたが、ここ円通院はバラ寺としても有名だそう。
バラの咲き乱れる隣には、立派な茅葺屋根の建物が。こちらが円通院の本堂、大悲亭。乱れなく整えられ、筋の通った茅葺の姿に、自然と背筋が伸びます。どうやら中では数珠作りができるようで、予約なしでも体験できる模様。
本堂の前には、花菖蒲の咲く池とそれを覆う豊かな緑が広がります。これを眺めながら作る、自分だけの数珠。今回は時間の都合上諦めましたが、次に松島へ来る際には、ぜひ体験してみたいものです。
境内を一回りし、最後に見つけた色彩の競演。かわいらしく咲くピンクのさつきと、初夏に色づくもみじの紅。
初めて訪れた円通院。僕にとってこのお寺のイメージは、「緑」、そのひと言。梅雨入り前、初夏のこの時期だからこその、若々しく、柔らかい、そして鮮やかな緑に染まった、そんな時間を過ごすのでした。
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