しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 5日目 ④~ | 旅は未知連れ酔わな酒

しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 5日目 ④~

10月下旬秋の盛岡秋晴れのもと佇む岩手銀行本店赤レンガ館 旅行記

秋色に染まる岩手公園に別れを告げ、すぐそばに位置する『赤レンガ館』へ。東京駅と同じく辰野・葛西建築設計事務所が設計したこの建物は1911年竣工で、言わば東京駅のお兄さん。威容を誇るその姿も、どことなく兄弟であるかのような面影を感じます。

10月下旬秋の盛岡光り溢れる岩手銀行旧本店赤レンガ館
旧盛岡銀行の本店として建てられたこの赤レンガ館。その優美かつ重厚な姿に一目惚れし、盛岡へと来たら必ず逢いたい僕の大好きな建物。ですが意外にも一度も中へと入ったことがなかったので、今回初めて内部を見学してみることに。

岩手銀行旧本店赤レンガ館2012年まで銀行として営業していた窓口
今から9年前、2012年まで銀行として100年以上も現役として働き続けてきたこの庁舎。そういえば、初めて出逢ったときはまだ中ノ橋支店として営業中。今なお窓口に宿る重厚な残り香に、キャッシュレスの進む現代にはない金融機関としての矜持を感じます。

岩手銀行旧本店赤レンガ館窓と廻廊の美しい吹き抜け
ふと見上げれば、大きな窓の並ぶ開放的な吹き抜けが。白漆喰と美しい輝きを放つ木材、無機物ながらそれに寄り添うかのように華を添える装飾の施された鉄材。それらを満たす光に溢れる空間に、思わず息を呑んでしまう。

岩手銀行旧本店赤レンガ館装飾の施された美しい柱
2階の天井まで伸びる大きな柱。重ねてきた年月を感じさせる鈍い輝きと、随所に施される美しい装飾。建具をただの部品としない。古の人々の美意識を手に取るように感じられるからこそ、僕は古い建物が好きなのかもしれない。

岩手銀行旧本店赤レンガ館蛇紋岩の美しい暖炉
壁際にひときわ存在感を放つ立派な暖炉。独特な模様が美しい蛇紋岩と大理石で造られたマントルピースは、寒さ厳しい盛岡の冬を暖めてきたことでしょう。

岩手銀行旧本店赤レンガ館重厚な雰囲気漂う重役室
重厚な雰囲気に支配される旧重役室。歳月を重ねた建具が放つ鈍い輝きと低めの照明が相まって、現役ではないながらもその迫力に圧倒されてしまう。

岩手銀行旧本店赤レンガ館創建当時から残る鋼鉄製のシャッター
外からの光を遮断しているのは、創建当時から残る鋼鉄製のシャッター。見慣れた今のものとは異なる姿は、まさに明治時代からの生き証人。

岩手銀行旧本店赤レンガ館重厚な扉に守られた金庫室
隣の支配人室の先には、重厚な扉に堅く守られた金庫室が。銀行の心臓部ともいえる重要な部屋を守り続けてきた鉄の扉に、この建物の経てきた歴史が詰まっているかのよう。

岩手銀行旧本店赤レンガ館重厚な金庫扉に輝く銘板
鈍く輝く古い銘板には、東京市馬喰町竹内製造との刻印が。東京で造られた金庫は、汽車に牽かれて遠路はるばるここまでやってきたのでしょうか。

岩手銀行旧本店赤レンガ館階段の手すりに施された美しい装飾
重厚な雰囲気に包まれる1階の見学を終え、美しい曲線を描く階段で2階へと進むことに。長年磨かれてきた木材のみが持つ滑らかな輝きが、この建物が大切にされてきた歴史を感じさせます。

岩手銀行旧本店赤レンガ館美しい曲線を描く階段の手すり
窓から差し込む陽射しを映し、しなやかな曲線美を魅せる階段の手すり。一体どのように加工したらこのようになるのか。古き良き建物に詰まる技の数々に、思わずため息が漏れてしまう。

岩手銀行旧本店赤レンガ館階段の欄干に施されるスペード型の細かい装飾
欄干をよく見てみると、隅に施された小さなスペード型の装飾が。こんな細かい美意識の集合体が、建物の美しさとして形を成しているのかもしれない。

岩手銀行旧本店赤レンガ館柔らかい印象を受ける2階の暖炉
どっしりとした雰囲気の1階とは打って変わり、窓からの陽射し溢れる明るい2階。部屋に設えられた暖炉も、先ほどのかっちりとした重厚な雰囲気とは違い柔らかい表情を見せています。

岩手銀行旧本店赤レンガ館2階から窓の並ぶ明るい吹き抜けを望む
応接室を出ると、大きな窓の並ぶ吹き抜けを一望のもとに。ホールには秋の陽が柔らかく満たされ、建物の持つ温かみというものを一層深めているかのよう。

岩手銀行旧本店赤レンガ館壁に残る古いスイッチ
古き良き質感漂う白壁には、これまた時代を感じさせる電灯のスイッチが。目を引く装飾のみならずこんな小さな歴史を見つけられるのも、古い建物を訪れる楽しみのひとつ。

岩手銀行旧本店赤レンガ館2階の角からロビーを見渡す
2階の角からロビーを見渡せば、ここが銀行であったとはにわかに信じがたいほどの開放感。机や書類、機械がずらりと並べられていたであろう中央のフロアは、今は多目的ホールとして貸し出されています。

何度も外観を愛でつつも、初めてその内部へと足を踏み入れた岩手銀行赤レンガ館。明治の美意識に触れる旅は、まだまだ続きます。

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