静かに溢れる不思議な湯に身を任せ、のんびり浸かること1時間。そろそろ夕食の時間になるので、部屋へと戻ります。あたりはすっかり薄暗くなり、旧館からは白熱灯の柔らかな明かりが漏れています。
もうお腹はぺこぺこ。待ちに待った夕食です。テーブルに並ぶ数々の料理。デジカメのファインダーに入りきらないほどのお皿が並んでいます。
まずはきのこの酢の物と山うどの小鉢。ツルンとした食感がおいしいきのこと、強い香りが鼻をくすぐる山うどを食べれば、山の宿にやってきたという実感がますます強くなります。
お隣は、香りを楽しめるふき味噌とこごめのお浸し。やはり山に来たら山の幸が旨い。素朴な中にも贅沢な旨味が詰まっています。
そして中々食べることのできない、川魚(たしか山女だったと思います。)と舞茸のお刺身。
思ったよりもずっと魚の旨味が凝縮されており、海の魚に負けず劣らずの美味。塩焼きや甘露煮では味わえない、違ったおいしさがあります。舞茸はサッと茹でてあり、しゃっきりとした食感を楽しめます。
こんなにおいしい料理が並べば、欲しくなるのが日本酒。とくにここ新潟は地酒のおいしいところ。頼まない手はありません。
この自在館には何種類かの地酒が置いてあり、その中で今回選んだのは、純米緑川。ここ小出のお酒です。緑川自体は何度も東京で飲んだことのある飲み慣れたお酒ですが、地のものと一緒に地元で飲む緑川は、これまた格別。地酒は旅先で飲むのが一番旨い飲み方です。
どんどんお料理が出てきます。今度は熱々の蕪のあんかけ。柔らかく煮られた蕪に、薄味の上品な餡が掛かっています。
家庭料理的なメニューをイメージして行っただけに、嬉しい誤算。おいしいものをちょっとずつ、色々な調理法で食べさせてくれます。
また、温かいものは温かいうちに食べられるよう、食事のペースを見ながら料理を出してくれるのもとてもありがたい。一人ではササッと食べてしまいがちな食事も、ゆったり味わいながら楽しむことができます。
そして僕の大好物、岩魚の塩焼き。大ぶりの岩魚に丁度良く振られた塩が食欲をそそります。身はふっくらとしており、パサつくことなくジューシーな焼き上がり。
頭から骨まで全部食べられるよう、じっくり1時間以上かけて炭火で焼いたものだそうで、その言葉の通り、頭も骨も柔らかく、丸ごと一匹ペロッと平らげてしまいました。
こちらも揚げたてさくさくの天ぷら。カリッとしたところを、抹茶塩で頂きます。ホクホクにあげられた長芋に、しゃっきり感が残る舞茸。
中央は桜の実の塩漬けだそうで、ちょっとしょっぱいのですが、実を食べれば口中に桜の香りが広がり、一気に春が来たような嬉しさを感じます。今まで食べたことの無い、濃厚な春の息吹。
こちらは鴨鍋。複数名で泊まれば、大鍋を囲めるようです。今回は一人なので、ひとり鍋。もっとしょう油っぽい、濃いダシをイメージしていましたが、こちらもダシの効いた薄味のいいお味。だしをすすりながら、熱々の具をハフハフ言いながら頂きます。
そしてきのこと越後牛の炭火焼。程よくミディアムに焼かれた柔らかい牛肉と、肉厚の椎茸が美味。正直ここまでかなりのボリュームを食べていたので、食べきれるか心配でしたが杞憂に終わりました。
〆はもちろん白いご飯。かき玉のお吸い物と一緒に頂きます。どこのお米を使っているのかは分かりませんが、ふっくらとした甘味のある、艶やかなご飯。
新潟に来ると、毎回お米のおいしさには感心させられます。きっと水もお米を炊くのに適した水質なのでしょう。東京で炊いたお米とは比べ物になりません。お米と水がおいしければご飯もおいしい、更にはお酒もおいしいはずです。
もう満腹の更に上を行く状態でしたが、ご飯のおいしさに、ついつい食べ過ぎてしまいました。旅館を選ぶときは、食事の口コミはあまり参考にはしませんが、ここは口コミ通りの内容とおいしさ。こんな山の中の宿で、こんなに満足するとは思っていませんでした。
今回は一番いい内容のプランだったので、天ぷらと牛の炭火焼が付いてきましたが、それが無くても十分満足できる内容。これで旧館利用なら1万円でお釣りがくる、驚きの価格設定。本当にお値打ちです。
お腹一杯で飲みきれなかった緑川を部屋へと持ち帰り、お風呂に入ってからまた晩酌。お風呂と部屋を何度も往復し、心ゆくまで栃尾又の名湯を堪能しました。
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るるぶ
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