今回は、本州大移動の旅。発端は、絶滅危惧種となってしまった夜行急行に乗りたい、との思いつき。
その列車は急行きたぐに号。大阪と新潟を結ぶ電車急行です。この列車に使用されている寝台電車は、僕が小さい頃から憧れていた車両。
その頃当たり前にはくつる号・ゆうづる号としてテレビや本で見ていた車両も、今はこの列車が定期運用最後となってしまいました。
夜行列車が芋づる式に廃止になってゆく現状、今を逃せば一度も乗れずに終わってしまう。
そんな危機感を感じ、やっとの想いで、僕の憧れのお相手である電車三段式寝台に逢いに、遠路はるばる大阪へと行くことにしました。
今回は急ぐ旅ではありません。西への足として選んだのが、『JR東海バス』の運行する「新宿ライナー三河・なごや号」(廃止・現在は中央道または新東名経由で運行)。新宿を11時に出発し、6時間あまりで名古屋へと連れて行ってくれます。
これを選んだポイントは、やはりその安さ。ネット割・早割り併用でなんと4000円を切ります。あまりの安さに驚き。
さすがに、安かろう悪かろう、では使おうと思える距離ではありません。このバスは、夜行に使用する2階建て3列シートの車両を合間運用として活用しているため、とても立派な車両が使われています。
2階建てなので眺望はよく、シートピッチも抜群の広さ。シートはもちろん夜行用なため、深くリクライニングするだけでなく、ゆりかごのように座席自体の傾きも調整することができる優れもの。レッグレストや車内用の使い捨てスリッパもあり、鉄道のグリーン車以上の快適を約束してくれます。
これほどまで快適な車内であれば、名古屋まで6時間掛かっても全く問題なし。急がなければ、ビジネスマンでごった返す新幹線よりも、ずっと贅沢な移動空間を満喫することができます。
のんびり過ごす、名古屋までの道のり。そのお供には本とビールとお酒を用意。バスにはトイレも完備なので、気兼ねなくビールを飲むことができます。
座席をゆったり倒し、本を読みながらビールをゴクリ。敢えて移動に時間を割くのも、実は旅の楽しみの一つかもしれません。
視線を本から車窓へと移せば、外は雪が凄い勢いで降っていました。この日は東京でも雪の降った日。御殿場付近はもう白くなっていました。程なくして足柄サービスエリアで1回目の休憩。バスから降りてしばし体を自由にすることができるのも、嬉しいところ。
バスは更に走り、気がつけば大井川を通過。富士川を渡り、東名高速が海沿いを走るところを見ようと楽しみにしていたのに、心地よい揺れと快適なシートのおかげで、すっかり眠ってしまいました。それだけ乗り心地が良い、という証拠。
続いて天竜川を通過。もう愛知県は目の前。読書とうたた寝を繰り返しながら、ゆっくりと名古屋へと近付いていきます。
まもなく、2度目にして最後の休憩、浜名湖サービスエリアに到着。浜名湖サービスエリアからは、雄大な浜名湖を一望することができます。ここで明日、久々の再会をする予定の友人のために、真夜中のお菓子のお土産を買うことに。
愛知県に入り東名高速を降り、岡崎駅、三河安城駅と経由して名古屋を目指します。長いと思っていた道中も、気付けばあっという間。JR名古屋駅が見えました。これが僕にとっての初名古屋上陸。生憎の雨ですが、気持ちは高ぶります。
名古屋近郊の渋滞のため約30分の遅れでターミナルに到着。それでもこの距離を走ってこの程度の遅れなら文句なし。
夜行列車減衰の陰には、夜行バスの存在があることは確か。価格面では到底太刀打ちできません。でも、バスにはバスの良さがあるのもまた間違いない。夜行列車が好きと言いつつ、バスもいいなぁと考える自分に、少しだけ矛盾を感じてしまいました。
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