小浜島で短くも濃密な夏時間を満喫し、名残惜しくも島を離れる時間に。小浜のあおさに満ちた港に、小さな船がゆっくりと入港する様をただただ眺めます。
帰りも『八重山観光フェリー』に乗船。僕らを乗せたサザンイーグルは、石垣港へと向けゆっくりと離岸。この瞬間、猛烈に襲い来るある種の切なさ。それだけこの島で過ごした時間が、充実して素晴らしいと思えたという揺るぎない証。
小浜港を抜け、石垣目指して速度を上げゆく高速船。つい先ほどまで鮮烈なあおさを見せてくれていた大岳も、ゆっくりと、しかし加速度的に確実に遠ざかってゆく。やっぱり切ない。船での別れには、独特の情緒というものが寄り添って離れない。
いい島だった。また来よう。充足したからこその心地よい感傷を胸へとしまい、爽快な船旅を愉しむことに。そういえば、高速船の後方にある甲板席に座るのはかなり久しぶりのこと。ガラス越しではない生の石西礁湖の碧さが一層眩しく眼に映る。
大岳から眺めたあおのグラデーションの上を、今自分が疾走しているという幸せ。珊瑚礁の複雑な地形により様々なあおさに彩られる海は、進むごとに目まぐるしくその色合いを変化させます。
温かい碧さから爽快な青さに変わったかと思えば、今度はそれらの交じり合うような奥行きのあるあおさへ。その先には、僕らがいつも羽を伸ばしているコンドイビーチ。浜辺と船上、普段とは逆転した場所からの眺めは新鮮で、ある意味不思議な感覚に襲われる。
ババババババババッ!思い返せば、初めての竹富島の帰りもこの甲板席だった。海面との距離とそこからくるスピード感に、爽快な感動を覚えたことが昨日のことのように思い出される。
潮風と煌めく波しぶきを全身に浴び、自分までもが夏景色の一部分になった心持ち。久々に豪快で爽快な船旅を満喫し、あっという間に石垣港へと無事帰還。
小浜島初上陸から帰りの船旅まで、今日は思いっきり絶頂の夏だった。そんな余韻に浸っていると、僕の気になる船が係留されているのを発見。
ファンネルにはJAのマークが描かれ、船首船尾にも農協やえやまと大きく書かれた小さな貨物船。この汽船農協やえやまを初めて見たとき、まだあまり八重山を経験していなかった僕は理解するまでしばらく時間がかかったことを思い出す。
別名農協丸と呼ばれるこの船は、町域がいくつもの島々に跨る竹富町の大切なライフライン。石垣からは肥料や飼料、その他物資を島へと運び、島からは農産物だけでなく牛やヤギなども石垣へと運んでいるそう。言わば、海の農道。改めて、海に隔てられる離島で暮らすことの大変さに思いを馳せます。
本当に、ふとした思い付きから初めて訪れることのできた小浜島。そこで得た経験は、濃厚で充実した最高潮の夏色に染まっていた。
7度目にして、また新たな感動に出逢える地、八重山。決して忘れることのできない今日という一日を胸へと刻み、そのあおさを大切にしようと心に誓うのでした。
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