長崎で迎える爽やかな朝。窓から差し込む空の青さに誘われ、ちょっとばかり朝の散歩へ。部屋から見え気になっていた、大銀杏のある神社へと向かってみることに。

ホテル前の繁華街の通り沿いに、昭和3年に奉納されたという立派な石鳥居をもつ梅香崎神社。本来の参道はそこから延々石段を登ってゆきますが、僕らの宿泊するホテルの6階出入口からはもう目の前。

あらためて坂のまちの地形の妙を実感しつつ境内へと入ると、まだ眠そうな目をしたかわいい猫。うつらうつらする様子を横目に、朱塗りの立派な拝殿で四半世紀ぶりにこの街へと戻ってくることのできたお礼を伝えます。

はっと息を呑むような、見事な彫刻。雲と波だろうか、梁一面を埋め尽くす緻密な文様。そこを力強くも優雅に舞う、一頭の龍。近くに唐人屋敷があったからか、どことなく異国の風が薫ってくる。

かつてここには、大徳寺というお寺があったそう。明治の廃仏毀釈により廃寺となり、現在は公園にその名を残すのみ。ですが境内には、明らかに長い歴史を感じさせる大木が。写真の大銀杏のほか、樹齢800年ともいわれる大楠も。

天神様の祀られた荘厳なお社へのごあいさつを終え、そろそろ長崎に別れを告げる時間。チェックアウトを終え、電停目指して歩く銅座川のほとり。本当に、善いところだったな。

卒業旅行以来、四半世紀ぶりとなった想い出の地。あっという間に感じられた、凝縮された2泊3日。またあらたな想い出を刻みこみ、再訪の願いを胸に路面電車へと乗り込みます。

新地中華街から古き良き車両に揺られること7分、長崎駅前で下車。小さな電停から歩道橋へと上れば、再開発も最終段階に入った真新しいJRの大きな駅舎が。

お土産から飲食まで、長崎の名物が数多く揃う駅直結の長崎街道かもめ市場。そこでお目当ての朝ごはんを買い込み、新幹線のホームへ。そこに待ち構えるのは、なんとも独特ないでたちをしたN700S。どうやっても、僕にはこれがチャップリンにしか見えないんだよな。

僕にとっては、ゆふいんの森や特急つばめ、ソニックあたりがどストライクな時期だったな。そんなことを思いつつ、扉が開き車内へ。これから乗るのは、全長66㎞しかない西九州新幹線。あっという間に終点に着いてしまうので、発車前ではありますが朝食をとることに。
まずは、市内のあちらこちらで目にする岩崎本舗の長崎角煮まんじゅうを。ふんわりとやわらかく、ほんのりと甘味を感じる肉まんのような生地。そこに抱かれるのは、しっかりと煮込まれた角煮。
赤身はほろほろくちどけよく、白身はふるりととろけるやわらかさ。想像していたものより甘さは控えめで、しっかりと薫るしょう油感がやさしい生地と相性ばっちり。

念願の角煮まんに舌鼓を打ち、つづいて手を伸ばすのは桃太呂の長崎ぶたまん。小ぶりな饅頭をひと口噛めば、ぶわっと広がる豊な味わい。もっちりと甘めの生地は関西、中華の風味漂うあんの味付けは関東寄り。東西のいいとこどりといった印象は、これまで食べたことのない新鮮な旨さ。

またあらたな長崎の味覚に心酔していると、かもめは定刻通りに長崎駅を発車。すぐにトンネルへと突入し、抜けたと思えばはあっという間に山深さを感じられるように。

高校生のときには、地形になんてそれほど興味もなかったっけ。あらためて長崎という土地の表情の豊かさに触れ、食い入るように見つめる車窓。人生半ばになっても、はじめてたどる鉄路にはこころが躍る。年甲斐もなくそんな列車旅の醍醐味を愉しんでいると、青く輝く大村湾が。
これから向かうは、お隣佐賀県。卒業旅行を思い出しても、お茶を売っているお土産屋さんに立ち寄ったくらいの記憶しか出てこない。未知なる地との出会いを目前に、流れる新鮮な情景を目で追い続けるのでした。



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