雨上がりの盛岡城跡で朝の空気を胸一杯吸い込み、ふたたび盛岡さんぽを続けます。
秋の青空に映える赤レンガ。この旧岩手銀行本店は、東京駅を設計した辰野金吾氏が設計に携わった建物。建築年は東京駅より古く、言わばお兄さん的存在。レンガと石材が織り成す優美さの中に、同じ血統を匂わせます。
そのすぐ近くには、同じく東京駅を設計した盛岡出身の葛西萬司氏が生んだ重厚な建物が。昭和初期生まれのこの建築は、現在でも盛岡信用金庫の本店として現役で働き続けています。
朝の弱い青空の下佇む、渋い建物。江戸時代から続く豪商であるござ九は、増築された年代によって変わる姿が印象的。この建物の複雑さが、藩政時代からの歴史を感じさせます。
さらに進めば、六角形の火の見櫓が特徴的な紺屋町番屋が。ビルの並ぶ街角に、古き良き建物が自然体で残されている。これこそが、盛岡の街の味。僕がこの街を何度も訪れてしまう、大きな理由。
その先には、市街地の中で存在感を示す立派な土蔵が。岩手県最古の酒蔵だという、菊の司。白壁の美しいこの酒蔵で、旨い酒が醸されています。
盛岡の様々な年代を凝縮したかのような、この通り。その突き当りには、黒漆喰が目を引く渋い土蔵が。呉服問屋として建てられたこの蔵は、背後にマンションが建てどもここにこうして居続けます。
盛岡の街をさらさらと流れる中津川。ここに架かる上の橋の欄干に、ずらりと並ぶ擬宝珠たち。洪水により何度も流出を繰り返しましたが、そのたびに奇跡的に救出されました。500年以上前、盛岡が城下町となったときから変わらぬ姿で街を見守ります。
緑を失いつつある木々に覆われる、盛岡の官庁街。その中でもひときわ目を引く岩手県公会堂は、当初県議会の議事堂として建てられたものだそう。今では失われてしまった90年前の美意識を、ひとり静かに現代へと伝えます。
のんびりと朝の時間を味わう盛岡さんぽ。気付けばすっかり街は動き始め、通勤通学の人々が盛んに行き交います。その忙しなさの中、朝日を浴びてきらめく石割桜。秋の気配を感じさせる色合いに、自分の住む街とは季節の進み方が違うことを改めて感じます。
夜行で辿りついたからこそ味わえる、朝の街並み。眠りから覚めて賑わいをみせる姿に、この瞬間に立ち会えることの悦びを噛み締める。これだけ楽しんでもまだ8時。もっともっと盛岡の顔を知るべく、歩みをさらに進めます。
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